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引き篭もりの俺が刑務所で変な労働を受けている  作者: うすたく
引き篭もりの俺がこの世界の運動会を行っている。
19/43

運動会、それは見えないモノが見えてくるもの。

「始まりの街組<エルモ選手 職業:ランサー>、ラグズル組<カーナラル選手 職業:魔法使い>、フェノールタウン組<リョウ選手 職業:剣士>」


「こだまちゃん!見ててねー!」


 リョウは再び周りから痛い視線を喰らう。


「自分で傷口を抉って、辛くないんですか?」


 カーナラルがリョウに問う。しかし質問内容に合わない内容が帰ってくる。


「あれ?あなた、どこかで会いませんでした?」


「あ、面と面とで会った事はないですが、一度だけ・・・」


 リョウはやはりと言わんばかりの顔をする。


「でもなんで彼女の事をふったんですか?もしかしたらもう一生チャンスは来ませんよ?」


 本人とこだましか知り得ない事をカーナラルは言う。


「確かにもう来ないチャンスかもしれない。でも僕はこれから寄りを戻すのさ!」


 するとカーナラルは呆れた様子で「上手く行くといいですねー。」と興味なさそうに言う。


「いちについてー・・・」


 突然スタートの合図が鳴る。


「容赦はしませんよ。」


「よーい・・・どん!」


 スタートの合図と共にカーナラルは両サイドの選手に触れる。


「こんなんでよろしいですかね。」


 途端、エルモ選手の顔が真っ赤に染まる。


「ダメだぁ!なんでこんな時に思い出してしまうんだぁ!」


 エルモ選手は会場から逃げ出す。


「えーと、エルモ選手は棄権という事で、強制的に3位となります。」


 しかし、カーナラルは納得の行かない表情だった。


「なんであなたは顔色ひとつ変えないのかしら?」


 カーナラルはリョウの顔をうかがう。


「逆になんで顔色を変えなければならない?」


 するとカーナラルは言葉を発するのをやめる。


「まあいいや、お互いに能力を使わずに正々堂々と戦おうか。この<障害物競争>で!」


 リョウは握手を求めるようにカーナラルの手を握る。


「はいはい、そうですね。」


 カーナラルはテキトウに返事をする。


 2人はその場から走り出す。


「でも、女性が男性に勝てるわけないじゃないですか。」


 するとリョウは表情を変える。


「そんな事ないと思うけど・・・君はかなりの実力者だと見ている。なんか、魔法使いとは関係の無い特別(●●)能力(チカラ)を隠してないかい?」


 意味あり気な質問にカーナラルは「察しが良いですね。」とだけ言う。


 グラウンドの4分の3を超えた辺りでリョウのペースが急激に上がる。


「うぉし!俺の勝ち!」


 リョウは紙を拾い上げて勝ち誇る。


 しかし、最後の最後でペースを上げて勝って、その上勝ち誇るなんて、いい評価は受けないし、むしろ周囲の女性からは「うわっ、サイテー」や「マジでなんなの?アイツ」などの批判的な声が挙がる。


 リョウは紙を開くと跪く。


「なんだよ・・・これ。」


 絶望した表情を浮かべる。


「そんなに酷いモノを引いたんですか?」


 あとから到着したカーナラルが嘲笑うように言う。


「実はですね、この障害物競争を提案したの、私の所属しているギルドなんですよ。勿論準備したのも。だから私はあなたが何を借りなければならないのかを知っている。」


 リョウは再度紙を見て、「言ってみろ」という。


「その前に立ったらどうですか?」


 カーナラルはリョウの腕を持ち、立たせてる。


「彼氏(彼女)への別れのメッセージ・・・ですよね。ふふっ、あなたの為だけに用意したんですよ。」


「こいつ・・・」


 リョウは拳をグッと握りしめる。


「ふざけんじゃねぇ!」


 パシッ!


 リョウの突然の攻撃をカーナラルは受け止める。


「暴力はダメですよ。じゃなきゃあなた、退場になりますよ?」


 するとリョウは舌打ちをし、手を離す。


「これ、あげます。」


 カーナラルはリョウに手紙を渡す。


「こ、これは?」


「こだまさんに送る為の手紙です。選んでください。こだまさんに別れを告げるか、勝負に負けて自分の街の皆に白い目で見られるか・・・どちらにしろ、楽園なんて待ってないんですよ。きゃはっ!あははははっ!」


 カーナラルはその場にしゃがみ込む。


「えーと、確かこれが一番楽な物だったよね。」


 目の前の紙を手に取り、「さて、マスターに借りに行きますか。」と言って足早に男の下に向かう。


「くそっ、あいつ、絶対に思い通りにさせないからな・・・」


 -------


「えー、じゃあ<ヴァールステーキ>をひとつ。お前らは?」


 クリスとこだまは手元のメニューを見る。


「お前ら、決めたって言ってたよな?」


「見れば見るほど美味しそうに見えてくるのです。」


 こだまがよだれを垂らしながらそんなことを言う。不潔な奴め。


「ゴブリンの体液をふたつ。」


 俺は2人のメニューを勝手に決める。


「二つって、お前、勇気があるな。」


「ん?お前らが決めるの遅いから決めてやったんだぞ。」


 すると2人の顔が青ざめる。


「お前!勝手に注文した上にゴブリンジュース!?飲んでられるか!」


 それ以上は営業妨害になるぞ。いや、もうなってるけど・・・


「とりあえず以上でいいですよ。」


 注文を完了させる。


「かしこまりました・・・」


 店員はメニューの繰り返しもせずに去っていく。


「ちゃんと貴様が払うんだろうな?」


「払うから飲めよ。」


 ただでさえ青かった顔がさらに青くなる。


「お先にゴブリンジュースお二つです。」


 早いな!


