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大和さんの異世界漫遊譚【完結】  作者: 桒田レオ
《第二章・ヴァンパイア編》
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第三証人「真祖の女王・クロエ」

「テオがやられたわ」

「相手は誰だ?」

「サムライよ」

「サムライ……ふはは、そうか、大和か。生きておったのだな。……ククク、いいぞいいぞ」


 食卓で。

 ノーランはワインを飲みながら笑っていた。

 私は肩を竦めるしかない。

 私の名前はクロエ。

 ヴァンパイアの女王、真祖序列二位、最強の女ヴァンパイアよ。

 今、例のサムライでヴァンパイア逹はピリピリしているわ。

 夜の帝国の警備体制も厳重に強化されて、街へ出歩く者達も少なくなっている。

 ま、ぶっちゃけどうでもいいんだけど。

 下々の奴等のことなんてどうでもいいわ。

 私がそれより気になるのは……


「ふふふ、中々イイ男じゃない」


 モニター映像に写ったサムライの顔を眺める。

 凛々しくて、男前。

 フェロモンばんばん出してる。

 ……いいわぁ。

 このサムライ、ペットにしたい。

 私、自分で言うのもアレだけど、性欲が強いのよね。

 並の男じゃ何人相手にしても満足できない。

 でも、このサムライなら……

 満足させてくれそうな気がする。

 明日、探しにいきましょ。



◆◆



「ん? 部屋間違えたか?」


 自室で寛いでいたら、窓から入って来た。

 サムライが。


「……いらっしゃい。サムライさん」

「テメェは?」

「クロエよ」

「……強いなテメェ。でも惜しい。女じゃなけりゃな」

「女は斬らない主義なのかしら? 紳士ね」

「いいや、向かってくるんなら話は別だ。ただ、向かってこねぇなら斬らねぇよ」

「そう、なら安心して。あなたと戦うつもりはないわ」


 私はワイングラスを二つ準備する。


「あなたに興味があるの。どう? ちょっと話さない?」

「……まぁ、いいぜ」


 サムライは席につく。

 私は対面に座り、笑顔でサムライの顔を覗いた。

 うんうん、やっぱりイイ男。

 ものにしたいわ。


「そうね……サムライさん、名前は?」

「大和だ」

「じゃぁ、大和って呼んでいい?」

「いいぜ。俺もクロエって呼ばせてもらう」


 頷いて、大和のグラスにワインを注ぐ。

 大和は味わうように飲んでから、刀を横に置き、背もたれにもたれかかった。


「ここに来た理由は?」

「ノーランってやつを殺しにきた」

「そう、ふふふ」


 私はワインを一口飲む。


「どこ出身? 帝国外でしょ?」

「いいや、異世界から来た」

「異世界、から?」

「異世界から」

「嘘……じゃないわね」


 今まで何人もの奴隷ペットを見てきた。

 だからわかる。

 大和は嘘をついていない。

 この真っ直ぐな目。

 確固たる自信に満ちている。

 私は微笑んで立ち上がる。


「異世界の話も聞きたいけど……」

「?」

「ねぇ、大和。今夜は泊まっていかない?」

「……ククク」


 大和は私の考えていることがわかったのだろう。

 私の元まで歩み寄り、抱きかかえる。


「……察しのいい男って好きよ、私」

「そりゃどーも」


 ベッドに放られる。

 そして、熱いキスを被せられた。



◆◆



 数時間後。

 私は大和の腕の中でくったりとしていた。

 この男、凄すぎる……

 私があそこまで手玉にとられるなんて。

 終始、大和のペースだった。

 私はただ乱れ、果てていた。

 ……こんなの、初めて。


「どうだった?」

「最高だったわ」

「そうか」


 大和は笑う。

 私は大和の厚い胸板に頬ずりした。


「……本当に、ノーランと戦うの?」

「ああ」

「ノーランは最初から全力で来ると思うわ。アイツの本気の一撃は容易に星を砕く。あなたがどんなに強くても、人間じゃ絶対に勝てないわ」

「そうだな、普通の人間、ならな」

「……?」

「俺は、剣を極めすぎちまったせいで人間って種族を超越しちまったんだよ」


 大和は苦笑する。


「いわゆる超越者ってやつだ。……ハァ、参ったね。これだから、強者に恵まれないんだ」

「超越者……」

「ま、とりあえずだ。ノーランとは明日中にケリをつける」

「……」


 この男には、何を言っても無駄そうだ。


「……わかったわ。勝手になさい」

「いいのか?」

「何が?」

「ノーランが死んでも」

「別に構わないわよ……私はそれより、あなたが死ぬほうが嫌よ。……だから、死なないでね」

「……わかった」


 頭を撫でられる。

 何年ぶりかしら、頭を撫でられるのは。

 凄く、気持ちいい……

 私はそのまま、深い眠りについた。



◆◆



 起きると大和はいなかった。


「フフフ、行ったのね」


 私は微笑みながら、窓を方を見る。

 開いていて、冷たい風が入ってきていた。


「見に行くわ、大和。あなたの勇姿を。……勝ってね」


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