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大和さんの異世界漫遊譚【完結】  作者: 桒田レオ
第五章《超能力編》
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第二証人「七騎士序列四位・ミスター」

 中央武力局のアメリカ本部で、七騎士の緊急会議が開かれました。


「一と佳乃が殺された」

「「「……」」」


 私を含め、七騎士一同がその報に驚愕した。


「本当ですか?」

「ああ」

「相手は誰ですか?」

「サムライ、という情報以外は不明だ」

「サムライ……」

「一と佳乃の仇をとるぞ」


 私は七騎士序列二位殿の何時もとは違う反応に笑みをこぼす。


「珍しいですね。あなたが仕事に私情を持ち出すなんて。クリスさん」


 中央武力局の制服を着た金髪の美男、クリスさんは眉を跳ね上げる。


「仲間が討たれたのだぞ?」

「もっと冷静になったらどうですか? 七騎士を統括する者として、相応しくない振る舞いだ」

「……ミスター、お前は、悲しくないのか?」

「二人が殺されたことですか? ええ別に。有機物無機物問わず、万象はいずれ朽ち果てるもの。二人はそれが早かったにすぎません」

「……二人は、まだ学生だったのだぞ」

「学生を七騎士に入れていたこと自体、不自然だったのではないですか? 彼等は平穏を望んでいた。戦いなど望んではいなかった。……尊い命を失いましたね。誰のせいでしょう?」