 クリスは飲むのを躊躇っていたが、こだまは飲んでしまう。


「ん?これはこれでおいしいですよ。」


 こんな事、前にもなかったか?気のせいか。


 -------


「さて、早く決めてもらおうか。」


 リョウの下に戻ってきたカーナラルが再び選択を迫る


「行きたきゃ行けよ・・・」


「こだまさんを選びましたか。」


 カーナラルはゴールの方へ向かう。


「その時点でお前の負けが確定するがな・・・」


「え?」


 カーナラルはその場に立ち止まる。


「ふん、寝言は寝てから言いなさい。」


 しかし、リョウの返事は意外なものだった


「信じたくなきゃ信じなければいい。もう一度忠告する。ゴールに向かった時点でお前の負けだ。」


「見え透いたハッタリを・・・」


 カーナラルは再びゴールに向かう。


「もう一つ言い忘れた。俺の職業は剣士、種族は神族(●●)、能力内容は人の考えている事が連携して自分にも伝わる。発動条件は敵に触れる事だが・・・いい加減自分の紙を広げたらどうだ?」


 カーナラルは自分が紙を開封していない事に気付く。


「ま、まさか!」


 カーナラルの紙には<彼氏(彼女)への別れのメッセージ>と書かれていた。リョウは2人の紙を入れ替えていた様だ。


「自信のあったお前が自分の取った紙を確認しないなんて、それだけの実力を持っているのに、あんたらしくないミスだったな。言ったろ?お前の負けだって・・・」


「お前、いつ私に触れたというのだ!お前と接触するタイミングなんて・・・」


記憶(●●)を操る能力者なのに、自分の記憶は掘り返せないのか・・・本当はお前が敗者だったんだよ。そっくりそのまま返してやる。楽園なんて待ってないんだよ」


「し、質問に答えろ!いつ接触したというのだ!」


 いつになっても自分の記憶を取り戻せないでいるカーナラル。


「どんなに考えても思い出せないなら思い出させてやる。まず、俺が跪いてる時にお前が手を差し出して立たせてくれただろ?」


 少し前の自分のやった出来事だ。それは憶えて・・・


「まさか、その時からっ!」


「いいや、もっと前だ。エルモが棄権した時にお前が只者でない事を実感した俺は、お前に能力を使用しないという約束をした。その時に握手しただろ?」


 確かに2人の間に握手は交わされていた。


「つまりお前が自らの約束を破ったと・・・」


「なにを甘い事を・・・勝負に約束も何もあるかよ。お前こそ仲間を裏切ってんじゃねぇのか?」


 カーナラルの顔に色が消えて行く。


「なぜ、その事を・・・」


 質問にリョウは「能力だ。」とだけ答える。


「く、くそおおぉぉぉぉぉ!」


 カーナラルはその場に身を沈める。


「もう一度言う。お前の負けだ。」


 リョウはカナの持つ借り物を奪い取る。


「良かったな、仲間がこの場に居なくて・・・」


「か、勝ったのは、フェノールタウン組のリョウ選手だーーーーーー!」


 その時、3人は何か良からぬモノを感じた。何か大事な(モノ)がいなくなるような。それらを全て意図していたかのように、黒幕が動き出そうとしているかもしれない事を・・・


 -------


「すみません、負けてしまいました。」


 カーナラルは男の前で膝を着く。


「いや、彼等がいなかった時点で今回は捨て試合だ。しかしあれほどまでの実力者がいたとは・・・アリス、お前の出る幕が来るぞ。明日実行する。この運動会の後だ。」


 男は笑みを浮かべる。


「マスターはいつも面白い事を考えますね。しかし、カーナラルはこの目的を達成する上で足を引っ張るのでは?今日までずっと活動をしていたのだから・・・」


 すると男は少し黙り、口を開く。


「いいや、達成するにはカーナラルは必要不可欠だ。俺の能力<洗脳>とカーナラルの能力<記憶操作>を合わせれば、あいつも脱獄を認める事だろう。」


 男はぐしゃりと嗤う。カーナラルはこれまでの自分の記憶を振り返る。一緒に笑った、一緒に戦った事。そして、一緒に過ごした日々を・・・それが偽りの日々だったなんて、自分でも怖くなる


「明日が、最後です。さようなら・・・」







はやくも15話目!

はい、以上です。今日は少し体調が悪いので、あとがきはこれ以上書きません。また来週ー。

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