バレンタイン、それは告白日和です!
注意
当小説はバレンタインを記念にバレンタイン限定特別ストーリーとなっています。
よって、本編とは全く異なるストーリーとなります。つまり、今回には以下の成分が含まれます。
①本編とはかけ離れたストーリーとなっています。
②現在の本編の数日前の話となっています。
③よって、カナが主要キャラとして登場します。
④本編では語られない強い恋愛要素が含まれます。
以上の成分にアレルギーを持つ方は直ちにバックすることをお勧めします。
それでもおkな方はどうぞ。
はぅあぁぁ〜。どうしよう。ついにこの日が迫ってきた!
クリスは再度カレンダーを見つめる。日付は2月12日。
「そろそろバレンタインデーか・・・緊張するなー。」
「あら?クリスさん、なにをやっているんですか?」
悩んでいるクリスの真後ろに突然姿を現すカナ。
「なっ!お前、いつから!?」
「カレンダーを見つめてた時からです。」
結構前から見てたんだな。
「お前なら私が何をしたいかなんて分かるだろ?」
するとカナは笑みを浮かべて「知らないでーす。」と言う。
コイツ・・・
「分かってますよ!バレンタインですよね!シュンペイさんへの・・・」
こ、コイツ!自分でも顔が真っ赤になっているのが分かる。
考えてみればどうしてあんなヒキニートを好きになってしまったのだろう。イケメンというわけでもなくとびきり優しいわけでもない。むしろケチだ。恋愛と無縁なあいつは私の感情などに気づいていない。何度かバラされそうになったが・・・
「恋する乙女ですか・・・いいですね。」
「そ、そういうお前こそあいつにしょっちゅう・・・え、エッチな事を・・・でもそれは、お前にも好きという感情があるからなんじゃないのか?」
するとカナは少し黙り込み、「まぁそうですね。」とだけ言う。
「一緒に作りましょうか・・・シュンペイさんへの本命チョコ。同じギルドなだけあって、友チョコ的な感じで渡す事が出来ますよ。」
言われてみればそうだが、それは嬉しい事なのだろうか?できれば私はもっとあいつと親密な関係になりたい。そうするには私の恋愛感情を気付かせるしか・・・
「ならば大きい物を作ってみてはどうですか?チョコケーキのような大きい物なら友チョコとは思わないはずですよ。つまり間接的に本命ですよ!って伝えられます。」
ケーキか・・・手がかかりそうだが、2人で作ればすぐに終わるかな。
「分かった。カナも一緒に作るんだぞ?お互い同じ相手に渡すんだし・・・」
「それはどうでしょうか。同じ相手に本命チョコを渡すのに2人で一つの作品を渡してしまったらどちらの本命か分からなくなりますよ。私はいいですがそれはクリスさんからしたら不都合なのでは?」
そうだな。確かに2人で作ったらどちらの作品かわからなくなる。
「ならばどちらが良い作品を作れるか勝負だ。」
「はい、いいですよぉ。ただ、私はチョコも渡し方も素晴らしいですよ。」
「どうせ色仕掛けでも・・・」
「それも悪くないですが、もっといい感じの渡し方をしますよ。」
「お前にもまともな考え方があるんだな。」
「はい。女体盛りのチョコバージョンで渡そうかと・・・」
カナの考えるいい渡し方はにょた・・・えっ!?
