迎撃拠点、建造
今僕は、海の上にいた。まあ正確には海の上に建つ僕らの拠点にいるのだが。
「宗二、拠点中枢の整備完了。本格的に活動開始可能です」
「OK、じゃあとりあえず休憩だな」
とまあ、迎撃拠点をつくった。
異世界侵攻軍迎撃対を結成した僕らだが、まだ攻撃手段をもらってなかった。
「しおり、まだ僕らは『魔兵装』をもらっていないのだが」
「ちょっとまって、今準備する」
そういったのは橘しおり。異世界から来たらしい。それで『魔兵装』と言うのは異世界から侵略してくるものたちに対抗することのできる兵器らしい。この世界にある兵器と同じような見た目をしているが、魔力を使って作りだす魔弾を発射するため、威力はけた違いらしい。実際に発射しているところを見たことはないので、、どれほどの威力かは分からないが。
「宗二、平次、出来た。これが『魔兵装』のデバイス」
と、差し出したのは四角形のスマートフォンのようなものだった。
「あれ? 何か魔法とかそういうものだと聞いてたから、もっと目に見えないようなものだと思ってたんだけど」
そう平次が問いかけた。
「私たちの世界では魔法は科学。だからしっかりとした理論がある。このデバイスはそれをだれでもつかえるようにしたもの。私ももっている」
と言いながら彼女のデバイスらしきものを見せてくれる。
「だからあなたたちも特に何か勉強をしなくても『魔兵装』を使うことができる。でも魔力に関してはデバイスではどうにもならないから」
このデバイスは便利だな。まあ魔力はどうにもならないからちょっと残念に思う。と言うか魔弾を扱うのに魔力一番大事じゃん、魔力自分でどうにかしろってできるのかよ。
「魔力はどうするんだ?」
「魔力は基本的には体力。後は『魔兵装』の中の燃料で生成する。後は…気合い」
何か最後にとても不安定な要素が聞こえた気がするが、まあ気にするほどでもなかろう。
「じゃあ今からでも俺たちは『魔兵装』を使えるのか?」
「平次、あなたははじめて聞くようなことをすぐに実行できる?」
「それは…」
おお平次、やっぱりお前は馬鹿だった。
「無理でしょ。だからまずは『魔兵装』を展開することから始めるの。最初のうちは燃費がすごく悪いからすぐに疲れちゃうよ」
「確かにそうだな・・・」
魔力は体力とイコールで結べるのか。だったら僕はかなり不利なのではないか? もともと僕は体力がある方ではない。こんな僕でも『魔兵装』は使えるのか?
「なあ、しおり。僕はあまり体力がないのだが。それで使えるのか、『魔兵装』」
「大丈夫。今渡した『魔兵装』は私の世界での最新版だから。使用者のタイプに合わせてモードを切り替えてくれる。それに体力と言っても普通に使っていればそんなに削らない。ただ初期設定にはかなり体力を使うけど」
つまり初期設定さえ済ましてしまえばもう大丈夫というわけなのか? ずいぶんと便利そうなものじゃないか。
「そろそろ『魔兵装』を起動してみたいんだけど、どうやってやるんだ?」
おいおい、平次。もう少ししっかり説明をきいてからでも良いじゃないか。こんな未知のものによく軽々と踏み込めるな。
「ちょうどいい私も説明に飽きてきたころだった。そろそろ実践に移ろう」
「おい、えらくいい加減だな! 大丈夫なのか?」
「大丈夫。基本的なことはデバイスがやってくれる。安心して、爆発とかはしないから」
「そうか。ならどうやったら起動できるんだ?」
さっきなんかシステムチェックみたいなことをしていたがやはりする必要があるのか。でもやり方分からないぞ。
「ああ、起動は適当にやって大丈夫」
「はあ? お前さっきなんかチェックしてたじゃないか。やらなくていいのか?」
「あなたはまだ中身のない箱をチェックする?」
急に何を言い出す。意味がわからん。こいつはたまに変なことをいうよな。
「まあ空箱は中身を確認する必要はないよな」
「それと同じ。初期設定の済んでない『魔兵装』は空箱と一緒だから。チェックするしない以前にチェックできないから」
「そうなのか。でもどうやって展開するんだ」
「デバイスの電源入れて、ソフトを起動するだけ」
