プロローグ
公園で遊んでいると、おサムライさんと出会った。
編み笠を被っていて、雰囲気も怖かったけど、友達と勇気を出して喋りかけてみた。
すると、
「おう、餓鬼ども。キャンディー食うか?」
優しいおサムライさんだった!
僕たちははしゃぎながらおサムライさんに寄って集まる。
「ねぇねぇおサムライさん! その刀ほんものー?」
「ああ、だから触っちゃダメだぜ?」
おサムライさんは僕の頭を撫でてくれた。
~♪
「お前らに聞きたいことがあるんだけどよ」
「なぁに?」
「アレは何だ?」
おサムライさんが差したのは、高層ビルの真ん中にある巨大な建物だ。
「あれはちゅうおうぶりょくきょくだよ」
「中央武力局?」
「そう、えりーとのジーニアスが沢山いるんだよーっ」
「ジーニアスって、なんだ?」
「えー、おじさん、ジーニアスも知らないのー?」
「クク、最近ここに来たばかりでよ」
んーとね、んーとね。
「ジーニアスは、ちょうのうりょくやいのうを持ってる人間のことを言うんだよ」
「へぇ」
「ちゅうおうぶりょくきょくには、強いジーニアスが沢山いるんだよ。僕も、何時かあそこに入って、沢山の人を救ってあげたいんだ~」
「そっか、偉いな。人のために力を振るおうと思うなんて。……俺にゃ、到底できないことだ」
「??」
「何でもねぇ。なぁ、お前らも超能力が使えるのか?」
「うん! ほら!」
僕は手に小さな炎を生み出す。
おサムライさんは驚いているようだった。
「すげぇな。マジで超能力か異能の類なのか」
おサムライさんは、悪そうな笑みを浮かべた。
「これぁ、楽しめそうだな」
一瞬怖いって思っちゃったけど、おサムライさんはすぐに優しい笑顔に戻った。
「なぁ、ジーニアスで一番強い連中は知ってるか?」
「もちろん! ななきしだよ!」
「ななきし……七騎士か」
「うん! 世界で一番強いジーニアス! 皆のヒーローだよ!」
「……」
おサムライさんは編み笠を被りなおす。
「サンキュー、ほら、もう一個キャンディーやるよ」
「わぁ! ありがとー!」
「テメェら、その人を助けたいって気持ちを忘れるなよ。忘れたら、俺みてぇなロクデナシになっちまうからな」
「おサムライさん、ろくでなしなの?」
「ああ、だから、俺のことはすぐに忘れろ」
おサムライはそう言って去っていった。
僕はろくでなしの意味がわからなかったので、笑顔でその背中に手を振っていた。