上巳の節句
使用お題三つ
海を眺める道路。
一時間に一度列車が通っていく。真っ青の車体と海の青。空の青が幻のように一体化する。
車の後部座席には大きな箱がひとつ。
約束だったのだ。
上巳の節句には間に合わせると。
遠いあの日奪われた雛。
君はあの日からまるで人形のようになってしまった。
準備された雛壇に取り返した君の人形を飾ろう。
君は人形を見て瞳を潤ませた。
「ああ、無事だったのね」
君は嬉しそうに微笑む。
「お人形に厄をすべて引き受けてもらわなくちゃいけないの」
そう告げて君は僕をみた。
黒い長い髪。緋色の紅。
「ありがとう。取り返してくれて」
君は嬉しそうに僕に抱きついてくれる。
君は笑っていた。
「素敵素敵。お内裏様もお雛様も揃ったわ。きれいに飾るわ。どうかすべての厄を持っていって。私は明日お嫁にいくの」
雛人形が泣いていた。
崩れていく体を感じながら、思い出す。
君の人形は生き人形。
双子で生まれた君は占いでヒトに、もう一人は雛人形。
あの日、君が嫁ぐはずだった前日に人形は君の夫になるはずの男に攫われた。
早朝の車内。
そこに残っていたのは君の未来の夫。
君の手に二度と届かない。
僕はお内裏様として買われた。
人形だけど、君が好きだった。
君だけが好きだった。
桃の花を飾った部屋。
きれいな雛壇。
きれいな絵が描かれた貝を使って貝合わせ。
他の貝とは合わさらないと君は教えてくれたっけ。
君は誰の元にも嫁がない。
傷つけられた君は少しずつ壊れていった。
ああ。僕は最後に人形であることを棄てよう。
「君がこの家の当主だよ」
連れ戻した雛人形に告げる。
君はもう逃げられない。
僕は壊れてしまったお雛様の動きを止める。
雛人形はみがわり人形。
先に男に嫁いだのは雛人形。
雛人形と主人は入れ替わった。
血にまみれた上巳の節句。
家という鎖はただ一人遺される者に。
「おばさま……」
ひな祭りで血祭りになる男女のピュアな青春劇を書いて(オカザキレオ様
とにあさんは、「早朝の車内」で登場人物が「奪う」、「鎖」という単語を使ったお話を考えて下さい。 #rendai http://shindanmaker.com/28927
とにあの町は、 いまでも海列車の走る町です。 透きとおった海がきらきらと波打ち、線路はどこまでも続いて町からは見えません。 いつかこの町をでてゆくとき、人びとはその先を知るのです。 http://shindanmaker.com/389149
よりインスピレーションを受けて書きました。
レオさん、ごめんね。青春劇じゃない気がする