えらく簡単だな。しおりがさっき展開するときはデバイスすら出してなかったけど、それに関しては聞かないでおこう。面倒くさい。
まあ変に考えずに起動してみよう。デバイスの電源を入れて、ソフトを起動。・・・まて、ソフトがたくさんありすぎてどれを起動していいかわからない。
「なあ、しおり。どれを起動すればいいんだ?」
「えっと、対艦船モードってやつ」
対艦船モード対艦船モードと。って軽く見積もってソフトの数が五十位あるからどれが対艦船モードか分からないんだが。平次も苦戦してるだろう。どんな顔をしているだろう
「あ、検索機能あった」
何だと? あの馬鹿の平次が僕より先にそんな便利な機能を見つけるなんて。検索機能があったなら先に言ってほしかったが、使わせてもらおう。
検索したらすぐに見つかった。さっそく起動してみよう。
「ん? なんだこれは。体がぽかぽかしてきたぞ」
「宗二もぽかぽかしてきたのか。しおりちゃんよ、これは仕様なのか?」
「うん。自分の体力も消費してるけど、『魔兵装』の中の燃料も消費して稼働してるから普段よりはあったかくなるかもしれない」
そんなことを話していると、砲台が体と合体しているような状態になった。砲台だから重たいものかと思っていたが、きっとデバイスが補助してくれるのだろう。自分の体重のように動くことができる。
「案外軽いんだな。やっぱりデバイスの補助なのか?」
「正解。デバイスが使用者の筋力増強を行ってくれるの。だから兵装が重くて動けないなんてことは起こらないの。安心して使って」
「こりゃ便利だな。『魔兵装』を展開してる時しか使えないのか、筋力増強は」
「デバイスに筋力増強効果をつけるためのソフトがインストールされているはず。でも使うには『魔兵装』の燃料を使うから。安定供給ができるようになるまで使用は控えて」
「そうか、まあ仕方ないな。燃料が今は貴重みたいだし」
でも筋力増強を単体で使うことのできる事実は変わらないのだが。
「そういえば『魔兵装』を維持するのには魔力を消費するのか? これが一番気になる」
「・・・おなか減ってない?」
ん? 腹が減っているかだと? そんなもの・・・確かにすいてきた。
「ああ、少し減ってきた。つまり維持するのにも魔力は消費するのだな」
「うん。でもこれは初回だから。次展開するときは今みたいなことにはならない」
そうか。まあそうでないと少し困るのだが。
「もう『魔兵装』解いていいよ。お腹すくだろうし」
しおりがそういうので、僕たちは兵装を解いた。デバイスの電源を切るだけで『魔兵装』は解けるらしい。解くのは簡単なんだな。
「ところでしおり、いつ頃に侵攻してくるんだ?」
いつ攻めてくるかによっては今後の行動が変化してくる。
「たぶんまだしばらく先。この世界に侵攻してくることが分かってからすぐにこちらに飛ばされたから、まだ向こうもまとまってなかったみたいだし」
そうか、ならまだ訓練くらいする余裕はあるな。
「しおり、これからどうするんだ。お前生活できる場所はあるのか?」
「私は迎撃の拠点を建設したい。そのための場所がほしい。出来れば海上に」
海の上と言われてもな。海は国の所有物だし。
「無理だな。拠点なんてつくったら国から攻撃うけるぞきっと」
「じゃあ視認できないようにすればいい? それとも海底につくるか」
どちらも常識外れだが、
「まあ海底につくってくれ」
「りょーかい」
しかしまあ、拠点までつくってくれるなんてな。必要なのか? でも拠点があった方が殲滅しやすいと思うが、資材とかそういうものはあるのだろうか。まあどうでも良いからいいのだが。
「じゃあ、僕たちは帰るから。次はどこに行けばお前に会えるんだ?」
「大丈夫、私が何とかするから安心して」
ちょっと言っている意味が分からなかったがなんとかしてくれると言ってるから帰るとするか。
翌日、特に何事もなく登校した。念のため『魔兵装』のデバイスは持ってきておいた。
「おはよ、宗二。元気かー」
鬱陶しい、実にべとべとしてきて鬱陶しい。平次がな。
「ああ、おはよう。相変わらず元気だな。お前デバイス持ってるか?」
「何のことだ?」
