引き篭もりでも運動会がしたい!
「最初の競技は80m走です。指定された選手は入場門前に集合してください。」
アナウンサーの点呼が響く。
「えーと、ウチのパーティ出る人はいる?」
「あ、私ですね!行って参ります!」
こだまが出場選手らしく、指定された場所へ移動する。でも、こだまのリーチじゃあ勝てないんじゃないか?
「大丈夫だと思いますよ。いろいろと作戦がありますし・・・」
作戦?80mに作戦なんてあるのか?ま、拝見させてもらおうかな!
「1番レース、始まりの街組<エルア選手 職業:ガンナー>ラグズル組<メル選手 職業:ランサー>フェノールタウン組<野木選手職業:剣士>」
まるっきり日本人がいるな。今回はガンナーのエルアっていう人が有利かな。
「それでは、位置について、よーーい・・・ドン!!」
瞬間、ラズグル組のランサーが「邪魔だぁ!」と言いながらガンナーのエルア選手に攻撃する。ほう、これがルール④か・・・
「がはっ!」
「へへっ!一気に1位になってやるぜ!」
しかし、剣士の野木選手はランスで攻撃している間に疾走していた。
「なっ!ちょ、待てぇ!」
かなりの大差があったので、追いつくはずもなかった。
しかし、目を覚ましたガンナーが銃を構える。
「1位は俺だぁ!」
バァン!
属性などは帯びていないものの、高速で1位に接近する。
シュピュッ!
エルア選手はその場に倒れ込む。
「次はお前だぁ!」
「くそっ!」
メル選手は走りを中断して振り向く。
「さぁこい!お前の弾なんぞ破壊してやる!」
「やってみろ!くらえっ!」
バシュッ!
メル選手は弾を見切ってランスを突き刺す。
すると弾から煙が発生する。
「げほっ!なんだこれ!?」
「今だ!」
煙に紛れ込みながらエルア選手が疾走し1位に昇りつめる。
「あまいっ!」
倒れていた野木選手が自身の剣を投げつけてエルア選手の足をひっかける。
「なぁっ!」
バタッ!
エルア選手がその場に倒れる。
「はぁはぁ、やった!速くゴールしないと・・・」
野木選手は地面に張りながらゴールに接近する。
「あと・・・少し・・・」
パンパン!
「今ゴールしましたぁ!1位はフェノールタウンの野木選手です!さて、2位は?おぉーっと!煙からメル選手が飛び出しました!これは意外な展開が期待できますよ!」
「うおぉぉぉ!」
メル選手は転んでいるエルア選手を抜く。
「くそっ!なんで俺は転んでんだよ!」
パパン!
「今メル選手がゴールしました!1位には3ポイント、2位には2ポイント、3位には1ポイントが入ります!」
やばい、なんか凄い楽しいんだが・・・
その後も白熱した戦いが続く。
パパン!
「ラズグル組のシドマ選手が1位でゴールしました!現在1位は16ポイントのラズグル組、2位は14ポイントのフェノールタウン組、3位は12ポイントの始まりの街です。続いて第8レース、始まりの街組<シウォン選手 職業:アーチャー>、ラグズル組<こだま選手 職業:魔法使い>、フェノールタウン組<マボー選手 職業:AI>の皆さんです!」
お、ついにこだまか!一体どんな手段を?ていうかAIって、チート性能付きだろ!絶対に・・・
「では、位置について・・・よーい、スタート!」
こだま以外の2人は全力で走る。少しシウォン選手が速い感じだ。
そんな中こだまは・・・
「エリシオンド、ベルヴァイス、ボルペアンド!」
こだまに青いオーラが宿る。
「スマッシュアクセル・・・」
スパァン!!!
こだまが一瞬にしていなくなる。
ズドォォ!
目線を前の方にやると選手の2人が転んでいる。
「ご、ゴールです、こだま選手がゴールしました!」
「やはり移動速度上昇魔法は最強ですね!」
あいつ、いつの間にそんな能力を!?
