楽園
使用お題は二つ
青色の海。
暗い暗い海の底。
ゆっくりと体を起こす。
尾に沿って鰭がひろがる。
蛇のような先細りの尾だ。
幸福な楽園なんてどこにもないことはわかってる。
這うように海底を進む。
私はあなたが好きです。何度でも出会って恋をするから、忘れたまま出会いたくないの。
貴方の愛は海のように深くてひろく、多様な面を見せつける。
私は常に貴方の愛に包まれていた。それが私の望む愛と違う形でも。
私の居場所は深い深い海の底。
海底を這う私をみてくれるとは思えない。
それでも、貴方の瞳に映りたい。
貴方は水を統べる王の一人。
私の住む底より明るい場所に都を築いた。
贈り物を選ぼう。
そして心で告げてみたい。
「私を貰って下さい」
「へ?」
ぼぅっと思いにふけっていた私はひとの声に驚く。
ヒレもウロコもない人姿の少年。
それでも海底に棲んでいるような彼は人ならざるモノ。
「うん。イイけどうち来る?」
「え?」
彼は柔らかく微笑む。
「少し、場所柄的に寂しいけどさ。一緒なら、寂しさも減るよね」
「貴方はだぁれ?」
柔らかく微笑みながら私の手を引く少年は意外と強引で、誰かとの関わりの少ない私は強くときめく。
「僕はこの場所でこごった魔力。ドラゴンたちに近い原生種なんだって。水龍がたまに遊びに来ていろいろ教えてくれるんだ。君は僕が貰ったんだから、名前をつけなきゃね」
無邪気な言葉は幼さを伝えてくる。
「私に名前はあるわ」
「だって、僕は知らないもの」
ふくっと不満そうに私を覗き込む。
作り物めいた外見をゆっくりと溶かして私を見て微笑む。
「貴方の名前も知らないのよ?」
「ウェイゾン・ハーシュ。ハーシュって呼んでよ」
彼は嬉しそうに笑う。
「ミミュア・ユーリッドよ。メーアと呼んで、……ハーシュ」
照れくさい。
思いもかけず、私は貴方に求婚した。
したつもりじゃなくても、言葉を受け取った貴方は、寂しいんだと思うの。
そして、私は一人にしたくないと思った。
「ハーシュ。いつか、子供をつくる本当の夫婦になりましょう?」
「ふーふ?」
不思議そうに呟くハーシュ。
ゆっくりと説明をするんだろう。
海に棲む雌は雄を喰らって子を守るものが多い。私もそう。
求婚したかった王は彼を喰らうまでもなく栄養をくれるだろう。
ハーシュがそうとは限らない。
それでも、子供はほしいの。
「そう、夫婦」
創作するならお題は/①何度でも出会って恋をするから/②楽園なんてどこにもない/③貴方の愛に包まれていた です http://t.co/01touidfmG
しっぽが特徴的な人魚で求婚する話を書きます。 #獣人小説書くったー http://t.co/ybvAOHYSz3




