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ラグナロクサーガ  作者: はるさき
第二章
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地図に見る果てしなき希望

―暫くして、面倒な書類を書き終えたハンスも近づいて、皆が勢ぞろいした所で酒場に向かう意思を一致させた

多分騒がしい、少し面倒だけど

賑やかな、少し世界が広がる酒場の一夜が

訪れるのだろうとウキウキした心を抱いた


ポートを出てから、僕達は

酒場へと賑わいながら、歩いて行く

話すタイミングはもう少し後にして欲しいと思いながら、それでも止まらない談笑に互いに笑う

賑やかな一行が来たと、街の人も笑みをこぼし、または苦笑いし、またはため息をつき


トリックスターはこの町にとって

様々な印象を持たれているけど

決して憎めない、良い人たちだと皆分かってる

ただ、少し騒々しくて 後始末がやっかいなだけ


このまま歩いていけばもうすぐ酒場、と言う時に

僕は一つの露天の前で足を止めた

その行動にエンリケが気づき、他の船員も同じく止まった


「ん?ルーク、何かあるのか?」

「あ…うん」


僕の目の前に陳列されていたのは、普通の地図

世界地図で、決して高級品ではないが

僕のお小遣いではなかなか買えない、贅沢品に近い

隣に居たトライが、僕がその地図を見ていたのに気付き、陳列棚から取り出して色んな角度から見ていた


「ただの地図じゃない…これが欲しいの?」

「あ、うん…」


地図、確かにただの地図だけど

僕にとっては意味がある


僕はこの町から出た事はない

少し外に散歩に出た位で、他の土地を知らない

つまりこの町が今までの僕の「世界」だった


勿論いろんな国や大地がある事も知っている

新聞やテレビ、色んな情報で色んな事を耳にしても

僕は本物を知らない


そんな時、せめて

僕の部屋にこの世界地図があったなら

何となくただの部屋でも、世界の一部になれるような気がして、欲しかったんだ

テレビなんて、贅沢言えないし。新聞は字だらけで世界観を感じさせない

だから、地図を買いたくて。今までお手伝いしてきたけど


「中々手が届かなくて…さ」

「ふーん…」


トライはその意図を知らずに、地図を陳列棚に戻した。するとからかいながらエンリケがトライに提案した


「ワンデートで…幾らか、とか…グボオオオオッ!?」

「次はえぐるぞオラァ!」


何が言いたかったのかあんまり伝わらなかったけど、多分トライの機嫌を損ねる事を言ったんだと思う

決して弱くはないエンリケも、トライにはあえて弱みを見せて、何となくそんな環境に楽しんでいた

本当は…いろんな所で聞くぐらい、凄く強いって知ってるけどね


「イテテ…ま、まあ。ルーク。欲しかったら自分で買うんだ。俺は買わないからな?」

「分かってるよ」


買わないってわざわざ言うエンリケに、少しムッとしてくれたトライ。でも僕はその意図を何となく理解している

自分で買う事に意味があるって事を

どんなに時間をかけても、自分の力で手に入れる事の大切さを言いたかったんだと思う

だから僕は…エンリケの言葉を非情とは思わない


でも、予定は狂ったかな

そう、僕は先に地図を飾ってから。言おうと思っていた決意があった

トリックスターが次この町を訪れたらと決めていたから、地図は後回しになってしまうけど

それでもいい、前から決めていた事なんだから


その気持ちを今、小さな地図で躊躇ってはいけない


置かれた地図を後にして、再び歩き出し

酒場が見えてきた


もうすぐ楽しく、騒がしく、ちょっと厄介でうんざりだけど

充実する時間が始まる


その中で、僕は 楽しい空気を切り裂いてでも

自分の想いと、決意を

伝える勇気にけじめをつけなければいけない

その決意の眼差しに気づいたのかどうかは分からないけど、エンリケが遠目で少し微笑んだ気がする


感じ取ったのかもしれない、僕なりの小さな成長を…

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