引き篭もりの俺がライブ会場へ向かっている。
「あいつ、馬鹿なのか!?確率5%だぞ?さらに、賭け金10倍のマス目はその中の3つしかない。」
男は白黒の男に手を向ける。
「どうぞ、始めてください。」
支持された白黒男は銀色の玉を20×20のマス目の盤上に転がす。銀の玉は不規則な回転と共に移動する。
「「「「・・・・・・」」」」
その場にいた傍観者達はその光景に骨抜きにされている。
転がされた銀の球は×2.0と書かれたマス目にピタリと止まる。
「「「「おおぉぉ・・・」」」」
その場にいた人々は歓声を上げる。
「×2.0だ。賭け金は3000万だから、6000万の儲けだな。」
(コイツ、20分の1をこのタイミングで引き当てるとは・・・強運の持ち主め・・・)
白黒男はそう思いながら、儲けた男にこう問う。
「続けるかい?」
男は頷き、6000万Rを差し出した。
「賭け金は全額6000万。ゲーム内容は引き続きそれだ。」
「マジかよ、儲けた時点でそこは引くべきだろ。」と、周囲の人々が驚愕の言葉をあげていた。
そのギャンブル場に来ていた男・俊介は、2人の男の戦いを見ていた。
「あいつ、負けるという言葉を知らないのか?」
俊介はその戦いを見届けていた。が、目の前の少女に目を移す。黒い服に身を包み、その戦いに熱い視線を向ける少女に・・・
「ふん、なるほどな・・・」
俊介はそう言い残し、その場から去って行った。
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「Absoulutely Infinite計画・・・?」
最初は全く意味が分からなかった。突然菊乃さんが最強のAIとか言われても、以前の彼女を見る限りそんな物は感じられないし、信じられもしない。
「おいシュンペイ!どうした。」
「っ!?あ、クリスか・・・ごめん。」
あまりの真実に驚愕していた。おかげで周りが見えなくなっていた。
「っ!?・・・んぐっ!」
どこかから突然女の子の声が聞こえてきた。目を移すと、手を上に大きく上げている少女だった。
「あ、あの。取りましょうか?」
「ふえぇっ!?」
突然声をかけた事に驚き、少女は尻もちを着く。薄いオレンジ色の髪の少女はこちらを凝視する。
「あなたたち、誰ですか?」
少女はそう問う。
「今日のライブまでに暇つぶしに図書館に来た人間だよ。」
そう返すと少女は
「あなた達もライブに来るんですね!?」
と、目をキラキラさせながらそう言う。
「えっと、あの、本取りたいんですよね?」
「え、あ、はい。取って下さい。お願いします。」
本を取ってあげると、喜びながら丁寧に挨拶をし、その場から去っていった。
「おいシュンペイ、なにを見惚れている。」
「み、見惚れてねぇよ!」
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「さて、ライブ会場に行くぞ。もう時間だ。」
クリスの点呼と共に、俺達はライブ会場に向かう。
そこにあったのは、凄まじい大きさの会場だった。東京ドーム8個分はあるんじゃないか?
「ようやくその歌姫とやらの声を聴けるのですか。」
こだまはクールを装いながらも体をウキウキさせながら楽しそうにしている。
「そういえば、さっきの子の発言的に、あの子もライブに来るんだよな?」
「それはなにか関係あるのか?」
クリスは冷たい声色でそう言う。
「いや、別に?」
「歌姫・いのりのライブ会場はこちらでーす。」
誘導役を勤めている女性の指示に従い、無事に会場内に入る。この絶大な広さだと、席に着くまでが大変そうだ。
5分くらいかけてようやく席に着く。さすが歌姫、この会場も満員だ。
「歌姫とやらの実力を見せてもらいましょうか。」
こいつ、いつから厨二病になったんだ?一応成人だろ?恥じらいはもてよ。
「い・の・り!い・の・り!」
突然背後からそんな声が聞こえてきた。後ろに目を向けると30人くらいの集団がハッピを来て、凄まじい声援をあげていた。
「ファンクラブか?こんな奴らの前の席とは、面倒くさいな。」
「い・の・り!い・の・り!い・の・り!」
絶えることなく続く声援に呆れつつあった俺だが、そんな俺も密かにこのライブを楽しみにしていた。
「あと20分か。もう少し時間あるし、ゆっくりしていよう。」
クリスはねむりにつく。よくもまぁこんな空間で寝られるな。
「シュンペイ、こっち向いて下さい。」
こだまが俺の服を引っ張る。こだまの指指す方向に目を向けると、そこには見覚えのある赤髪の少女が・・・
「あ、あれは・・・カナさん?」
「はい、おそらくそうでしょう。もしもシュンペイの父親からの命令で動いているのなら、この場にアリスや双子AIがいるのも頷けます。常に警戒しておいてください。」
こだまの指示した通りに警戒を始める。
「でも、これだけの人集りの中騒ぎを起こせば、それこそ向こうの不都合なんじゃないか?」
おれは疑問に思った事をこだまに言う。
「それもそうですね。しかし、この前は騒ぎを利用してシュンペイを連れ出した。だから可能性も0ではありません。これだけ人の目に付く空間だとそれの実行は難しそうですが・・・。」
「皆さーん!本日は、風見いのりライブに来てくださり、ありがとうございまーす!」
そんな挨拶をした少女は、ついさきほど図書館で見た少女だった。そして、それと同時に
「い・の・り!い・の・り!We love いのり!いえーーーーい!!!!」
先ほどよりも一層声援が強くなったいのりファンクラブの皆さんもいた。
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「チェック。賭け金10倍。6億Rだ。」
20×20の盤上の、×10.0と書かれたマス目に止まる銀の球を見た後、男は目を薄く開け、白黒に身を包む男に目を向ける。
「イカサマだ!こんな連続で儲けられるはずがない!」
「なんでだよ。5%を2回連続で引いただけだろ?0%じゃないんだから何らおかしくない。それともなに?マスターさん、イカサマしてるからそんな事言うの?」
男は小さく笑みを浮かべる。
「それに、仮にイカサマだったとしても、根拠がないから証明できないしね。6億賭ける。ゲーム内容は同じ。」
周囲のギャンブラーは2人の男の光景に釘付けになっていた。
「分かった。いいだろう。」
白黒の男は球を転がした。




