赤い宝石
使用お題ひとつ
ぐいぐいと肉に食い込ませた爪が重みを増し、皮膚を破ってにじむ血の珠がじわりと膨らんでいく。
赤い球体は艶やかに色のある艶を持った弧を描く。
薄黄色の肌の上に鮮明な赤が躍る。
口の中に沸き上がった唾液を嚥下する。
ここで、一気に引けばきっと赤が美しくしぶくだろう。
そう思考を踊らせながら爪が掛ける重圧を強めていく。
たれるまでいかないように、膨らむ赤い珠を宝物のように育てていく。
肉に食い込む爪の感触。
汗で冷たかった皮膚すらジワリ熱をおびて。血管を流れる脈動すらリアル。
こくりと唾液を飲み込み、肉に触れるその手に意識をかける。
深紅の珠がじわりとくろみを帯びていく。
表面に美しくない皺がはしる。
ふっと出から力を抜いた。
どくり。
流れをせき止められていた命がじわりと待ち構えていたかのように脈動を脳に伝える。
深紅の珠の皺が瞬間で消えて美しい珠。
ぷちりと皺が破れ、血があふれこぼれだす。
こぼすまいと差し出した手に赤い流れが伝い落ちる。
冷えた手に落ちるそれは燃えるように熱い錯覚を呼ぶ。
べとりと手のひらにのる赤はぬるりと滑らかだ。
部屋の隅は黒ずんで。
この赤が美しいのは今だけ。
黒く黒い血まみれの部屋。
赤を足して足して。
がりりと床を爪がこする。
見える世界は甘く黒く今だけの赤い宝石を慈しもう。
お題は〔食い込ませた爪〕です。
〔一人称(私、僕等)の使用禁止〕かつ〔手触りの描写必須〕で書いてみましょう。
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