この世界にも聖夜は存在するようです。
聖夜──。それは、男性と女性達のカップル、いわゆるリア充達がキャッキャッ言いながら町をうろつく日。無論、彼女のいない俺にとってはバレンタインに次ぐレベルで嫌いな行事だ。さて、ぐうたらしよう。
「シュンペイ!こだま!クリスマスだぁ!」
クリスは俺の中のルールを早速破る様にでかい声を出す。いや、待てよ?クリスマス?そう言われると・・・
突然こだまとシュンペイが立つ。
「「今日、ゴッドバトラーズの聖夜イベントだあぁぁ!」」
そう、今日は人気オンラインゲーム、<ゴッドバトラーズ>の聖夜イベントなのだ。1年の内の12月24日と25日だけに開催されるビッグイベントなのだ。が、
「あ、うあぁぁ!パソコンがねぇ。」
ここは一応刑務所だ。自分の愛用しているPCがあるわけもなく、絶句してしまった。
「確かにシュンペイの言うとおりです。ここには私のPCもありません。だから私もクリスマスイベントをできないのです。同じじゃないですか。」
それよりこいつもゴッドバトラーズやってんだな。いや、そんな事はどうでもいいんだ。
俺は聖夜イベントの他に、重大なミスに気付いてしまった。
「やっば!俺の順位が下がっちまう!」
オンラインゲームであるが故にランキングというモノが存在する。大石シュンペイ、もといエターナルエンドは総プレイヤー300万人中24位。かなり上位の成績を納めていた。
「私の順位も下がってないといいのですが」
「こだまって何位位だったんだ?」
するとこだまは少し黙って
「恥ずかしいので言えません。ゲーマーだと思われたら嫌なので。いや、ゲーマーなのですが。」
よくわからないが隠したい気持ちは分かった。
「お前ら、私がクリスマスで心をウキウキさせている中お前達はまたゲームか!」
クリスが間を割って口を出す。
ほんと、なんでこいつはそういうイベントに心をウキウキさせるんだ?
「シュンペイ!お前はハロウィンの時の様に一緒に出かけるぞ!はやく準備をしろ!」
「えっ、めんどくさっ!」
あんなリア充だらけの空間に俺を連れ出さないでくれ。
「童貞だから外に出ても恥をかくだけという悩みなら大丈夫だぞ。」
実はこいつの職業も魔法使いなんじゃ?
「私といればカップルに見えるじゃないか」
すると突然現れたカナが
「それはダメですよ。シュンペイさんは、私の所有物なんですから。」
物は言いようって言葉に相応しいな。できれば所有物じゃなくてモノって言って欲しかった。
「じゃあ間をとって私と行きましょう。」
お前に関してはなんも接点がねぇよ!あ、でもこだまと行くのはなんか面白そうだな。おそらく1番話が合うだろうし。あ、いや、ダメだ。俺がロリコンに見える。
「ぶっ飛ばしますよ?」
「え、今口に出てた?」
「女の勘です。」
うちのパーティは魔法使いが多いようです。
「でも、絶対に家から出ねぇぞ!」
意地でも自宅警備をしたい俺はてきとうに言い訳を考える。
「もうこの際みんなで出かけたらどうですか?」
とりあえず俺の話を聞いてくれ。
「おいカナ!お前は私の意図に気付いているんだろ?」
「えぇ、もちろん。ですが、それをやられてしまうと私の計算がズレてしまいます。ですからやらせる訳にはいきません。」
意図?なんの話をしてるんだろうか。
「とにかく、外に出る事に意味がある!もうここ1週間位まともに外に出てないじゃないか!」
「仕方ないだろ?寒いんだから。」
すると肩をチラ見せさせたカナが接近してきて
「私も寒いです。だから、シュンペイさんの温かいモノを私の中に、クリスマスプレゼントとして入れてください。」
この人、とんでもない下ネタを言ったぞ。
「今日のおかz・・・シュンペイさんへのクリスマスプレゼントは私ですよ。」
ヤバい、この人はもう救い様のない変態だ。ていうかこれに慣れてしまった俺も相当だ。
「カナ、誘惑はその辺にしようか。でないと、打つぞ?」
弓を構えたクリスがカナに警告する。
「あらあら?私と戦うんですか?クリスさんじゃ私には勝てませんよ?」
クリスはその位理解しているはずだ。カナの実力は冗談抜きでこのパーティの中で飛び抜けている。それは以前のこだまとの戦いで知っている事だ。
「くっ、もういい!私は世界中の子供にクリスマスプレゼントを届けてくる。なんせ今日はクリスマスだしな。」
クリス、それは寒いぞ。
「さて、行って来るとしよう。」
クリスはふてくされた様にその場から離れる。
「「待て!クリス!この世界に子供はいないぞ!」」
こだまと声を揃えてクリスにツっこむ。
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「おいクリス、お前、もうちょい頭を使って言葉を発しようぜ。この世界に子供がいない事くらい考えれば分かるだろ。」
「う、うるさい!これには・・・ちゃんと理由があるのだ。」
顔を真っ赤に染めたクリスは顔を手で覆いながら喋る。
「んで、その理由ってなんだ?」
「うっ!そ、そ、それは・・・だな、あ、あれだ!お前達を外に出そうとしたのだ。」
動揺が凄まじいな。
「もう、皆さん速くないですか?」
「あ、カナさん、走るの遅くブフウッ!」
カナの過激すぎる衣装に吹き出してしまう。
その衣装はノースリーブで脚とおへそを露出したスカート型のサンタ衣装だった。
「明らかにこの季節に着る様なものじゃないですよね。」
「まぁ、そうですね。とっても寒いです。」
ていうかこれって、カナさんの来る速度が遅かったんじゃなくて、着替えてたから遅かったんじゃないか?