80m走が終了した。
「現在1位は66ポイントでフェノールタウン組、2位は62ポイントでラグズル組、3位は52ポイントで始まりの街組です!」
始まりの街はもう終わりかな。俺らは2位か、まぁこの調子なら行けるだろう。
「ただいまです。ね、言ったでしょう?1位を獲るって!」
「あぁ、そうだな。でもあれって魔法使いが有利過ぎないか?全レースで魔法使いが出てる所は全部1位が決まってるし・・・」
「まぁ、魔法使いが多い組が優勝しやすい運動会ですからね。あ、綱引きなんかは私の筋力上昇魔法が活躍しますよ!」
チート性能にも程があるだろ!
「シュンペイ、次はお前の出場競技の<借り物競争>だろ?」
「あ、もう俺か・・・」
でもこの世界の借り物競争なんて、ロクでもないモノが来そうだな。
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「あ、この次は私の競技ですねぇ、ちゃんとやらないとマスターに怒られてしまいますからね。」
少女はプログラム用紙を閉じて木の陰から入場門に向かう。
「さて、どんな能力を試しましょうか・・・」
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「次の競技は、<熱戦!恐怖の借り物競争>です。スタート地点から50m先に置かれた紙を拾い、それに記されている物を持ってきてください。ただし、その場に対象の物以外があった場合は不可とします。」
その前に恐怖ってなんだよ!
「第1レースは、始まりの街組<エマ選手 職業:農家、ラグズル組<カナタ選手 職業:無所属>、フェノールタウン組<菊乃選手 職業:AI>です!そして菊乃選手はAIの中でも5本の指に入る程の実力者!これは期待できますよ!」
「そんなに期待されても運動会じゃ活かし辛いんだよね・・・」
菊乃は少し困った顔をしてスタート地点に立つ。
「いちについてー、よーい・・・ドン!」
鉄砲の合図と共に始まった借り物競争だが、エマ選手とカナタ選手は一行に動かない・・・いや、あれは・・・
「うご・・・けない!」
「おおーっと!あれは菊乃選手の能力、<ストッピングボルト>だぁ!2人は足が麻痺して動けないぞ!」
菊乃は借り物の書かれた紙を拾い、開く。
「男性用の・・・カツラ・・・?」
菊乃は観戦者に目を移す。
「借りますね。」
いかにもカツラを被ってそうな男性の髪の毛が宙に浮かぶ。
カツラは菊乃の方に一直線に飛んで行く。
「こういう素材なら静電気で操れるしね!」
ニコッと笑ってゴールの方へ歩いて向かう。
パパン!
「これは菊乃選手の圧勝だぁ!」
「じゃ、魔法を解除しますね。」
すると動きを封じられていた2人が倒れ込む。
「ぐっ!はぁ、はぁ・・・あれがAIかよ・・・勝てる訳ねぇ・・・」
封印を解かれても疲労は尋常じゃないらしく、かなりバテている。
「で、でも2位は俺だぁ!」
カナタ選手が疲労状態の中でも走る。
紙を開くとそこには「賞味期限の切れた牛乳」という文字が・・・
「あるわけねぇだろ!んなもん!」
一体何があったんだ?でも、とんでもない事が書いてあったのだろう。さっきのAIもカツラって書かれてたみたいだし・・・
菊乃の方へ目を移すと
「本当に申し訳ありません!借りなければいけなかったんです!それでその、直感であなたはカツラだなって思っちゃったんです。」
その謝罪は謝罪になってないぞ?
