第三証人「新人死神」2
大和さんが去っていった後、冥界は平和になったと思う。
死者達が安心している。
特に第五フロアの住民が。
大和さんに散々切り裂かれていたいたものなぁ。
ところで……
「ハァ……」
デス様の調子が最近おかしい。
溜息ばかりついている。
僕はこっそり先輩に聞いてみた。
「大和が去った後は何時もああなんだよ。理由はわからないけどな」
だそうだ。
ふぅむ。
大和さんのデス様って、どんな関係なんだろう?
恋人同士だったりして?
あっはっは、そんなわけないよねぇ。
あのデス様が、恋人なんて。
あっはっは。
◆◆
デス様と二人きりで仕事をしている最中、デス様が唐突に僕に呟いた。
「お前は、死神達の中でも恐れることなく大和と話していたな」
「ええ、まぁ、大和さん、案外優しい人ですし」
「どうかな。アイツが優しいのは子供だけだ。強者であれば女子供であれ嬉々として殺すし、女の想いに応えることはない。ただ寝て満足する。どうしようもない屑野郎だ」
「……」
デス様は遠い目をしていた。
その瞳は、恋い焦がれる乙女のものだった。
もしかして、デス様って、本当に、大和さんのことが……
「さぁて、新人。ぼさっとしてないで資料を片付けろ」
「……」
「返事」
「は、はい!」
◆◆
「へっくしゅん!」
おおう?
誰かが俺の噂でもしてんのか?
ま、どうでもいいか……
じゃあな、冥界。
じゃあな、デス。
また会おうや。
ククク。
《完》