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自縄遊戯  作者: とにあ
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日向の花

使用お題はよっつ

 


 ずりずりと体を動かし、崖っぷち。

 僕は最後の力を振り絞って崖下に向け、身を躍らせる。

 夜の傾斜の木々が体をより打ち据える。

 口の中の鉄臭い味。



「怖いものなんてないよ」



 君に聞こえてないのはわかってる。

 怯える君をおいて僕は背中合わせのまま別れたんだ。

 君と心を交わせず、すれ違い、触れられないままさよならだった。

 もう、人の姿をとる力もないんだ。このまま打ち捨てられたまま死ぬのだろう。


 もしも、の話し。


 君に触れてもらって抱きしめられて、そのまま眠るという幸福に浸れたらどれほど幸福だろう。

 素直にその胸に飛び込めない。

 触れて、口付けて君に寄り添って暮らす。

 きっと穏やかだろうと思う。


 凍った世界で君を待とうか?


 そこはきっと誰しもがいつか訪れる世界。

 君を待って、みっともなくないように毛づくろいで綺麗にして。

 それでも、凍った世界に居る君を見たくなくて。

 怖いものなんてない世界で、黄色い花や白い綿毛にじゃれていたい。

 君にキスしたい。君の味を覚えていたい。君に僕の味を覚えていてほしいのかな。

 それももうかなわない?

 重い体をじりりと鞭打ち何とか目を開ける。

 白い光が目をやく。



 ぽかぽかと日差しの中、座布団にまるまる。

「冷たい貴方、凍った世界の住人かと思って驚いたのよ?」

 やわらかく、耳を弄られる。

 傷に触れないように優しくあてられるブラシ。

 ここは人のナワバリ。

 僕は人の姿をとる力がない。

 君はいない。

 青い鉄の箱の目。それが目をやく光の正体だった。

 人の娘が僕を撫でる。

 縄張りを失った僕は彼女の庇護の元、のんびりと毛づくろいしてもらう。

 庭の花がゆらりと揺れ優しい時間が過ぎていく。

 怖いものなんかないよ。

 いつか、まもってくれる君を僕が護るよ。


縄張り争いに負けた猫の獣人で毛づくろいする話を書きます。 #獣人小説書くったー http://shindanmaker.com/483657


-冷たい貴方、凍った世界/すれ違い、触れられない/僕の味を憶えて- http://shindanmaker.com/125860


幼子を慰めるかのように最後の嘘をつきました。

それは相手の幸福を祈る嘘でした。

「怖いものなんてないよ」、と。

本音は仕舞い込んだまま。

http://shindanmaker.com/484159



悲恋ものを創作するならお題は/①素直にその胸に飛び込めない/②もしも、の話し/③背中あわせのまま別れた です http://shindanmaker.com/153653


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