やっぱり馬鹿だった。昨日のことも覚えていないのか。記憶力悪いな。
「しおりからもらった『魔兵装』のことだよ。お前ほんとは鳥なんじゃないか?」
「ああ、あれね。持ってるよ。小さくて持ち運び便利だし」
「そうか」
まあ、持ってきたところで今日もしおりに会えるかどうかわからないから持ってきても意味ないかもしれないが。
そんなことをしているうちに朝のホームルームの時間だ。
「みんな席につけー。今日は転校生を紹介する。入ってきたまえ」
まだ高一の六月に転校生なんて、めずらしいな。きっと親の仕事が忙しいんだろう。つらいだろうな、転々と移動して。
と、入ってきたのは、黒髪の少女だった。
「自己紹介をしてくれ」
「橘しおりです。よろしく」
待て待て待て。何でしおりがこの学校に転入してきてるんだ。あれか、「大丈夫、私がなんとかする」っていうのは自分も学校に来るということなのか? えらく無理やりだな。
でもしおりがこの学校にいればいつでも会えるし便利だからいいか。・・・うん、はっきりいうと編入してくる必要あったか? 別に待ち合わせ場所を決めてそこで落ち合えば良かったと思うのだが。
「では橘、一番後ろの席についてくれ。皆は橘の補佐をするように。橘も分からないことがあったら誰に聞いても構わないぞ」
相変わらずこの教諭はむちゃくちゃなことを言ってくれるな。いくらなんでも僕らでは出来ないこともあるだろうに。まあいいんだけどね。
まあしおりが常識人じゃないことは分かってたから。ほんとに分かってたから。
しおりの行動一つ一つが僕らにとって普通じゃない行動をとるものだから、僕の目の届かないところまで行かれると困る。これは後できっちりしつけとかないといけないな。第一、なぜこの世界の常識も分からないときに高校に編入してくるのか。あれか、しおりはアホの子なのか? どちらにしろ後できっちり始動ということには変わりがないのだが。
「宗二、お腹がすいた。補給がしたい」
常識がない癖には普通に飯の要求はするんだな。と言うかもっていてないぞ、しおりの分。
「お前が前もってこの学校に編入してくることを伝えてくれれば用意してきたかもしれないが、今日はじめて知ったからな。お前の分の飯など用意してない」
「ひどい。私はお腹がすいたのに。補給をしないと午後からの活動に支障をきたす」
「おーいしおりちゃーん。俺の分食べるー?」
平次が来た。自分の弁当を持って。
「おいおい平次。しおりに飯を与えるのはいいけど、自分の分はどうするんだよ」
「大丈夫、購買つかえばいい。何の問題もない」
「さすが平次。私の要求を受け入れてくれると信じていた」
やっぱりこいつら馬鹿なんじゃない?
午後の授業もまあ大変なことは大変だったけど、午前とそんなに変わらなかったからだいぶ慣れてきた。けどこれがもうしばらく続くと思うと頭が痛くなる。
もう下校の時間だ。部活動をやってるやつもいるが、僕は何の部にも所属していないのでそのまま帰宅だ。
「そういえばしおり、昨日の拠点ってのはどうなったんだ? せめてどこら辺にあるのか知っておきたい」
「あれは外枠だけだけど完成した」
「はやっ」
異世界の建築技術はどんなになってんだよ。たった一晩で拠点を作り上げるなんて。いや待て、
「もしかしてとんでもなく手抜きのプレハブ小屋みたいのじゃないだろうな」
「そんなことはない。割と大規模なもの。たぶん日本の自衛隊の砲撃を受けてもびくともしない程度には」
「やっぱりとんでもない技術だな、異世界の建築技術は」
まあどうせ戦をやっていくうちに発達していったんだろうけど。
「少し視察に行きたいのだが、見れるか?」
「お、宗二。お前どこ行くんだ? 俺もつれてけよ」
今から拠点を見に行くんだから平次も来た方がいいだろう。
「しおりがつくった拠点に行くんだよ。どんなものか視察にね」
「なんか拠点ってカッコ良さそうだよな」
何か言ってるけどほっとけ。
「確かに海底につくってくれ、とは言った」
「うん。宗二の言った通り、海底から建てた」
確かに海底から建ってはいた。だが
「海から出てたら意味がないんだよ!」