「……お前は、中央武力局に喧嘩を売っているのか?」

「事実です。……彼等は七騎士に入るべきではなかった。戦場に出るにはあまりに優しく、幼稚すぎた。今回はそこを突かれたのでしょう。サムライとやらに」

「……」


 クリスさんは私を射殺さんばかりに睨んでくる。

 ククク、そう、あなたも、優しすぎるんですよ。

 戦場に優しさなど不要だ。

 慈悲も不要だ。

 いるのは本能と力。

 ただそれだけあればいい。


「ジーナ、カルロス。お前達はどう思う?」

「そういわれても、いきなり過ぎて驚きっていうか」

「ううっ、二人とも、本当に死んじゃったの?」


 可愛らしい北欧系の娘は瞳を丸めており、ピエロ姿の奇人は泣いていた。

 七騎士序列六位、ジーナさん。

 七騎士序列五位、カルロスさん。


「私情を聞かせてくれ」

「ま、仇はとってあげるよ。仲間だったしね。はじめっちとよっしーは」

「僕も全力を尽くすよ、絶対報復してやる」

「そうか……」


 クリスさんはもう一度私を睨んだ。

 はいはい。


「やりますよ。復讐をすればいいんでしょう?」

「名目上はテロリストの排除にしておく。絶対に逃がすな」

「わかりました」


 やれやれ、まさかクリスさんがここまで激情家だったとは。

 意外ですねぇ。

 くっくっく。


「ジーナ、カルロス、ミスター。お前達はサムライの捜索、および討伐にあたれ。俺は奴を連れ帰ってくる」

「やつ……序列一位ですか」

「ああ、今頃呑気に異世界漫遊でもしているだろうからな」


 クリスさんは憎々しげにつぶやく。

 ま、序列一位、彼はそういう人ですからね。

 仕方ない。


「以上だ。各自、健闘を祈る」


 緊急会議は、これで終了した。



◆◆



 さてさて、サムライ、ですか。

 どんな人なんでしょうねぇ。

 能力無効化能力を持つ一さん。

 属性・天候支配能力を持つ佳乃さん。

 二人のコンビはジーニアス最強と謳われていた。

 なにせ、天災を対処しながら、能力が効かない拳法の達人と戦わなければいけませんからねぇ。

 私でも苦戦は必至。

 それを殺してのけたサムライ。

 実に興味深い。

 ですが、


「ま、あたしの能力とミスターさんの能力で、一撃必殺っしょ」

「そうですね」


 ジーナさんはキャンディーを舐めながら肩を竦める。

 ジーナさんの能力は完全催眠。

 相手が察知できる暇もなく、催眠の中へ落とす。

 初見殺しの技だ。

 そして、私の能力は、分子間結合分解能力。

 物質を跡形もなく消滅させる、破壊に特化した能力だ。

 無機物有機物関わらず接触したものを瞬く間に消滅させる。

 絶対的な攻撃力を持つと同時に、纏えば絶対防御ともなる。

 攻防一体。

 私が四位にランクインしているのは、この凶悪な能力のおかげだ。


「さて」


 軽いジャブを放ち、ステップを踏む。

 うむ、上々。

 これならいけますね。


「サムライが発見されたよ。近くの廃墟で寝てるって」


 ジーナさんが携帯端末で最新情報を伝えてくれる。

 なんと、


「近くの廃墟、ですか?」

「そ、全く、サムライの気が知れないわね。なんでわざわざ近くに潜伏するかな」

「誘ってるんじゃないかな☆」


 ここへ来て、泣いてばかりいたカルロスさんが口を開いた。


「なら、殺してやればいい。一片の慈悲もいらない。あの二人を殺したサムライを、僕は絶対に許さない。……でも、確実に殺す方法は、二人のコンビのほうが長けている。僕は、二人の無念を晴らせればいいから、二人に任せるよ」

「……賢明な判断だよ、カルロスさん」

「ええ、任せてください。必ず殺してみせますよ」


 でも。

 やはり、少し退屈ですね。

 本当は一対一で殺し合いがしたかった。

 残念です。


「ZZZ」


 廃墟につくと、サムライは眠っていた。

 私達が近づくと、パチリと目を覚ます。


「来やがったか」


 ドスの利いた声を発して、刀を抜くサムライ。


「ジーナさん」

「おっけー」


 ジーナさんの能力が発動する。

 さて、これで能力にひっかかれば、楽勝なんですけど。

 一さんと佳乃さんを殺したサムライだ。

 そう簡単に行くわけがないと踏んでいる。


「おッ……!?」


 サムライがふらつく。

 そして、瞳から生気がなくなった。

 ……まさか。


「かかった、んですかね?」

「そうみたい。手ごたえありだよ」

「……はぁ」


 そうですか。

 いや、残念ですよ。

 終わってほしくなかった。


「では、とどめを」


 私はサムライへ近寄る。

 サムライは呆けて立っているだけだった。

 私は能力を発動し、



 サムライを消し飛ばした。



「はい、お終いです」

「……あっけないね」

「そうだね☆ でも、これで一くんも佳乃ちゃんも報われるよ」

「……」


 やはり、つまらない。

 悲鳴を上げなければ、壊し甲斐がない。

 はぁ……

 復讐なんて、どうでもいいのに。


「帰りましょう。ジーナさん。中央武力局に報告を」

「おっけー」


 私達は帰路についた。

 しかし、何だろうか、このモヤモヤとした感じ。

 虚無感と一緒に滲んでくる、このドス黒い何かは?

 恐怖? 畏怖? どれとも違う。


「……」


 私はサムライが消滅した場所に振り返る。

 そこには、何も無かった。

 サムライは、もう消えたのだ。



 ◆◆



 その後、密かに一さんと佳乃さんの葬儀が開かれた。

 そして、空いてしまった七騎士の席を埋める会議が頻繁に開かれるようになった。

 繰り上げとなって私は七騎士第三席となったが、七騎士第七位が埋まらなかった。

 七騎士レベルのジーニアスは早々に発見できるものではなく、今後、難航するだろうとのことだ。

 七騎士二名の死亡は、公に晒さなった。

 市民へ余計な心配をかけるからという配慮らしいが……

 まぁ、どうでもいいですね。

 ……。

 あの日、サムライを消し飛ばしてから、私は夜な夜な悪夢を見るようになった。

 サムライに、私が殺される夢だ。

 ありえない。

 サムライは、もう死んだのだ。

 死んだものは、蘇らない。

 たとえジーニアスでも、死んだものを蘇らせることなんて不可能だ。



 《完》

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