そこでエマ選手もゴールしたようだ。
「ただいまの結果、1位はフェノールタウン組、2位はラグズル組でした。1位には3ポイント、2位には2ポイント、3位には1ポイント差し上げます!」
ダメか・・・フェノールタウンにAIが集まってるから1位になるのは難しいかな。
その後も試合は続き、俺の番が回ってきた。
「続いて15レース目、始まりの街組<綺菜選手 職業:アーチャー>、ラグズル組<シュンペイ選手 職業:剣士>、フェノールタウン組<黄龍選手 職業:剣士>です!」
剣士対決か・・・ていうか体でかいな!身長2mは普通にあるだろ!対して綺菜さんは可哀想だな、こんな大男を相手にするなんて・・・
「では、位置ついてよーい・・・どん!」
「おぅるるる・・・ヴァオオォォォ!!」
特徴的な雄叫びを挙げる。その姿は名前とは違い、闘牛の様だった。
1人で前線を駆け抜ける。
「おうぅぅおおっしゃぁぁぁ!!!とったどぉぉぉぉ!」
あっという間に紙を開く。
「あぁん?<携帯トイレ>?携帯じゃなくて洋式便所を持って来てやんよ!」
大男の姿はすぐに見えなくなる。ていうかトイレを壊すなよ。
残された青髪少女の綺菜選手と俺。でも女性が相手か・・・戦い辛いな・・・
でもとりあえず紙を取りに行く。ほとんど同着だったので一緒に紙を開く。すると綺菜選手は
「あ、あのシュンペイ・・・さん?とってもお恥ずかしいのですが、一緒に来てくれませんか?」
紙を見てみると、<今最も近くにいる異性>と書かれていた。
確かに俺だけど!この場合って俺と彼女の同着になっちゃうじゃん!
自分の紙を見てみると<自分と縁のない異性の下着(ゲス顔)>と書かれていた。
「地獄だろぉ!」
「あ、あぁ!すいません!でも、条件上あなたしか頼める人がいなくて・・・」
「いや、君じゃなくて・・・あ、じゃあ僕の頼みも聞いてくれる?」
「は、はい、できる事なら・・・」
いい子だなぁ、ウチのパーティに欲しい位だ。でも、こんな女の子にこんな頼みをしていいのか?でもこの子にしか頼めない!
「無理はしなくていいからね?借り物がこれなんだけど・・・」
彼女は俺の紙を見る。すると顔を一気に真っ赤にする。
はい、分かってましたよ、カナさんならあっさり受け入れてただろうけど、縁のないっていうのが条件だから仕方ない。
「わ、分かりました・・・ぶ、ブラでもいいんですよね?」
「え!?やってくれるの!?」
予想外の反応だった。え、いや、待てよ?このルール上、対象の物以外を持ってきたらダメだったよな・・・ふぁっ!?じゃあこの子を連れてっても意味がない!?この場で脱いでもらう必要があるって事!?今この場で俺に異性の下着を振り回す変態になれと!?
「本当に無理しなくていいんだよ?しかもこのゲームのルール上この場で脱いでもらわないといけないんだし・・・」
「・・・いててください。」
「えっ?今なんて?」
「後ろを向いててくださいって言ってるんです!」
つ、つまりはこの場で脱ぐんですね?でもそれは俺だけじゃなくてあなたも白い目で見られる様になる行為ですよ?
「あ、あの、あなたの体に隠れて着替えてもいいですか?」
「えっ!?あ、うん。」
すると彼女は俺に体を密着させる。
この感覚、前にも味わったな。でもあの時とは全く別の感情が湧いてくるんだが・・・
「あ、ありがとうございます・・・これ、どうぞ・・・」
「ふぁえ?」
彼女の持つモノを見てみるとそこには綺麗な赤色のブラが!
「ずっと持たせないでください!は、恥ずかしいんですよぉ・・・」
「え、あ、うん、ごめん!」
彼女からブラを受け取る。
「早く隠してください!私に恥をかかせないでください!」
「あ、うん、ほんっとにごめん!」
ブラをできる限り周りから見えない場所に入れる。
ピピィィ!!
