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白い手の君
使用診断メーカーお題:ひとつ
「道連れにしてあげる」
そう言って差し出される手は白く細い。
君は笑う。
笑う口元だけが記憶に残る。
気楽な口調も仕草も風に広がった長い髪も覚えているのに君の顔を覚えていない。
清楚にして妖艶。
君の微笑。
どうして笑みを型作る口元だけが思い出せるのかがわからない。
ただ連れて行って欲しくて、その手を取ろうとした。
届かない。
はしる。
君のその白い手を握り返したくて、迷い走る。
速度を上げても追いつかない。
周りで狂い咲く花々を蹴散らして君を追う。
気がつけば傷だらけ。
振り返れば、乱雑に通った道筋に花が折れ落ちている。
白い手が柔らかく髪を撫でる。
「あなたの可愛いあの子を見つけなきゃ」
澄んだ声が囁いた。
君がいいんだ。
振り仰いだ視界。
強い風に舞う長い髪と花弁。
霞み痛む視界の中、
離れてゆく白い手と笑う口元だけが見えた。
お題「可愛いあの子/周りで狂い咲く花々/気楽/迷い走る/道連れにしてあげる」に挑戦してみましょう。
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