「お前、今なんて・・・」
「あ、すいません。間違えてました。渡すじゃなくて我が身を差し出すですね。」
「そこじゃない!女体盛り!?アホか!」
「アホとは失礼ですね。私も私なりに理想のシチュエーションがあるんですよ?」
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「シュンペイ・・・私はお前の事が前から好きだったんだ・・・」
クリスはシュンペイニ自分の思いを伝える。
「好きって・・・俺たちは仲間だろ?これ以上の関係になったら周りからの視線が・・・」
「私は・・・私は本気でお前の事が好きなんだ!お前ともっと、親密な関係になりたい。この世界から出なくてはならない時はいつか来るけど、その日までは私の彼氏として・・・」
そこに身体中にチョコを塗りたくり、いたるところに生クリームや苺などをトッピングしたカナが台に乗って現れる。
「シュンペイさん、カナの女体盛り(チョコバージョン)でーす。」
「なっ!?カナさん、なにやってんの!?」
シュンペイは顔を真っ赤に染め、恥じらいを隠せない様子。
「私の体に乗っているチョコ達を、手を使わないで食べてください。お願いします。」
「な、舐めろって事か!?」
カナは「はい。」と当たり前の様に言う。
シュンペイは口をカナの体に近付ける。
「んっ、あぁん!」
カナの口からエッチな声が漏れる。
「こ、ここの生クリームを舐めればアレが・・・」
シュンペイは舌を出してカナの胸に乗せられた生クリームに接近する。
ペロッ。
「あぁん!」
再びエロい声が漏れる。
「次は下半身の方を・・・」
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「という風にクリスさんの目の前で私の体を舐めまわしてもらおうと・・・」
コイツ・・・相当頭がおかしいのか・・・いや、想像してしまった私もおかしいのかもしれない。
「別に、クリスさんがやっても構わないのですよ?」
「やるか!そんなもん!こだまの様な可愛い体の持ち主でもやるもんか!」
「今私の体を幼いみたいに言いませんでしたか?それは私の胸の事を言っているのでしょうか?」
廊下から顔をヒョコッと出すこだまが怒った様子で睨みつける。
「いや、なにも言ってないぞ?ただ、こだまのような体は軽そうで羨ましいなと・・・」
「やっぱり言ってるじゃないですか!他界たかーいしますよ!」
「こだまさん、そのネタ、もう4回目くらいじゃないですか?」
するとこだまは「うるさいです」とだけ言う。
「私だって自分の体には不満があるんですよ?中学生になっても一行に胸が膨らまない。それでついたあだ名が「貧乳」ですよ?そのまますぎです!」
「それより!こだまさんは誰かにチョコを渡したりしないんですか?」
するとこだまは「なんで急にチョコを?」と言う。
「バレンタインですよ!バレンタイン!」
「あぁ、好きな人にチョコレートを渡すやつですね!でも、好きな人なんていませんし、渡してもシュンペイに友チョコ程度ですかね。」
興味なさそうにこだまが言う。確かに好きな人とかいなそうだもんな。
カナがこだまの耳元に何かを囁く。
「以前ハロウィン祭で一緒にいた男性には渡さないのですか・・・?」
するとこだまは顔を赤く染める。
「な、なんでその事を!?で、でもあの人とはもう別れたんです。あの後向こうから「価値観が合わない」なんて言われて・・・」
「えっ!?こだまって、誰かと付き合っていたのか!?」
知らなかった。はぁ、私だけじゃないか・・・好きな人に積極的になれていないのは・・・もっと勇気を振り絞らなきゃ・・・
「とりあえず、本番は明後日ですよ。個人個人で作りましょう。」
「あ、少し待ってくれ。」
気付いたら言葉が出ていた。
「チョ、チョコの作り方が分からない。近所の本屋についてきてくれないか?」
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<ラグズル図書館>
「ここは簡易魔導書がいっぱいあるんですよ?ツムラに能力を覚えさせるのにうってつけの場所ですね。」
こだまはバレンタインとは全く関係の無い話をする。
「こだまさん、今回はあくまでクリスさんのバレンタイン計画なんですよ?」
「分かってますよー。」
クリスは食べ物のレシピ本の集まる場所へ向かう。