立派な要塞が海の中で堂々とそびえ建っていた。
「確か僕は海中につくってくれと言ったはずなのだが」
しーん、と言う音が本当になった気がする。
「・・・忘れてた」
そう言って、てへっとか言ってた。無表情で。無表情で言ってもかわいくないぞー。
「まあいいけど。ステルス機能ぐらいあるだろ。あんたらの世界じゃ」
「ない。そんなこと出来たらすごく便利」
「えらく偏った技術だな、お前らの世界」
つまり僕らに拠点は周りから丸見えってことだな、うん。・・・まずい、非常にまずい。通報されたらたまったもんじゃない。警察沙汰とかにはしたくないし、海上自衛隊とか海保とか来たらどうしようか。
「大丈夫、迎撃装置だけはいっぱいつけといたから。攻撃されても何も問題ない」
「お前は僕の考えてることを読むな。と言うか自衛隊を攻撃することはあんまりしないでほしい。最悪殺される」
「この要塞には大砲が32門、機銃128挺、全て『魔兵器』加工してあるから威力も半端じゃない」
「もう何にも言わない」
もう敵兵を迎撃できればいいや。
「ところでどうやってはいるんだ? 見た感じ陸上からの通路が見当たらないのだが」
「舟で行く」
今おかしな単語が聞こえたのだが。
「すまない、もう一回言ってくれないか」
「このゴムボートではいる」
「何でそこだけゴムボートなんだよ! もっとほかの方法はなかったのかよ!」
「ごめん、今の嘘」
お腹が痛くなるような嘘はやめてほしいな。出来ればな。
「『魔兵装』のデバイスがあれば簡単に中にはいれる。そんなソフトがインストールされてた気がする。ちょっと見てみて」
えっと、この中から名前も分からないアプリを探せと。・・・無理だろ!
「そのアプリ、名前なんだ? 名前が分からないから探しようがないのだが」
「確か「Water walking」だった気がする」
「えらくそのまんまだな」
検索機能を使ってと、あったあった「Water walking」と。起動してみる。すると何か体を包むように…ならなかった。えっ、なんか目に見えて感じるものないの?
「何にも起こらないんだけど」
「ちょっとゆっくり海上に足をつけてみて」
「お、おう」
ゆっくり、ゆっくり足をつけてみる。海面に足がつこうとすると、何かに阻まれた。見えない床があるみたいに感じられる。かなり堅そうなので安心できる。どの程度で壊れるのかは知らんが。
「だいぶ強度がありそうだな。これなら外部からの侵入もそう簡単には出来ないんじゃないか?」
「舟を使ってもはいれるんだけどね」
「迎撃装置は」
「一様ある。だけど装填が大変」
しおりって変なところで面倒臭がる気がするのだが気のせいか? まあいい。
「面倒でも装填数限界まで弾を込めておいてくれ」
「了解。それともう一つ。もうすでになりかけてるけど、宗二に司令官を頼みたい」
急に言われてもね。僕には戦術とか分からないし、
「本当に僕でいいのか? そんな武力民族に敵うような戦術はかんがえられないぞ」
「大丈夫、私が補佐する」
「出来ればしおりにも戦線に加わってほしいのだが。ただでさえ僕が司令官になったとして戦力が減っているというのにしおりもいなくなってしまってはまともに迎撃出来ると思えない」
今のところ前線に出れるのは平次しかいないのだが。それに平次一人では心もとない。
「ごめん、私の『魔兵装』は試作型だから安定しないの。だからもともと前線には出れないの」
それを聞き、何か僕の中に悪い予感がした気がする。でも明確な答えは出なかった。
そんなことはさておき、僕たちは拠点と言う名の海上要塞の中に入っていた。
中は割と普通に要塞っぽかった。要塞と言うのがどんなものなのか分からないが、物々しい雰囲気がしていた。余分な物も何もなく、必要最低限の備品しかなりを見渡す限り機械と弾薬、食料で埋め尽くされていた。
「割と何もないな」
「拠点に余分なものを置いてはいけないから。一週間生活できるだけの食料は保存してある。だから万一本土がやられてもここで一週間もつ」
「まあ本土に入れたら終わりなんだがな」
そう言いながらよう要塞の中を見渡す。司令官をやるんだったら要塞内部の構造くらい知っておかないと。
