五契のAIが対立をしている。
この世界には労働者と怪物が生息している。課せられた負債を返金する為にプレイヤーはモンスターを狩り、自らの生活を維持しながら少しずつ返済をしなければならない。それがこの世界の秩序だ。しかし、労働者と怪物の他にもう一つ、生きている種族が存在した。それが人口知能。自らが見て学んだ知識を決められたプログラムを活用して学習していくシステムだ。その用意されているプログラムは異常な程膨大な数で、人類の力を超越している個体もいくつか存在していた。
その人類の力を超越しているAIの内、初代最強のAIとなったのが、<雷光・菊乃>。電気を操るという、ごく単純な能力だと思われがちだが、彼女の能力は、静電気から100億ボルト以上の電撃を自由自在に操るというもので、現代の国の技術として扱えば非常に優秀なものだった。
しかし、ここまで優秀な精密機器となると、人類には最大限に扱う事ができず、仕方なくその場に適した知識を得ることのできる人口知能を導入した。しかし、人類の知識を凌駕する程の力を持ってしまった手に負えないAIは1人で活動を開始した。人々が手に負えなくなったAIは合計で5人存在し、合わせて<五契AI>と呼ばれた。
菊乃はその1人で、菊乃以外にと<五契AI>と呼ばれている存在は4人いた。名を、イズナ、ユクシル、アグナ、エムールといった。
当初、その五契AIの内、最強は全ての電気機能を停止させる菊乃だと言われていた。しかし、他の4人が新たな知識を付け、才能を開花させていくに連れ、菊乃の存在は少しずつ薄くなっていった。
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「それはユクシルの事を言ってるのか?」
菊乃はコクリと頷いた。
「あそこまで現実離れした能力を持った奴はいないわ。アレを作り出したお方はさぞ優秀な功績をあたえられたでしょうね。未だに立体計算が限界とされている中、時空計算を用いた機器を作り出すなんて・・・」
イズナはそれを聞いて呆れた表情を浮かべる。
「私は帰らせてもらうよ。アンタとこれ以上付き合うつもりはない。」
イズナは太陽のある方角を向く。
「グラビティ0・・・」
イズナは一瞬にしてその場から姿を消した。
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「たーだーいーまー」
俺とこだまで部屋の中に入り込み、クリスの待つ部屋に座り込む。
「随分と遅かったな。なにをしてたんだ?」
「元々は技を覚えさせるだけだったんだけど、いろいろ厄介事に巻き込まれて・・・」
よく考えてみると奇妙な話だ。今もなお監視されているのかもしれないと思うと・・・。父親の襲撃は一時は終わったとは言えど、それだけで終わるとは到底思えない。次に攻めて来ても何らおかしくない状況なのだ。
「そういえば、ライブの件はどうなったのですか?」
そういえばそんな話もあったなと記憶を張り巡らせている俺に、クリスは問いをかけてくる。
「それについてなのだが、リヨールという街までは少しばかり時間がかかる。前日の内に出かけようと思うのだが、どうだ?」
「ふむ、悪くはないと思うが、着いてからの時間はどう潰すんだ?」
着いてからライブまではかなりの時間が空くはずだ。宿舎探しを含めてもそれなりに時間は余るだろう。
「それについてはこんなモノを見つけたのだ!」
クリスの提示した広告には、巨大な建物の写真が写っていた。
「「これは?」」
「リヨール設立記念巨大図書館という名前らしい。」
図書館か・・・生憎本を読んでると眠くなってしょうがない体質なのだ。今回は遠慮させてもらおう。
「な・ん・と!この図書館、簡易魔法やモンスター攻略書、ドロップアイテム効率BOOKなど、様々な物も置いてあるらしい。」
ん?今効率と言ったか?それはガチ勢において超重要なモノだぞ?
「なるほど、それは行かない手はありませんね。私は賛成です。シュンペイは・・・」
「勿論行く。色々と気になる物もありそうだしな。」
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とある平原の中、1人のAIと銃を持った男が向かいあっていた。
「君が五契AIの内の1人、ユクシルか・・・君を討てばかなりの賞金がもらえる。容赦無く殺させてもらうぞ。」
男は銃口を少女に向け、躊躇いもなく弾丸を放つ。秒速260mという亜音速を誇る異常な速度で飛んでいく弾であったが、少女はいとも簡単に避ける。それどころか、銃を放った男は腹を抑えてうずくまる。
「んぐっ!はぁはぁ・・・」
少女は男を見下しては何かを言い放つ。
「私は五契AI最速だよ?その程度の弾で討てる訳ないじゃん。イズナの方がよっぽど速いんじゃない?にしてもさぁ、まさか二発でそこまで苦しむなんて・・・」
「貴様・・・今どうやって・・・」
少女はしゃがみ込み、男の髪を持って強制的に顔を上げさせる。
「教えてほしい?知った所でなにもできないだろうけど・・・しょうがないわね、教えてあーげるっ!それはぁ、私が時を止める能力を持ってるからでーす!現在の科学も進歩したものですよねぇ。前までは3が限界だったのにー。」
と、少女は可愛らしい声でそんな事を告げる。時を止める能力者・ユクシル。彼女は重力を操るイズナを殺せるとまで言われているAIだ。
(でも私にも勝てないやつはいんだよ。なんだよ、AIキラーって・・・)
そんな事を考えては、少女はその場から歩いて去って行く。歩いていた矢先、何者かが少女の歩みを止める。
「ユクシル、待ってくれないか?」
ユクシルは振り向き、声の主と向かい合う。声の主は全身を茶色の衣服で覆っていて、性別すら特定できなかった。
「誰だ?アンタ・・・顔見知りじゃないよな?」
「君の能力の欠点は、時間を止めている最中、物理的に直接何かが2回手に触れると時間が動き出してしまうこと・・・」
(なんでコイツは私の弱点を知ってるんだ?)
その声の主は続けて言った。
「そしてもう一つ、一度時を止めれば、もう一度時を止める際に30秒のインターバルが必要になる事。先ほどの男と戦ってからまだ25秒しか経っていない。」
その者は一瞬にしてユクシルの首元に指を当てる。
「私はいつでも君を殺せる。だからこそ君に朗報だ。その能力から一切の弱点を減らす方法だ。攻撃力の上昇すら狙えるな・・・それさえあればAIキラーのアグナだって殺れるぞ?」
少女・ユクシルは息を呑み込み、衣服で身を包んだ者に何かを告げた。
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「さて、リヨールに行くとしようか!」
早くもライブの前日を迎え、俺達は遠出の支度を始めたのだった。
はい、引き篭もりの俺が刑務所で変な労働を受けているを久しぶりに投稿しました!動機はこの章の始めのまえがきの通りです!
新章が始まりましたね!ですが、色々ありまして投稿頻度がお下がり致します。ということで、次回の引き篭もりの俺が刑務所で変な労働を受けている。もしくは夢喰少女をお楽しみください!