「チョコレートを美味しそうにデコる為の裏技・・・」
クリスは1冊の本を手にとって何かを呟く。
「クリスさん、その本はチョコを作れる前提の本なのではないですか?」
クリスは顔を俯かせる。
「それはそうなのだが、どこを探してもその系統が多くてだな・・・」
「なら、私が教えましょうか?この位なら友達と作った事があります。」
少し自信あり気にこだまが言う。あれ?その前にこの世界にチョコレートなんてあるのだろうか?いや、レシピがあるって事はあるのだろう。
「とりあえず今回はこだまさんに先導を取ってもらって作業を進めましょう。」
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「えーとですねぇ、オーブンでこれを温めてっと、あっ、トッピングでチョコスプレーとかも付けた方がいいですよね。」
思いの外しっかりしたチョコレートができそうだな。
クリスのそんな期待も束の間、すぐに事件は起きてしまった。
「あっ!チョコレートを買ってきていないじゃないですか!どうしてこんな大事なモノに気付かなかったんでしょう。カナ、買ってきてくれますか?」
「それがですねぇ、この辺にコンビニ的なものご見当たらないんですよ。以前シュンペイさんがパシリ扱いされてアイスを買ってきたコンビニはここから500mくらいありますし・・・」
なんでこんなに不都合が重なったんだか・・・。
「では、シュンペイに行かせましょう。カナの色仕掛けがあれば納得するでしょうし、一時的にシュンペイの目逸らせます。」
「なるほど・・・わかりました。」
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「バレンタインかぁ、今年は何個貰えるかなーって、この人生でチョコを貰った記憶ないわ。」
シュンペイは部屋に1人でくつろいでいた。
そういえばここって異世界だよな?だから昔の俺とは違う。もしかしたら貰えるかも!クリスとこだまは期待できないけど、カナさんならくれると信じてる!あ、でも貰えなかったら辛いな。考えなかった事にしよう。そういえばお母さんからも貰えないんだな。今年は過去最低記録の可能性もあるのか・・・
「はぁ・・・」
「どうしたんですか?そんなに深い溜息をついて・・・」
「今年はバレンタインチョコ貰えないんじゃないかなって思って・・・」
するとカナは軽く笑みを浮かべる。
「丁度いいですね、シュンペイさんにチョコをあげようと思っているのですが、作る為のチョコがないんです。買ってきてくれますか?それなりの報酬は与えますよ。」
カナは下着姿になり急接近する。
「わ、分かりましたぁ!」
「やっぱりシュンペイさんは色仕掛けに弱いですね・・・」
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「買ってきましたー!」
シュンペイが帰ってくる。そこにカナが駆けつけ
「おかえりなさいませ。シュンペイさんはどのようなチョコがお好みですか?」
シュンペイは黙り込む。10秒程度黙ったところで
「ううん、カナさんの好きな形でいいよ。」
「ダメだぁ!」
キッチンからクリスが走ってくる。
「こいつのチョコはまじで危ない!そ、その・・・身体中に・・・チョ・・・コを・・・」
「クリス?お前、何が言いたいんだ?」
「あっ、いや、なんでもない!なんでもないからあっちに行っててくれ!」
シュンペイは頭を傾げながらも納得する。
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「私は渡さないんですよ?クリスさんが止めに来ちゃったらクリスさんも渡すことがバレちゃいますよ。あの人に限って気付くとは思えませんが・・・」
「だいたい、お前があんな話をするから止めに入ったんだろうが!」
カナの言う「渡す」ではなく「差し出す」という話だ。あんな事を言われたら止めるしかない。
カナはにこっと笑顔を向ける。
「ごめんなさいね!」
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〜当日〜
ついにこの日が来てしまった・・・うまく行くといいのだが・・・
「おいクリス?お前、顔が真っ赤だぞ。風邪でも引いたんじゃないか?」
クリスの背後にシュンペイが現れる。
「っ!?お前、いつからそこに?」
