第一証人「三魔将軍・魔元帥」
某は落胆していた。
人類に残された唯一の希望、人類最強。
勇者。
肩書は立派だった。
しかし実物はコレだ。
期待していた分、落胆が激しい。
言葉も出ない中、突如として第三者が乱入してきた。
「じゃあ、やろうぜ」
サムライは刀を担ぐ。
某達の中でも、魔剣聖が興味深そうに顎を擦った。
「剣士ですか。興味ありますね」
「ならやるよ。俺と魔元帥は見学してる」
「……問題ない」
「では、いただきます」
魔剣聖が前へ出ると、サムライは不服そうな顔をする。
「何余裕かましてんだよ。全員で来い。相手してやるからよぉ」
「……我々三名と同時に戦うと? 人間風情が?」
「おい、調子に乗るんじゃねぇよ」
「……」
魔剣聖、魔賢者は揃って眉間に皺を寄せる。
しかし、このサムライ…
「いいから死ぬ気でかかってこい♪」
舌を出され挑発され、まず出たのは魔剣聖だった。
「三枚におろしてあげますよ!!」
「待て!! 早まるな!!」
某は止めようとしたが、魔剣聖は突撃していく。
サムライと魔剣聖、両者の距離が縮まり、交差したと思った瞬間。
腕が吹き飛んだ。
宙に舞った腕が誰なのか確認した時、魔剣聖がバックステップを踏んだ。
「クッ……」
大量の冷や汗を掻きながら、無くなった肩を抑える魔剣聖。
某と魔賢者は瞳を丸めて、サムライを見た。
「だから言ってるじゃねぇか。全員で来いって」
大太刀を担ぎなおし、嘆息するサムライ。
やはり……
「おい、魔剣聖、魔賢者」
「「?」」
「落ち着いて、奴の纏う空気を読め」
吐き気を催す。
なんて邪悪な空気を纏っているのだ。
そして、その強大さ。
我々三人を足しても、遠く及ばない。
「そんな……」
「おいおいおいおい、なんだぁありゃ」
魔剣聖も魔賢者も頬を引きつらせる。
某も、苦い笑みがこぼれた。
「全員で行くぞ」
「わかりました」
「おう」
まず某が突貫する。
武装である大剣を振りかざす。
サムライは受け止めようとしたが、瞬間的に重力魔法を刀に込めて重さを数百倍にまで跳ね上げる。
「む」
サムライの態勢が大きく崩れた。
今が好機!!
「やれ! 魔剣聖!」
「片腕ですが、まぁいけなくはないです!」
魔剣聖の剣が鮮やかな線を描いて舞う。
サムライは全てガードするが、それは計算の内だ。
本命は別にある。
「締めだ! 魔賢者!」
「はいよ!」
最後に魔賢者の炎熱属性魔術。
サムライの身体が焼き焦げる。
生物の焼ける独特の臭いが漂ってくる。
「やりましたか?」
「ったりめぇだろ、今ので死なないなんてこと……」
「油断するな。あの不気味な空気の持ち主が、そう簡単に死ぬはずないだろう」
「「……」」
二名は黙って、武器を構える。
すると、炎の中から優々とサムライが現れた。
「なぁ、こんなもんか? これで、終わりなのか?」
落胆、していた。
「なぁなぁ、こんなもんじゃねぇだろ? もっと来いよ。ほら、ほら、ほらァ!」
両手を広げて、攻撃をねだるサムライ。
某も、魔剣聖も、魔賢者も、後ずさった。
今まで戦ってきた人間とは、明らかに違う。
「来ないのか? ならこっちから行くぜぇ!!」
「二人とも!! 本気でいきましょう!!」
「ああ!! コイツはやべぇ!!」
魔剣聖と魔賢者の言葉に同意する。
コイツは、我々の知っている人間ではない。
某達は久々に封印を解除し、本気の状態となった。
「本気の私の一撃は地殻変動に匹敵します。人間程度、芥子粒です!」
「俺の本気の炎は都を五つ焼き尽くす! 今度こそ灰になれぇ!!」
「某の重力魔法は星に影響を及ぼす。何をされたのかもわからず息絶えるがいい!!」
我々は突撃する。
サムライは心底嬉しそうに、脇差を抜き放った。