引き篭もりの俺が化け物兄弟と戦う様です。
能力で作り出した武器?
「私は氷を操るAIなの。絶対零度の前に散りなさい。」
氷の武器を構えたしずりは猛ダッシュで接近する。
ガチィ!!
再び交わり合う二つの剣。これは殺し合いだ。
お互いに容赦は見られない。俺の振りかざす剣をいともたやすく正確に裁くしずり。
「くっ!」
思わず声が漏れた。一見互角の様にも見える戦いだが、明らかにしずりには余裕がある。このままやりあっても恐らく負けるだろう。
ガキィン!ガキィン!
何度となく鳴り響く剣と剣が擦れ合う音。恐ろしいのは一本の剣で二刀流の俺の攻撃を全て防ぐしずりだ。人工知能だからあらゆる守護術を学んでいても何らおかしい事はない。
あと何秒だ・・・
これだけの攻防を繰り返しているつもりだが、未だにこだまの準備が整わない。しんどい。1秒1秒が尋常じゃない程長く感じる。しずりが攻撃に入ったら場は一変するだろう。一瞬で俺は殺られる。
ブワァ!!
突如として周囲に炎のリングが出来上がる。すずりだ。
「すずり、あんた、今魔法使ったらこだまさんの方が・・・」
「大丈夫、2つ位なら20秒くらい保てる。こっちまで来られたらあっちの魔法も切れちゃうよ。」
すずりの言う「あっち」とは、初手で仕掛けた炎魔法の事だろう。じゃあこの炎のリングの意味はなんだ?
「シュンペイ!魔法の準備が整いました!」
「分かった。一時離脱する。その隙に!」
俺はしずりとの戦場から大きく一歩下がる。が、
「なんだよこれ!」
先ほどすずりの作った炎のリングが邪魔をしてこれ以上後ろに下がれない。
「どうすれば・・・」
「フフ、これではこだまさんの魔法が撃てないわ。」
しずりが一歩、また一歩と接近してくる。
「撃て!!」
俺の言葉にこだまは「でも・・・」と困惑した様子を見せる。
「撃つんだ!今は最善を尽くせ!」
俺の意図を悟ったこだまは「分かりました。」と頷いてみせる。
「業火滅却!!!」
炎のリングの中心を巨大な光の矢が突き刺す。その数秒後光の矢は発火を始める。
「すずり!まずい!これは想像以上の魔法よ!一時撤退を図るわ!」
しずりの指示にすずりは炎のリングを解除する。俺も逃げなきゃ!
発火している光の矢はついに大爆破へと至る。
ズドォォォ!!
爆発が収まった頃には辺り一面の森林が消えて無くなっていた。無くなりはしなかった木ですらも真っ黒になっている。
「あんなの受けたらひとたまりもないな。」
再度しずりとすずりが足を踏み入れる。
「まだやんのかよ。」
だが、先ほどとは違い、今度はすずりも炎の剣を構えていた。
「あなた方を少し見くびっていたわ。〈煌剣・バーストフレア〉と〈零剣・フリージングブレード〉であなた方を倒してあげるわ。」
今度は2人まとめて相手って事か。炎使いと氷使いの双子AI。コンビネーションもさぞ素晴らしい事だろうな。
「ダメです。2人を同時に相手するとなると、対応する手段が思いつきません。」
「でも戦わない事はないだろう?」
こだまは「当たり前です。」と頷く。
「随分往生際が悪いじゃない。」
「いいよ!灼熱の絶対零度で消してあげる!」
2人は並んで手を正面に出す。
「「パープルバーストッッ!!」」
蒼き氷と紅き炎が混ざり合って毒々しい紫色の球体が出来上がる。その球体はみるみる巨大化していく・・・いや、こちらに接近している!?
「あの技はこれまでとは別格です。私の〈業火滅却〉の倍は強い。」
マジかよ!さっきのこだまの技であの破壊力だ。それの倍となると考えたくもない!
ズドドドドドドド!!
