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君は一人で
使用お題ひとつ
サラサラと音を立てて川は流れていく。
緑のカーテンが川面に影を落とし熱を切りとる。
見上げれば、空の高い位置で鳥が旋回していた。
俺はひとつ息を吐く。
頭上から鳥の鳴き声が時折り降ってくる。
眩しい静寂が世界を占めていた。
陽射しに熱せられた大小の石の上に寝そべり、青い空に高く盛り上がる白い雲を見上げる。
肌を焼く熱を感じる。足を冷やす流れが心地よく、川に飛び込みたい欲求を抑えるのが一苦労だった。
風が樹々の梢を揺すり、渡っていく。
誰もいない。
ここにいるのは俺だけで。
だから、俺は。
誰もいない川べりで、石と陽射しに焼かれながら自分の腕に隠れて涙を落とす。
「君は一人でどこに行くの?」
思い出す君の言葉。
俺は正しく答えなかった。ただ、笑って「冒険さ」と上っ面で笑って見せた。
そうさ。
精一杯の強がりだったさ。
お題は〔君はひとりでどこに行くの?〕です。
〔直喩禁止〕かつ〔季節描写必須〕で書いてみましょう。
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