「この衣装なら私の事、好きになってくれますか?」
カナは俺の腕を掴んで自分の胸に引っ付ける。
「か、カナさん?当たってるよ?」
「当ててるんです。」
平然とそういう事を口にする、そこに痺れる、憧れるぅ!
「お前ら!外でもイチャイチャしやがって」
やっべ、クリスのやつ、完全にキレてやがる。
「違う!これはカナさんが・・・」
「私が、どうかしたんですか?」
もういじめですよね、これ。
「ツムラー。」
松村をかまくらに入れて遊んでいるこだま。その姿は本当に子供の様だった。ていうか絶対に未成年だろ。
「クリスさん、クリスさんはオシャレとかしてみたらどうですか?せっかく都会的な所に来たんですし。」
「オシャレか・・・興味ないな。」
突然のカナの誘いをきっぱり断るクリス。
「クリスさんは美人だから、オシャレをしたらさらに可愛くなると思うんだけどなー。」
「だいたい、貴様のいうオシャレは怖すぎてやってられん。」
あぁ、確かにカナさんのオシャレは怖いかも。ていうか、オシャレという概念が周りと違いそう。現在進行形でこんな格好をしているんだし。
「さぁさ、オシャレをしましょう!私の手にかかればクリスさんを絶世のモテ女にできますよ。そうすればあの人を落とすのも夢じゃありませんし・・・」
「なっ!お、お前!いっつもいっつもそんな事を言いやがって!」
カナは安定のネタでクリスをからかう。
「いいじゃないですかぁ、今日は聖夜なんですよ?周囲はカップルだらけです!ここはシュンペイさんのハーレム空間になってますが・・・」
「ぶふっ!確かにハーレム空間だけど、そのうちの1人はお子ちゃまだぞ?」
「殺しますよ。」
「すいませんでした!」
こだまの気にしている事、外見が幼女という所を考慮した上で言葉を発するのって結構むずいんだぞ。幼女にしか見えないから。
「しかし、今回はハロウィンの時のような展開はありませんねぇ。」
ハロウィン?いや、あれこそ何もなかっただろ。
「クリスさん、あの時私が邪魔してなかったら、ほんとうにしてたんですか? ・・・」
クリスは顔を真っ赤に染める。
「あの事を掘り返すな!」
クリスがカナに向かって弓を構える。ていうか持参するなよ。
「まあまあ、少しおちょくっただけですよ、しつこい女はモテませんよ。この世界、案外外見だけじゃないんですから。」
「ぐっ・・・」
え?クリスって恋してんの?
「皆さん!あそこでクリスマスのくじ引きが開催されてますよ!」
こだまの指さす方向には確かにくじ引きコーナーがあった。
1等:願いが叶う水晶
2等:吸引力しか変わらない2つ目の掃除機
3等:賞味期限ギリギリのまうい棒
1回500R!
なんだ?これ。明らかに子供騙しだろ。ていうか3等・・・
「行きましょう。戦わなきゃ勝てない。」
こだまが前へ出る。
おい、子供だとは思ってたけど、まさかここまでとは・・・ていうかその発言はいろいろまずいだろ。
こだまはくじ引きの目の前に立ってトナカイコスの男の人に尋ねる。
「一等の水晶はどのように扱うのですか?」
こいつ、まさか一等を狙っているのか?いや、明らかに詐欺アイテムだろ。
「はい、具体的な使用方法はですね、依頼の支給品と同様で、思い浮かべるだけです。ただ、このアイテムは1回しか使えない上、何度でもなど、回数を増やす願いは叶えられないのです。ですが、安心してください、私は使ってませんよ。新品です。」
「なるほど・・・、やる価値はありますね。あと何枚残ってますか?」
こいつ、何回やるつもりだよ。
「あと240枚程度でしょうか。」
多っ!当たるわけないじゃん!
