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大和さんの異世界漫遊譚【完結】  作者: 桒田レオ
第六章《冥界編》
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第二証人「冥界の女王・デス」

 冥界の管理人として、頭を抱えるしかない。

 永久の時間、冥界の女王として君臨してきたが、ここまで私を困らせる存在は他にいないだろう。



 大和。



 奴は修羅道、第五フロアにいる亡者共を片っ端から斬り捨てている。

 それだけに飽き足らず、他のフロアにまで足を運んで、わざわざ刑を受けている。

 奴にとって、それらは遊びなのだろう。

 全く、冥界をなんだと思っているんだ。

 ……超越者にとって、冥界の刑などそよ風同然なのだろうな。

 ……奴専用のフロアを作るか。

 しかし、それでは、不公平になってしまうのではないか?

 いいや、ううむ……


「デス様」

「……何だ」


 従者の一人が喋りかけてきた。


「もうそろそろ、大和の刑期が終わります」

「そうか……もう、無量大数の年月が経ったのだな」


 早いものだ。


「大和をここに連れてこい」

「かしこまりました」


 暫くして、大和がやってくる。


「なんだ、デス。折角亡者共と遊んでたのによ」

「貴様の刑期がもうそろそろ終わる」

「おっ、そうか。いい頃合いだ。丁度冥界に飽きてきてたんでな」

「……冥界はテーマパークではないのだぞ」

「今度から、俺専用のフロアでも作っておくんだな」

「考えておく」


 本格的に考えたほうがいいのかもしれない……


「大和。貴様に折り入って話がある。私とともに、貴賓室まで来い」

「……ふぅん、まぁ、いいぜ」

「デス様」

「よい、貴様らは下がっておれ」

「ですが」

「命令だ」


 従者たちを引かせ、私は立ち上がる。

 そして、大和を連れて神殿の最奥手前にある貴賓室に向かう。

 貴賓室前で立ち止まろうとする大和。

 私はその手を引いた。


「おい、貴賓室ってここだろ?」

「……わかっているのだろう。こっちだ」

「……」


 大和は無言で肩を竦めた。

 私は大和の手を引っ張り、最奥の、自分の部屋へ連れ込む。

 そして……


「大和ぉ……」


 部屋に入った瞬間、思い切り抱きついた。


「はぁぁ、大和の匂い……」

「こんな姿、部下に見せられねぇもんな」


 大和は私を抱きしめ、首筋に息を吹きかけてくる。

 私は震えながら、大和を睨んだ。


「当たり前だ……っ」

「人斬りと冥界の女王の、禁断の恋ってか?」

「私が一方的に想っているだけで、貴様は振り向いてくれないだろう」

「……ま、女に縛られるつもりはねぇ」

「いいさ、冥界は私の世界だ。冥界にいる間、貴様は私の管理下だ。私の命令を聞け」

「すげぇ屁理屈を聞いた」

「命令だ」

「はいはい」

「……まずは、す、すす、好きといえ」

「好きだぜ」

「っ、で、では、愛していると、いえ」

「愛してる」

「~っ♪」


 私は嬉しさのあまり小さく飛び跳ねる。

 大和が、あの大和が、私に愛してるって……っ


「で、では、キスをしろ」

「軽いのと深いの、どっちだ?」

「無論、深いのだ」


 大和の唇に、自分の唇を重ねた。



 ◆◆



 数時間後、私は大和と一緒にベッドの中で眠っていた。


「大和……冥界に残る気は、ないか?」

「ない」

「……そうか」


 わかっている。

 コイツがそういう男だって。

 さっきのセックスで、もう何度も教えられた。

 でも……


「お前と、離れたくない……」

「また会えるだろう」

「嫌だ、ずっと傍にいてくれ」

「ハァ」


 大和は私を抱き寄せる。


「どうせまた死ぬ。その時に会える。そしたら、今日みたいに愛してやる。それじゃあ駄目か?」

「……ッ」


 私は大和の腕に爪を立てる。


「……このロクでなし。女にここまで言わせて、貴様はまだ逃げるのか?」

「ああ、俺は女に捕らわれたくねぇ」

「……もう、勝手にしろ」


 私は立ち上がり、ドレスを着る。

 そして、大和の顔を一度見た後、ふんと背いた。


「さっさと冥界から出ていけ。しばらくは冥界に戻ってくるな」


 私はそう吐き捨てて、自分の部屋から出た。


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