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大和さんの異世界漫遊譚【完結】  作者: 桒田レオ
第五章《超能力編》
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第一証人「七騎士序列七位・三桜佳乃」

 はじめまして、私の名前は三桜佳乃みさくら・よしの

 中央武力局に所属するジーニアスです。

 中央武力局。

 英語でCentral force Agency(通称CFI)。

 日本、ロシア、アメリカ、中国、フランス、ドイツがバックに立っている半独立戦闘局です。

 ジーニアスの育成、また実戦部隊を編成しています。

 上記6各国に支部があり、本部はアメリカにあります。

 私は日本支部に所属しています。

 七騎士という、中央武力局のトップジーニアスなのですが、未だ学生の身で……

 学業と仕事、両方をこなしています。


「ふぁぁ」

「先輩、欠伸は隠してください。だらしないですよ」


 隣で盛大に口を開けている男性に、私はため息を吐く。

 現在、彼と同じ制服を着て、学園へ登校していた。

 彼の名前は館前一たてまえ・はじめ

 私と同じ中央武力局所属のジーニアスです。

 そして、七騎士でもあります。

 私の序列は七位、先輩は三位です。

 私より遥かに高位の異能を持っています。

 ……まぁ、こうして端から見ていれば、ただの青年なのですが。


「いいねぇ、この日常。欠伸を漏らしながら登校できるなんてサイコー。平和が一番」

「戦後のおじいちゃんみたいなことを言わないでください」

「でもそう思わない? 俺達みたいに、学生なのに中央武力局所属してたらさ。そら、普通の生活が恋しくなるよ」

「まぁ、それは否定しませんが……」


 先輩は平和が好きだ。

 平和を愛している。

 だから、七騎士として働く時は、驚くほど真面目になる。

 この平和を守りたいからだ。

 私は、何時もの仕事の先輩を見ているせいか、こうして平常で抜けているところを見ると、ついつい注意をしてしまうのだ。


「もっと気楽にいこうぜ。よっしー」

「そのあだ名はやめてください!」


 頬を膨らますと、先輩は「可愛いのに」と苦笑した。

 他の七騎士からつけられた不名誉なあだ名です。

 気軽に呼ぶ人もいるので、本当にやめてほしいです。


「さぁて、今日は任務もないし、授業受けて、昼寝して、帰るかねぇ」

「あ、先輩……」

「ん?」

「その……今日私も休みなんで」

「??」

「~っ」


 どうした三桜佳乃!

 ここはストレートに言うべきだろう!

 放課後、一緒に買い物行きませんかと!

 しかし、その、それって、デートだし。

 いいや、デートしたいよ? 先輩とデートしたいよ?

 私、先輩好きだし。

 一人の男性として。

 ああでも、変な羞恥心が邪魔をする!

 なんで!? 素直に言えればいいのに!


「どうした佳乃?」

「あ、ぅ……」

「お前、顔が赤いぞ。熱でもあるのか?」


 先輩におでこを触られる。


「ひゃ……」

「んー、かなり熱いな。今日は休んだほうがいいんじゃないか?」

「いえ、これは……っ」


 先輩、距離近すぎ。

 ~っ


「あ、あの、せんぱい!」

「ぅお、なんだ?」

「きょ、きょう! よかったら私と!」


 放課後買い物にいきませんか?

 そう言おうとした瞬間、つんざくような爆発音が響いた。

 同時に襲いかかってくる地震。

 私達はバランスを崩す。


「わっ」

「きゃ」


 倒れる。

 目を開けると、先輩の顔が間近に……

 はぅぅ……っ


「ご、ごめんなさい!」

「いや、それよりも今の爆発……」

「?」


 私が首を傾げていると、緊急警報が鳴る。


『一般市民に告ぎます。一般市民に告ぎます。ジーニアスの支部がテロリストに襲撃されております。危険ですので、ただちに指定された避難場所まで逃げてください。繰り返します……』

「何だって!?」

「そんな!!」


 こんな朝から襲撃!?