「ついてきて。今から指令本部に行く。この要塞の一番大事な場所。ここの機能を知っておかないといろいろまずい」
ついにしおり自信も拠点のことを要塞って言い始めたよ。しかし中枢がどんな構造してるか知りたいな。
そこまでいくのにとてつもない時間がかかった気がするのは気のせいだろうか。途中でものすごい機械がごちゃごちゃしていたところがあった気がするんだがそこで時間を食った気がする。
とりあえず到着した指令本部はすごい近代的な機械がいっぱいあった。外の様子を見ることのできるディスプレイとか、何かミサイルを発射できそうな装置とか、その他いっぱいあった。
「なんか、すごいな」
「ここで大抵のことはできる。と言うよりここで基本的に指揮を執る」
「それでここでは何ができるんだ? それが分からないと意味がないと思うんだけど」
拠点本部の様子を知っても、使用法が分からないと意味がない。
「ええとまずは、無人艦船を出港させたり、要塞に設置してある大砲発射したり、沖にある拠点を操作したりできる」
よしよし、何かすごく引っかかる点がいくつか見つかったぞ。
「一ついいか?」
「何?」
「無人艦船があるなら僕達必要あるのか? もっといえば『魔兵装』を僕たちが装備する必要はあったのか?」
そう聞くと、少ししおりはためらいふと顔を上げ口を開いた。
「今から話すことを聞いても怒らない?」
上目遣いで聞いてきた。
「いまさら何だ?」
「実は人間が装備する『魔兵装』はあなたたちので二代目なの。もともと既存の兵器に搭載するものだったの。でもそれが普及してしまうとまたより強いものをほしがったの。そこで開発されたのが人が装備する『魔兵装』だったの。でもこれが普及してしまうと新たな兵器を開発したいといけない。それにこの『魔兵装』は戦闘力が普通のものに比べて理論上は遥かに高いから、多くのものが使うと死者がたくさん出てしまうことになる。それを避けるため、存在は極秘にされてるの」
「そんなものをなぜこっちに持ってきたんだ」
「この人が装備する『魔兵装』は私の先生が独自に開発したものなの。『魔兵装』を製造できる業者は向こうの世界では限られていて、製造する『魔兵装』は軍が開発したものしかつくらないの。軍が開発した『魔兵装』はまだ兵器搭載型だから、それを上回る戦力となる人用『魔兵装』を先生に持たされたの。普及する前に対抗できるだけ対抗できるから」
そんなものなのか、この『魔兵装』は。
しかし『魔兵装』はもとは兵器を強化するものだったんだな。それで人間を強化するのだから、強くなって当然か。でも人一人ではそんなに戦闘力はないのに、それを『魔兵装』で強化するだけでそんなに強くなるのか?
「人用『魔兵装』の最大の特徴は人間の演算能力を高められることにあるの。『魔兵装』を操作するためには高度な演算処理が必要。それを今まで機械でやってたから、既定の数値でしか戦えなかった。でも人間の柔軟な発想と、機械では出来ないような計算で機械より多彩な戦術が出来るようになるの。そこに『魔兵装』の演算補助を入れて、より高度なものにしようとしたのがこれ」
つまり人間の脳をつかってより強い兵器を作ったってわけか。なかなか頭いいな、これの開発者。
「でもその演算補助にも欠点があって、脳に大きな負担がかかるの。自身の処理能力を超えた計算をするのだから、かかって当然。その負担は短時間の演算補助だったら一時的な障害で済むけど、長時間にわたって負荷をかけると取り返しのつかないようなことになる可能性がある。だから、宗二たちが『魔兵装』を装備するのは決戦の時だけにしてほしい。でも、この負荷は自身が『魔兵装』を装備してるときにしかかからないから。演算補助のソフトを使って無人艦船の操作とか他にも私が作った機能を使うことができるから。基本的にはそういう風に戦ってほしい」
「そうなのか、分かった」
僕たちが『魔兵装』を装備するのは最終手段ってわけか。確かに聞いた限りではかなり強い兵器をずっと使っていられたらとても強いもんな。
こうして僕らの迎撃準備は整った。