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妖怪の弁護士さん  作者: 大武 龍一
プロローグ 遠野、妖怪と弁護士
2/2

水木ゼミ 遠野へ来た理由


「法律事務所での実習・・・ですか?」


水木ゼミの資料室にそんな疑問の声が響いた。

鳴子にはその実習の話というのがまさに寝耳に水だったのだ。大学生活3年間で

水木ゼミ、ひいてはこの大学でそのような実習があったとは聞いたことがなかった。


「ええそうよ。あれ?話してなかったかしら?」


「聞いてないですよ!水木先生!!」


「あらそう?ごめんなさいね。」


「・・・・・。」


水木沙耶は飄々とした調子で鳴子に答える。窓際からの太陽光に鳴子の茶色の短髪とは対照的な黒く艶やかな長髪は痛みがなく黒曜石のような輝きを放つ。


鳴子は若干の嫉妬とその態度に苛立ちを覚えたがなんとか胸に仕舞い込んだ。


「で、私はどこに実習に行くんですか・・・?」


「んーとね・・・。遠野。」


「は?」


「だから遠野市よ。岩手県の。」


鳴子にとってその場所は予想外の一言であった。なぜなら


「なんでわざわざそんなとこまで行かなきゃ行けないんですか!!?ここ東京なんだから

法律事務所なんてたくさんあるじゃないですか!!」


鳴子の進学している法科大学は東京都内にあるため鳴子自身、都内から離れることを考えていなかったのだ。


「あら?可笑しかったかしら?」


水木は口元を上げどこかからかうような口調で尋ねた。


「可笑しいも何も私は地方の弁護士事務所なんかじゃなくってですね、もっと大きな弁護士事務所で・・・」


「鳴子ちゃん、地方の弁護士が少ない理由・・・。分かるわよね?」


「うっ・・まぁ・・はい・・。理由は数点ありますが大きい理由としては都会志向や弁護士業務の専門化が難しい点ですかね都会志向は・・言い方が悪いですけどエリート志向が強い人も多いですから。あと、後者は地方の弁護内容は受け持つ依頼内容が雑多になって特定の業務専門ってわけには行きませんから。」


近年、司法試験合格者は増加しているのに対し新人弁護士は大規模事務所に集中し,金にならない法律扶助事件を受ける弁護士は少なく,町医者的弁護士や過疎地の弁護士はむしろ減っているという「格差」が出てきているのは少なからずある。このうち,弁護士が大規模事務所に集中する理由は恐らく誰もが思うような理由だろう。お金にならない法律扶助事件を受ける弁護士が少なくなり,町医者的弁護士が減っている。


その理由が鳴子の挙げた理由である。前者がただでさえそれほど割の良い仕事ではないのに対し最近は弁護士の数が増えて競争が激しくなり,事業として成り立たなくなること。後者は様々な専門分野の事件が多くなり町医者的に何でもやろうとすると勉強すべき範囲が広くなりすぎて普通の人間では対応できなくなり,専門分野に特化している弁護士とはとても競争できないので,事業として成り立たなくなるといったことだ。


「その通り。ちゃんと勉強してるようね。」


どこか満足げな表情で頷く水木に反し、鳴子は理由は分かるが納得がいかないといった顔で水木を一瞥する。


「何で私が・・・。」


「そうね~。いろいろ理由があるけど・・・・。」


「あるけど?」


こんな教師だが長年法律を扱ってきた先輩でもあるのだ。きっと自分の考えにも及ばないしっかりとした理由があるのだろう。そう期待を込めて鳴子は聞き返す。


その期待に応えるかのようにいつもの数倍機嫌が良いように見える水木は鳴子の顔をしっかりと見据えやがて口を開いた。


「面白そうじゃないの!!だって都会の大手弁護士事務所に行くんだー!!って言ってる学生を田舎に送るんですもの!!おーほっほっほっほ!!!」


ただただ、無常で理不尽な理由が宣告された。


そうだ、この人はこういう人だったな。


期待を見事裏切られた鳴子は水木の高笑いをBGMにし憂鬱な足取りで資料室から立ち去った。

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