地を削る音と共にゆっくり接近する球体。
「逃げるぞ!!」
「逃げてどうするんですか?それじゃ敗北するだけですよ?」
「今はそんな事・・・」
こだまは俺の命令を全く聞かずに詠唱を唱え始める。
「サーズライトウォーべルード、パフィオドグロムズ、エンドロードッ!!」
こだまに赤黒い電撃が宿る。
「「させるかッ!」」
2人のAIは手に持つ氷と炎の剣で応戦する。対して俺もイクセントで2人を相手する。
最初から殺し合いだとは思っていたが、想像以上だ。この2人、手を組めばアリス位なら軽く超えるだろう。
ガキィン!ギュギィン!!
しずりとすずりの2人を同時に相手にするとなると、とても俺1人では手が負えない。
「こだま・・・早く・・・」
「分かってます!だからだまっててください!」
こだまは必死に詠唱を唱える。あの巨大な球体を止める為の魔法だ。その分時間がかかるのも納得がいくし、2人が止めにかかるのも納得がいく。でも、この状況はいくらなんでもまずい!
キィン!ガキィン!
絶えず俺と2人の攻防戦は続く。しかし、時間が経過するごとに疲労が溜まり、攻撃が重くなる。AIは疲れないのか?
「いきますよ!〈アンリミテッドバスター〉!!!」
準備が整ったこだまは杖を構える。
ホワァァァァ・・・チュドオォォン!!
赤黒い巨大な波動が球体に向けて放たれる。
ギュィィィィィィィィィィィィィィィィ………
ぶつかり合う2つの気は轟音を放ちながら押し合う。
ギュィィン・・・ズドドドドドド!!
この音は・・・まさか・・・
ぶつかり合いに勝ったのは双子AIのパープルバーストだった。やはりこの2人の力は尋常じゃない。ただ、こだまの技の甲斐もあって球体のサイズは2回り程度小さくなっていた。
「終わった・・・」
俺とこだまが敗北を認めたその時・・・
バチチチチチチチチィィ!!
突然落ちた雷と共に球体は消えていった。その数秒後、大雨が降り注ぐ。
「今の雷・・・まさか・・・」
しずりは冷静を保ちながらも小刻みに震えている。
「ちぇっ、これからが楽しみだったのに・・・」
反してすずりは残念そうな表情を浮かべる。
「天気が一変した?」
こだまと俺は何が起きたか理解していないので、かなり困惑している。
「戦いはそこまでよ。」
突如現われたピンク色の髪色の少女。
「邪魔しないでよ!菊乃姉!」
「勝手な事はしないでって言ったはずだけど?だいたい、しずりにはすずりのお世話を任せたはずなのに、こんなに森を荒らして、どうしてくれるつもりなのかしら?」
菊乃、その名前には聞き覚えがある。運動会の借り物競争の時に5本の指に入るAIとして名を上げていたやつだ。
「すずりが無理矢理私を巻き込んで・・・」
「言い訳は聞きたくない。とりあえず、お家に帰ったら罰が必要よね。」
しずりの顔が青くなる。家では一体何が起こるんだ!?
「さて、シュンペイさん、こだまさん、あなた方の事はこの子たちからよく聞いております。しかし、どうしてこんな事になってしまったんでしょうか?」
俺達は菊乃さんにここまでの出来事について話す。
「なるほど、つまりこの子達が惜しむ事なくホワイトドラゴンとその子犬さんの技を発動させる方法を教えれば良かったと言う訳ですね。じゃあ、今すぐ教えてあげなさい。しずり、すずり。」
この人、2人に対しては態度が変わるな。
「なんで!?私達に勝ったら教えるって話だったんだよ?」
反論するすずりの服をしずりが引っ張る。
「これ以上罰を増やすような犯行的な態度を菊乃姉にするのは止めて。断食期間が3日から5日になるわよ。」
マジでそっちの家庭事情が知りたいわ!
その後、俺達は松村とホワイトドラゴンの扱い方を習ったのであった。




