プリマヴェッラ
使用お題ひとつ
少女はきょろきょろしながら道を歩く。
「うにゅ。あいつのトコへ行くトコなのに。ここどこだ?」
「どうしたぇしか?」
「あ。ピナ! 会いに来たぞ!」
声かけてきた顔見知りの青年に少女は駆けて抱きつく。
「プリマヴェッラ。ひさしぃでぇしね」
少女は嬉しげに抱きとめてくれた青年を見上げ若草色の瞳を瞬かせる。
「一年ぶりだろ?」
少女の言葉に青年は苦笑い。少女はそれに気がつかない。そうそうと機嫌良く語りはじめる
「ちゃんと、芽吹きと春風を持ってきたぞ。ついでに、うん、恋心もな!」
「プリマヴェッラの恋はだれぇしか?」
「やはりここは桜の似合う少女だな! こう、セツナイ初恋の甘酸っぱさが悶えるぞ!」
青年は身悶える少女を微笑ましく見守る。
「あっしの初恋はプリマヴェッラでぇしね」
「あはは。ピナにしては面白いこと言うなぁ」
さらりとした告白を笑い流しながら少女は青年の腰をぽんぽん叩く。
「そうでぇしか? ほんとのことぇしよ?」
「うん。あんな小さかったクセに生意気言うようになったな」
「あっしらは早く大人になるぇしよ」
「そぉかぁ。なーんかさびしいなー」
「プリマヴェッラ。あっしの初恋はあんたでえし」
「あはは。光栄だなぁ。でも異国から連れてこられて寂しかっただけだよ。ピナはさ」
繰り返された告白に少女は答え方を変える。
「それだけじゃないぇしよぅ」
「じゃあ、ピナにはとっておきの春一番を売ってやろう。あの時、みゅーみゅー鳴いてたお前に売ってやったようにな!」
「プリマヴェッラ!」
少女の笑い声は強風に巻き上げられて響く。
「春を売るよ。春一番は売れたよ。芽生えはいらぬか? 春雨はいらぬか」
姿のない少女の歌が響く。
青年は逃げるように去った少女を見送り、塀の上で寛ぎながら毛の無い頭を掻いた。
数年前の過去から来た春売りさんと年の離れた親友、彼らの「初恋」の物語書いてー。
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