第二証人「魔王」
我は魔王。
現在、魔王城の玉座で微酔にまどろんでいた。
勇者がやってくるというらしいが、はたして三魔将軍を抜けることができるのだろうか?
彼奴等は強い。
単体でも、数万の人間を一瞬で惨殺する。
……彼奴等が抜かれる可能性は一割にも満たないだろう。
が、その一割をもしも突破できたのなら。
その時は、我が全力で相手をせねばなるまい。
魔王の誇りにかけて。
「魔王様」
「何だ」
腹心の女悪魔が現れる。
「三魔将軍様方が討たれました」
「……本当か?」
まどろみも覚めてしまった。
それほどに驚いた。
まさか本当に……
「相手は勇者か?」
「いえ」
「?」
では、誰だというのだ?
「サムライ姿の大男が、三魔将軍様方の首を持ってやってきました。現在玉座に一直線に向かってきております」
「よい、丁重にもてなしてやれ」
「かしこまりました」
腹心が下がる。
数分後、城から魔族の気配が消えた。
フッ、腹心もやられたか。
フフフ、サムライか。
どんな人間なのか、楽しみだ。
そう思っていると、玉座へ唯一繋がる門が開かれる。
「よぅ、待ったか?」
サムライが現れた。
身長は二メートルほどか、良い肉体を持っている。
白の着物に黒の浴衣、肩から赤いマントを羽織っている。
褐色の肌、灰色の三白眼、ギザギザの歯。
手には腹心の首を持っている。
フフフ。
「ようこそ、玉座へ。我が魔王だ」
「見りゃわかる」
サムライは首を放り投げて、近づいてくる。
「じゃあやるか。丁度身体も温まってきた」
「魔王の誇りにかけて、負けぬ」
我は立ち上がる。
「俺を満足させてくれよ?」
サムライが消える。
我は拳を突き出した。
我の速度は音速を遥かに超える。
しかしサムライは見事に対応してきた。
「貴殿は本当に人間なのか?」
「よく言われる」
サムライは二刀をクロスさせ、斬り込んできた。
我は足底で受け止めようとするが、片足が骨まで裂かれる。
なんと! 金剛石に匹敵する我が肉体を斬り裂くとは!
「しかし、我が回復力は不老不死にすら匹敵する」
足が再生する。
サムライは、ニヤリと笑った。
「次はないぜ?」
「どういう意味だ」
「そのままの意味だ」
ふむ。
では、これならどうだ!
「重力魔法。5000倍だ」
瞬間、サムライが潰れた。
かに見えた。
「背後か!」
「クハ!」
突きを肩に貰うが、かろうじて避ける。
くっ、全く見えなかった。
瞬間移動か!?
「ハハハ!」
そのまま乱撃戦になる。
サムライの手数は圧倒的で、それでいて全てが一撃必殺。
一つでも捌き損ねたら、急所をもっていかれる!
しかし我は不死身に近い再生力を持っている、
であれば、強行突破を……
「!!」
捌いて手傷を追っている腕が回復しない!
どういうことだ!
「俺は不老不死を殺せるのさ」
「そんな馬鹿な!?」
「テメェが死ぬまで、あと十五秒」
「!」
「十四、十三、十二、十一、十♪」
急所をどんどん抉られていく。
血が噴き出し、力が抜けていく。
サムライの攻撃はどんどん勢いをましていく。
「九、八、七、六、五、四♪」
両腕を斬り飛ばされ、膝をついた時、サムライが我を見下していた。
口元を半月に歪めながら。
「三、二、一、零♪」
我の喉元に、刃が通り抜けた。
◆◆
まぁ、ただのファンタジー世界で、ただの魔王相手だったらこうなるわな。
邪神とかだったら話は別なんだが。
あ~あ、今回はハズレだ。
次の世界行こ。