伝説のアサシンの最期!?
もう何人殺しただろうか・・・
暗殺業を始めてしばらくの時が経った今、クリスの名前を知らない暗殺者はいなくなっていた。
もう1週間近くアリスに会っていない。
「久しぶりに帰るか、心配もかけただろうし・・・」
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「ただいまー。」
「お姉ちゃん、何やってたの?1週間も家にいないなんて、今までそんなことなかったじゃん。まさか、彼氏さんでも出来た?」
アリスが興味津々な目を向けてくる。
「そんな事はないよ。それに、男性と関わることなんてほとんどないし・・・」
「でも、外で見かけた男性に一目惚れして、彼の人生を追いかけているみたいなロマンチックなてんかいがあるかもしれないじゃん!」
なんか、アリスも変わったなぁ。小さい頃はおままごとなんてしてたのに・・・もう高校生だもんね・・・
「お姉ちゃんどしたの?ボーッとして」
「え?あ、考え事してただけ。」
「あっそう。ならいいんだけど・・・」
長い間こんなに安らげる空間を捨ててたんだな。ごめん、アリス。
「あ、お姉ちゃん!これ見てよ。」
アリスは自分の持っている携帯を嬉しそうに見せてきた。
「凄いカッコいい人がバイトに来たんだ!」
携帯に映っていたのは、シュッとした雰囲気の黒髪の男性だった。
「東洋人?」
この国では東洋人は暗殺の対象になりやすい傾向がある。売り払えば高くなるからだ。女性ならばなおさら高いが、男性でも西洋人の女優並みの値が付く。これは危ない。
暗殺者の私は殺人を快いと思っていない。しかし、やらなければこの世界ではやっていけない。
でも、自己責任だよね。
クリスは自分で勝手に納得して眠りに付く。
「お姉ちゃん、一緒に寝よ。」
寝室にアリスが入ってくる。
「え?きゅ、急にどうしたの?」
「いや、なんでもないよ・・・」
当たり前のようにアリスは布団に潜り込む。
「私ね、さっき見せた男の人、好きになっちゃったんだ。どうやってこの国に来たかは知らないけど、こんな国じゃ危ないと思うの・・・」
アリスもさっき自分が心配していたことを心配していたみたいだ。
「私もそう思う。しかもあの人・・・」
「うん・・・私ね、恋愛経験をしたことがなくて、何をどうすればいいかも分からないし・・・」
本気で心配しているみたいだ。何かしてあげられないかな。
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「おはよー。」
アリスがリビングへやってくる。
「なにつくってるのー?」
キッチンに向き合っている私にアリスが問いかける
「お弁当・・・作ったことなかったからね。次、いつ会えるか分からないからさ・・・」
「・・・ありがと・・・」
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「今回の依頼はとても重要だ。報酬金は3000万」
3000万!?そんな大金、見たことも聞いたこともない。
「東洋人だ。それなりの金額がつくことは当たり前だろう。」
えっ!?東洋人・・・
1人だけ心当たりがあった。嫌な予感がする。
「この男だ・・・」
依頼者はターゲットの顔写真を渡す。
その通りだった。つい昨日、妹が話していた人物・・・
「できません・・・この人は私にとって大事な人なんです。」
私は初めて依頼を断った・・・
「お前の妹さん、人質に取られてるぞ。リアルタイムで放送してる。見てみろ」
依頼者は動画を見せてくる。確かにそこにはアリスがいた。
「その男を殺さなければこいつが死ぬ。それでも断念するか?」
こいつ・・・
「こうでもしねぇとお前、働かねぇだろ?安心しろ、お前の職業については知らさせていない。」
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アリスの為だ、仕方ない・・・
クリスは手慣れた手つきでスナイパーライフルを構える。
「本当に、ごめん・・・」
パァン‼︎
放った弾は一直線上にスクリューを描きながら飛んでいく
600mの距離を百発百中で当てるクリスにはこの程度の仕事は簡単すぎた。
ブシャァッ!
その瞬間、彼女の心に一つの言葉が過った。
『自分にとって最も大事な人を守りなさい。』
答えがわかった。説明がとても難しい。ただ、一つ言えることがある。
人がいればその人を大切にする人がいる。自分を親が大切にするように、自分は兄弟や友達など、私ならアリスの様に・・・
私はアリスを守りたいがためにアリスの大事な人を殺した。私は誰かの大切な人を何人も殺した。ただの自己満足の為に・・・
クリスは自らの手に持つスナイパーライフルを捨てた。
「もう見たくもない・・・こんなものっ!」
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<聖教会・アテーナ>
「どうか、私を許してください。今日まで何百人もの人間を殺してしまいました。ウル様、あなたと同じ遠距離を得意とするものとして、とてもお恥ずかしいです。私はこの罪を償う為にどんな拷問も処罰も受けます。どうか、私の罪を許してください。」
こんな事をやったところで殺した人達が戻ってくるわけではない。でも、できる限りの事はしたかった。
アリスに顔向けなんてできない、自首をしよう。さようなら、アリス・・・
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「この女の才能は素晴らしい!ただ、大量殺人犯だ。模範囚として期待するのは難しいだろう。この女には<別次元探検隊>の刑を下す。終身刑だ。そして、その世界で誰か1人にでも被害を与えるようなことがあれば・・・わかっているな?」
クリスはそっと頷く。
「ひとつ、お願いがあります。私の事は絶対に放送しないでください。妹に辛い思いをさせたくないのです。」
裁判官は顔を合わせながら渋々納得する。
「こちらからも約束だ。お前ほどの暗殺者の単独行動は危険だ。刑執行後、1週間以内に共に行動するモノを選べ。それが達成出来ない様ならすぐさま貴様のことを全国に放送する。」
「・・・分かりました」
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「新鮮な世界だ。空気がおいしい。」
周囲を見渡すと、現実世界とは全く異なった世界。まさに別次元だった。
「えーと、まずは職業を選ぶんだっけ・・・」
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「はい、それでは職業を選んでもらいます。この紙に書いてある職業になることができます。」
クリスは渡された紙をじっと見つめる。
銃士にするか?でも、今スナイパーライフルを持ったらあの時の記憶がフラッシュバックしてしまう。それはダメだ。この記憶は絶対に忘れるんだ。
そこでクリスは1人の神様を思い出す。弓を司る精霊・ウル。自分の住んでいた国にいた神の名前だ。つい先日教会で謝罪をしてきたばかりだが、私にとってその精霊は大事だった。今は亡き母親の信仰していたかみだからだ。そこで私は決断する。
「弓使いで・・・」
「はい、わかりました!ようこそ、始まりの街へ!」