「え?今だけど・・・」
い、今は渡す時なのか?でも、後ろで2人が見ているし・・・やめておこう。
「そういえばさぁ・・・」
「っ!?」
ダメだ!いざという時の事を考えると話かけられただけでも反応してしまう。
「お前、本当に大丈夫か?それより今日ってバレンタインじゃん?その、友チョコでもいいからさ、俺に渡すものがあるんじゃ・・・」
やっぱりわたしの恋心に気付いていないようだ。でも・・・
「チョコというのは貰えるよう頼むものではないと思うぞ。」
するとシュンペイは「そうだよな」という。
「あ、でも・・・いや、なんでもない。」
「やっぱりお前・・・まぁいいや。」
シュンペイはその場を去って行く。
「はぁ、今日中に渡せるだろうか・・・」
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「シュンペイ、少し2人にならないか?」
「 」
カナとこだまが陰で話している。
「2人って、俺、結構期待してるぞ?」
「あぁ、それでいいぞ。」
2人は家を出て誰もいない木の陰に入り込む。
「スー・・・ハァー・・・よし!」
勇気はあった。でも、言葉が出てこない。喋ろうにも喋れない。
何を言えばいいのだろう。正解のルートが分からない。選択肢が現れない。答えが見えない。回答の先に何があるのかもわからない。怖い・・・フられるのが怖い。本当に・・・こんな感情を抱いたのも初めてだし、いつからそういう目で見るようになったのかも分からない。友情とは全く異なる何か。普段当たり前の様に接しているのに、どうしてこんな時に限って・・・もう30秒近く経つのではないだろうか・・・早く何か言わなきゃ・・・
「あのっ───」
「クリス・・・あっ・・・」
台詞が被ってしまった。どうしよう。私が早く決断しなかったからだ。どちらが先に言うべきか?いや、告白の後ではシュンペイも言い辛くなるだろう。
「先に言っていいぞ・・・」
「え、あ、そうか?」
沈黙が過る。なんて言われるのか・・・わからない・・・わからないよ・・・どうしてこんな感情を抱いたのか、全くわからない。
「チョコ・・・だよな?」
やっぱり気付いていた。いや、この状況で気付かない方がおかしいが・・・
「あ、うん。」
「友チョコか?それとも世話チョコ?」
「え、ちがっ・・・」
ダメだ・・・雰囲気を完全に壊された。もうチャンスはないのに・・・どうすれば・・・
「本命チョコだったら受け取れない。」
えっ?・・・
「俺たちはあくまで囚人だ。お互いにこれ以上の関係になったとして、もしも釈放の日が来たらそれまでだ。お互いにそんな感情は抱きたくないはず。まぁ、本命なわけがないけどな・・・」
ダメだ・・・完全に恋愛を拒絶している。私の立場がこだまだろうがカナだろうがこうなっていたのかもしれない・・・
どうすれば・・・
どうすれば・・・
どうすれば・・・
この状況に正解なんてなかった。ならば私は失敗にしないだけだ・・・今回は保留だ。来年か・・・
「友チョコだ。仲間として渡すのは当たり前だろ?受け取ってくれ。」
チョコをほいっと投げる。
それを受け取るシュンペイ。
これが正しい答えなのかはわからない。でも、これが運命だったのだろう。
「ありがとな!」
シュンペイは言葉を残してその場を去る。
「待ってくれ!」
シュンペイは歩みを止めてクリスの方へ向き直る。
「・・・こちらこそ、ありがとう。」
私は今持てる最高の笑顔を見せた。
「おう、これからとよろしくな!」
私はそっと頷く。
失望した。彼が完全に恋愛を拒絶していることに。私の本心に気がつかなかったことに・・・それでも私はそんな鈍感なシュンペイの事が・・・大好きだ・・・
特別編で少しずつ語られていくクリスの恋愛物語。あれ?これって物語シリーズにありそうじゃない?
愛物語とか恋物語とか・・・
そんな話はどうでもいいのですが、男性の作者が女性のクリスの目線に立って物事を進めたので、考えている事がいつもと違ったりして大変でした。しかし、この展開は予想していた人は少なかったのではないでしょうか?
フられるか成功するかのどちらかかと思いきや、どちらでもない微妙な終わり方。人によってはしっくりこないかもしれません。その点に関しては3月のホワイトデー編をお楽しみに!
今回を通してクリス推しが出来てくれると嬉しいですね!作者は完全にカナさん推しですが・・・