 テロリスト!?

 私が動揺していると、先輩が肩を揺すってくる。


「佳乃。緊急事態だ。俺と一緒に支部まで行こう」

「は、はいっ」

「お前の異能で空を飛ぼう。空から状況を見てみるぞ」

「わかりました!」


 私は異能を使い、先輩と自分を飛ばす。

 そうして、天高くに舞い上がった。


「何だ、あれは……」

「ッ」


 私達は信じられないものを目にしていた。

 中央武力局日本支部が、半分から真っ二つに割れているのだ。

 ぱっくりと。

 まるで、巨大な刀で両断されたかのように。


「すぐに行こう!」

「はい!」


 私達は日本支部へ下りる。

 すると、すぐに施設の関係者がやってきた。


「お待ちしておりました!」

「テロですか?」

「わかりません。放送では一応テロリストの襲撃としておきました」

「上空から様子は見ました。あれは、テロリストがやったんですか?」

「はい……」

「……異能、か?」


 先輩は首を傾げるが、私はすぐに頷く。


「異能でしょう。それも強力な。ジーニアス以外に、あそこまでの規模の攻撃は不可能です」

「だな……」


 先輩は納得し、踵を返す。


「研究者や非戦闘員の脱出を最優先に! ならびに現在戦闘をしている者たちを撤退させてください! 援護はありがたいが、邪魔になる!」

「かしこまりました!」

「佳乃! 行くぞ!」

「はい!」


 私は先輩の背中を追う。

 巨大な裂け目から施設の中へ入ると、そこでは現在進行形で戦闘が行われていた。





「クハハハハハ!! さっさと七騎士っての出せよ!! 話になんねぇぞ!!」




 不気味な哄笑を上げながら、戦闘員を斬り裂いていっているサムライ。

 大きな口のギザギザの歯、褐色肌。

 灰色の三白眼をギラつかせながら、羽織っている緋のマントを血で更に赤く染め上げている。

 戦闘員たちは銃や異能で必死に応戦している。

 が、サムライは銃弾を斬り捨て、異能が発動する前に斬殺している。

 あまりの手際の良さに、一瞬見惚れてしまったほどだ。


「佳乃ッ!!」

「は、はい!!」

「今すぐアイツを止めるぞ!!」

「わかりました!」


 先輩が地を踏みしめ、一瞬でサムライの懐に入る。


「お?」


 先輩はダッシュの勢いを全て乗せた背面をぶち当て、サムライを吹き飛ばした。

 私は瞬時に異能で吹き飛んだサムライの場所を凍結させる。

 ふぅ……


「……これで一応は大丈夫か」

「ええ」


 私達は周囲の惨状に目をやる。

 血の池地獄だった。

 さっきまで人間だったものが散らばっている。

 臓物まであって……


「うっ」

「無理もない。佳乃。お前は下がっていろ」

「……ッ、先輩!!!」

「!?」


 先輩の背後に鬼がいた。

 いいや、サムライだ。

 先輩は咄嗟に刀の側面に触れ、軌道を逸らす。


「ほぅ……坊主。中々できるみてぇだな」


 サムライはいきいきと笑いながら刀を担ぐ。

 なんで!? 動けないよう凍結しておいたのに!


「氷が、斬られてる」


 ばっかりと割れていた。

 そんな、どうやって……


「佳乃。考えている暇はない」

「ッ」

「ハッハ―!!」


 サムライが飛びかかってくる。

 先輩が間に入り、応戦を始めた。

 刀と拳が入れ違う。

 剣撃と拳撃の応酬に、思わず私は息を飲んだ。

 先輩はありとあらゆる格闘術の達人だ。

 先輩と純粋な近接戦で戦えるものなど、七騎士でも極僅かだ。

 しかし、その先輩と互角以上の戦いを演じている。

 あのサムライは、一体何者なんだ?