突然笛が鳴り響く。ゴール付近だ。
「借り物は携帯トイレですよ?いや、その前にその洋式トイレはどこから?」
「おう!あそこのコンビニの<モーソン>からだ!」
「早く返してきてください!いや、治してきてください!」
あいつ、ガチで持ってきたのか・・・
「おん?これじゃやっぱりダメなんか?」
男はトイレを担いでその場を後にする。
「は、速く行きましょう!私、すごく恥ずかしいです!」
顔を真っ赤に染めた綺菜選手が言ってくる。
「あ、ごめん!」
綺菜選手とゴールへ向かう。
「綺菜さんには迷惑をかけたからそちらが1位でいいよ。」
「え?あ、ありがとうございます!」
パパン!
「今、始まりの街組の綺菜選手がゴールし、それに続いてラグズル組のシュンペイ選手がゴールしました!よって今回のレースの1位は始まりの街でした!」
すると大男が帰ってくる。
「お?俺はビリなのか?」
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「あ、あの!ありがとうございました!」
「いや、感謝するのは俺の方だよ。あんなに恥ずかしい事をさせちゃってごめんね。」
「いえいえ、お互い様ですよ。あ、それと、明日はお暇でしょうか?できればご一緒にご飯でも・・・」
やばい、メッチャいい子だ。あんな恥をかかせた俺を快く受け止めてくれる。ウチのパーティに欲しい位だ。運動会が終わったらみんなに相談しよう。
「明日はどうか分かりませんけど、こちらで予定を合わせておくので・・・」
すると綺菜さんは少し嬉しそうな顔をする。
「じゃあ明日、お昼前にフェノール塔の前に集合でよろしいですか?」
「うん、できる限り行けるようにはするよ。無理だったら当日現地で伝えるから。」
ていうか絶対に行かなきゃだろ。
「じゃあ、また明日です。」
お互いに手を振ってその場から離れる。
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「次の競技、2人は出るのか?」
するとこだまとクリスは首を振る。
「じゃあその間に飯でも済ませようか。それよりカナさんはまだいないのか?」
2人は頷く。
「んで、なんでお前らは喋ろうとしないんだ?」
「自分の心に聞いたらどうだ?」
いや、なんでこうなったのかよく分からないんだが・・・
「ならば体に教え込んであげましょう。覚悟はできてますか?」
「カナだけに留まらず初対面の女の子にしかも外であんな事をするなんてな・・・」
「いや!あれは借り物競争でのお題だったから・・・」
「言い訳無用!やった事に変わりはないだろ!」
クリスは俺に向かって弓を構える。
「ほんとにすいませんでしたぁ!」
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木の陰から入場門へと姿を移した少女。
その少女は3人の男女を見て何かを言う。
「あらあら、行っちゃいましたね、まぁ、次の競技が終わったら彼等のところに行く予定ですしね。そろそろアリスも出番が来るカナ?」
14話ですか・・・
今回はですね、アニメや小説、漫画等にありがちな事を挙げてみたいなと思います。
「あるなぁ」と思っていただけると嬉しいです。
①名前に「坂」が付く登場人物がいる。
坂本や坂田なんて、日本が舞台のアニメなどにいる気がしませんか?あ、私だけ?そうですか・・・
②途中まで面白くても急展開で微妙になる。
あ、これは私が言えた事じゃないですね。
③背景に目を写すと高確率で有名なコンビニがある。
再放送中の「f○te ze○o」では、この前サ○ンクスを発見致しました。
あと、ス○ーバッ○スなんて結構ありますよね。
④話し方が特徴的なキャラがいる。
まぁ、モノによっては必要不可欠なのだろうとは・・・ 私の小説にはいない!?あぁ、作るか。
⑤正直この企画楽しい?
楽しいと思ってやってみたのですが、私自身が飽きてきました。なので、予告します。
予告
次回は運動会篇3話。おそらく今までで1番の展開のヒントになります。安定の水曜日の深夜0時なので、よろしくお願いします。