「240分の1ですか。私ならできます。12万Rでどうでしょうか?」
12万!?1回500円だぞ?何回出来んだ?
「ちょっと待ってくださいね、回数を数えます。」
店の方も計算機で計算し始める。
「お、お客様、流石に240回はちょっと・・・」
的中率100%!?ていうか計算早くね!?
「駄目ですか?じゃあどうしたら240回引かせてくれますか?」
「どうと言われましても、ちょっと・・・」
男の人は少し困った顔を浮かべる。
「カナ、少し色目を・・・」
「えっ?私ですか?まぁ、少し顔もイケてますし、いいでしょう。」
この人、顔が良ければほんとに誰でもいいんだな。
カナはただでさえ短い服をめくって太ももをさらに露出し、胸元も局部ギリギリまで露出して歩み寄る。
「240回引かせて欲しいの、私はもう貴方に惹かれています。それでも、ダメですか?」
男の人は顔を真っ赤に染める。ていうかあれ、俺にもやってくれませんかね?俺も受けた事のないサービスですよ?
「いや、その、だ、ダメです。」
「どうしてですか?も、もしかして私の事、嫌いですか?」
「嫌いって訳じゃ・・・ないですけど・・・」
「じゃあ・・・」
カナは強引に男の人を説得する。だけと思いきや胸の谷間に手をいれて、服と体に空間を作る。
「わ、分かりました!いいですよ!240回引かさせてあげます!だから、それ以上は・・・あ、あの、できれば私と付き合っていただけますか?」
告白!?この女の人と付き合ったらとんでもない目に会いますよ!?
「ダメです。私、あなた以外にも好きな人がいるんです。貴方もとてもかっこいいですけど、やっぱり・・・」
カナは男の人の手を持って自分の胸元に運んでは触らせる。
「これで、我慢してくださいね。」
男の人は頑張って堪えているのだろうが、今のあなたの体、とっても震えてますよ。
「さて、引かせていただきますね。」
こだまは空気を読まずに12万Rを差し出してくじの紙をごっそり出す。
「これで全部ですね?えーと、1、2………258枚ですね。じゃあ9000R追加しますね。」
それらを開封していく。
90枚目ほどで1等を引いたようだ。
願い玉を受け取り、こだまはポーチにしまう。
「残りはいらないので商売に使ってください。お金はそのままでいいですよ。以前の祭りの時は1等がないっていう詐欺がありましたが、こういうのは信用できますね。」
前もやったのかよ!あ、あのゲームはそれか。
「さて、お買い物と行きますか!」
「こだま、時計を見てみろ。」
こだまは周囲を見渡し、時計を発見する。時間を見ると、すでに1時を迎えようとしていた。
「つまりは・・・」
「あぁ、もう26日だ。」
「「えっ・・・」」
クリスとこだまが声を合わせる。
ほんと、こういうイベント企画って、俺ら何もやらないな・・・
「あぁ!」
突然児玉が声を荒げる。
「どした?」
「ツムラが・・・ツムラがいない!」
周囲を見渡すと確かにいなかった。ていうか、もう眠いから帰ろ。
「ツムラは勝手に探してくれ。寒いし眠いから帰るな。」
なんだろう、クリスマスって・・・
11話に引き続き、連日で投稿致しました。あとは12話と新年バージョン、冬休みって大変やなぁ。
明日がクリスマス本番ですね。明日はデートかぁ・・・彼女いねぇや。
クリぼっちかぁ、クリスマスに男友達と遊ぶのもあれだしなぁ・・・
レンタル彼女とかいないかなぁ、この物語のカナさん的な人はいないかなぁ?
実はカナさんは私の中での理想の女性の体現した人物なのです。
はい、変態です。すいません。携帯はしまってください。通報しないでください。
そうそう、いつもいつも投稿にギリギリで焦ってますが、ある程度溜め書きする事が出来たらキャラのイメージでも描きたいなと思っております。
絵師さん欲しいなぁ。あ、絵の上手い人で可愛い人がいるなぁ、付き合いたいなぁ。
あ、でもあの人は二次元に走ってるんだった。仲はいいけど彼女にはできないね。
さて、小説でも書くか!
という事で、12話は31日の朝0時で、新年版は1日の朝0時です。
ご愛読、よろしくおねばっ!お願いします!
噛んだ事は気にしないでください。