「チィ」

「ククク」


 先輩が、徐々に押されてきた。

 サムライの怒涛の攻撃に、だんだん後退していく。


「先輩!」

「応!」


 私は先輩ごと、サムライへ炎の塊を飛ばす。

 サムライは目を丸めていた。

 何故、先輩ごとサムライを攻撃したかって?

 それは、先輩が異能を無効化できる異能の持ち主だからだ。

 炎は先輩にダメージを与えず、サムライだけに飛び火する。


「マジか! どういうマジック使いやがった!」

「フン!!」


 先輩が震脚を鳴らし、拳を打ち込む。

 鳩尾にクリーンヒット! サムライは吹き飛んだ!

 有効打だ!!


「……芯を逸らされた。なんて技術だ」


 先輩が苦い顔をする。

 サムライはケロりと立ち上がった。


「ふぅん。……トリックはまだわからねぇが、後ろのお嬢ちゃんの攻撃と坊主の攻撃は同時に来ると思っておいたほうがいいな」


 サムライと、目があった。

 全身の毛穴が開く。

 まるで、脳天から氷水をかけられたかのようだった。


「お嬢ちゃんのほうからやるか」

「させるかよ!!」


 先輩が突撃する。

 私は震える全身を必死に叱咤しながら、先輩の援護を徹底した。


「いい線いってるぜ、坊主。だがな、相手が悪かった」


 サムライが構えをとる。

 先輩の右肩から斜めに刀が振り下ろされて……

 先輩は、真っ二つになった。


「へ?」


 呆けた声が出た。

 だって、先輩が。

 先輩が、二つになってしまったのだ。


「よしのォ……逃げ、ろ」


 先輩の瞳から、生気が消えた。

 ああ……アアッ、ああああああっっ


「いやァァァァァァァァァァッッッッ!!!!!!!」


 私はサムライに特大サイズの火炎弾をぶつける。


「よくもッ!! よくも先輩をッ!!」

「ククク、その程度の攻撃じゃあ俺は倒せねぇぜ?」


 サムライは火炎弾を斬り裂く。

 私は自然と能力にかけていたセーブを解いていた。


「落雷よ!」


 積乱雲を創造し、落雷を落とす。

 サムライに直撃した。


「絶対許さない!! 絶対に、絶対に!!!」


 マグマを噴出させ、吹雪を当てて。

 形も残らなくなるほどの猛攻を与える。

 しかし、


「ハハ、なんだ。お嬢ちゃん、一人のほうが強いじゃねぇか」


 サムライが飛び出してきた。

 そんな! あの猛攻を!?


「右腕もらい」

「ぐぁぁ!!」


 右腕を斬り飛ばされる。

 まだ、まだァ!!


「有毒なる光よ、我が元に集え」

「……ほぉ」


 左手を天に掲げれば、伸びるように光の大剣が創造される。

 サムライは瞳を細めた。


「核……えげつねぇもん使いやがる」

「サムライ、お前は必ず殺すッ」

「ククク」


 サムライはサイドへ走る。

 無駄だ、私の核融合の剣は、掠っても被爆して細胞の一つ一つが壊死する。


「ほら、撃ってこいよ」

「食らえ……!?」


 サムライの後ろには、街があった。

 そんな、まさか、それを狙って!?


「戦場で攻撃を躊躇うなんざ甘ぇ!! これだから乳臭ぇ餓鬼はよぉ!!」


 もう片方の腕を飛ばされる。


「アアアアアアアアッッ!!!!!」


 両腕を斬り飛ばされ、私は膝をついた。


「守るもんがある奴は弱い」


 サムライは私の首に刃をあてる。


「遺言はあるか?」

「……あ、あなたは」

「?」

「あなたは、何なんですか? 何が目的で、こんな酷いことを……」



「強者との闘争を愉しみたいから」



「ッ」

「強者と闘いてぇ、それだけだ」

「そんな、そんな理由で……ッ」

「あばよ、お嬢ちゃん」


 私は涙を流した。

 そんな理由で、先輩は殺されたのか。

 私は殺されるのか。

 そんな、そんな……っ


 私の視界は、宙を舞った。

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