空
使用お題ひとつ
薄く白い雲が流れていく空を見上げる。
あの日からどのぐらいの時間が過ぎたのだろう。
今日、彼女を送った。
これであの事実を、冬のあの日の出来事を知っているのは僕だけになった。
十島蒼葉。
それが僕の名前。
寒い寒いあの日、僕らは越えるべきでない一線を越えた。
君が苦しんでいるのを見ていることに耐えられなかった。
だから、僕は薬を与えるのを忘れたフリをした。
彼女もまた君が苦しんでいるのを辛く思ったらしい。
ひゅうひゅうとうまく呼吸のできない君の細い首をぐいぐいと泣きながら締めていた。
僕はそれを見ているだけ。
コレは同罪。
恨むような君の眼差し。
僕はきっと忘れない。
君の名や容姿を忘れようと、僕は君のその眼差しを忘れない。
僕は緩く落ちてくる眼鏡を押し上げる。
紅葉。
君は僕のそばに居るかい?
君が他の誰かを見ることのない世界。
君は祖母が大好きだったからね。
寂しいとだめだろう?
あの日は冬の晴れ間。
ぴぅと吹く木枯らし。
痛いほどの風がむき出しの手を嬲っていく。
君は高い空の高みにいけた?
まだあたたかい君が寒いと泣きそうで、焚き火をした。
燃えていく君が手を動かした気もしてそれを見た彼女が火に駆け込みかけた。
ちゃんと止めたよ。
彼女が君と一緒にいくなんて許せないから。
そう。
僕はアレから木枯らしの吹く季節は君に会いたくなる。
君の眼差しを見たいんだ。
だから、見れるかなと繰り返すけれど、君をこえて美しいあの眼差しを贈ってくれる相手はいない。
春のくすむ曇天を見上げる。
白く薄い桜の花が春の風に吹き揺れる。
木枯らしはもう吹かない。
眼鏡男子とおばあちゃんが木枯らしの吹く日に大事な人を●●てしまった話を書きましょう。お題は空です。
http://shindanmaker.com/358955
病んでる




