告白の日 【五月九日】
お題ふたつ
「告白の日だってー」
「んー。その日何度もねぇ?」
「うん。年に何回かあるみたい」
お前はスマホ片手に楽しそう。
楽しい記事を見つけては笑ってる。
「告白の日、か」
アスファルトの道。
盛り上がったりひび割れたり、つぎはぎの歩道。車道に止まる車から流れる紫煙。お前が軽くむせこむ。
「あー。タバコの煙苦手ー」
車を通り過ぎて声が聞こえることはないであろうあたりでお前はぺろりと舌と愚痴をこぼす。
「俺さ、前から思ってたことがあるんだ」
「え? なになに? 言えよー」
お前はまとわりつくように聞いてくる。
俺はこっそり笑いをこぼす。
ちらりと見れば好奇心にキラキラ輝く顔があった。
「んー。言ったもんかどーかなぁ」
そっと視線を外して後悔してるかのように呟く。
「なんだよ、いまさら! そんな浅い仲じゃないんだからさ! 遠慮なんかすんなよ! 怒るぞ」
お前の反応が予想通り過ぎて笑いそう。必死に笑いをかみ締めているとお前がちょっとテンションダウン。
「そんなに頼りないか?」
しょぼんと見下ろされて苦笑いがこぼれる。
「わかった。言う。聞いてくれるか?」
「おう!」
お前は握りこぶしを作って何を言われるのかとどきどき俺を見ている。
期待に染まったオーラが心に痛い。
深呼吸して、じっと見返す。視線は逸らさない。
その時に、身長寄越せとか思いかけたのはスルー。
「俺さ、ずっと前から嫌いだったんだ」
ぴきっと空気が凍る音がした。
お前の動きが固まって、視線がぐるぐる動いてる。
「え?」
まるで何を言われているのかわからないと反射的に出た声。
「だからさ、ずっと前から嫌いだった」
慌しく動くまぶた。
ああ、やりすぎかと思った。
「だからさ」
「え? あ? ちょっ」
必死に俺の言葉を遮ろうとするお前の言葉は封印だ。
「俺といる時は、スマホ、控えろよな」
お前の世界がぴきりと再び固まる。
通り過ぎる車や自転車。どこかで鳥の声が聞こえる。
お前は悔しそうに俯いて、(俺のほうが身長低いから表情は見えてるけどな)耳の先まで赤くしてる。
かすかに潤んだ目元。
ああ。怒ってる怒ってる。
「まぎらわしーんだよ!」
お前は照れ隠しにぎゃんぎゃん喚く。
「うるせーよ」
俯いてそっぽを向いて拗ねている背中を宥めるように叩く。
「嫌われてんのかと思った」
「ばーか」
お前はそっとスマホをしまう。
俺は内心にんまり。
俺といんのにスマホばっかで、悔しいんだよ。
告白の日 【五月九日】
告白お題は『ずっと前から嫌いだった』です。
http://shindanmaker.com/532709
ひとつとするべきだろうか?




