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自縄遊戯  作者: とにあ
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屋上で

使用お題みっつ

BL要素高め!





 そこは昼の屋上。

 他に人がいないから独り占め。

 お弁当を広げて空を見上げる。

 食欲は……ない。

「よお」

 視界を覆う手のひらの影。

 手首のほくろがあいつと知れる。

「はなせっ」

 聞くわけがないと知っている。反論など、反抗など認めようとしない男だから。

「無駄だって知ってるだろう? あえて口にするなんてさ、こういうの好きなの? かわいいね」

 浴びせかけられる言葉に泣きたくなる。

「抵抗されるとさ、ぼろぼろ泣くまで、それしか考えられなくなるまで、やりたくなるよな」

「ならねーよ。なかねーし」

 あいつが笑う。

 塞がれた視界。

 体温を感じる。

「待ってたんだろう?」

 耳元で囁かれる。

「ヒトが来ない場所でさ」

 小さく続けられた「誘ってんだろう?」

 頭の中が真っ白になった。

「ふっ、ッざけんな! おまえだってっ」

 言葉が続けられなかった。

 口に放り込まれたのはお弁当のウィンナー(かにさんカット)。

 お前だって来なくていいんだ。誘ってなんかいない。

 背中に壁を感じる。わかってる壁じゃなくて床だ。頭を打たないようにの配慮がむかつく。

「ホント、懲りないよな。騎士様が助けに来てくれるといいな」

 嫌味たっぷりいるわけがないという含み。

 実際来たとしても俺はきっと取り繕う。「何事もなかった」と。

 あいつの声が遠のく。

 きっと聞きたくないと俺は自分を閉ざしたんだ。

 暗闇の中、昼の暖かさ。理不尽さも繰り返されれば正しく思えそうで、聞いていたくなかった。

 自分の無力さが悔しい。

「泣く?」

「なかねーよ!」


◇◆◇


 少し年下の幼馴染み。

 傍若無人な小さな王子様。そんな風に育てられていたのを知っている。

 それがかわいくて好きだった。

 久しぶりに会えば、どこかつまらなさそうにキリキリとげとげ。

 小さい頃はおいしそうに食べていたのにそれもなく、つまらなさそう。

 共通の友人に尋ねてもはぐらかされる。

 本人から聞き出そうとしたらつい勢いで押し倒して、嗜虐心かられていただきます。

 まぁ、警戒されるのは仕方ない。

 昼の屋上で一人ランチを広げて空を見てる。

 ここのところの観察結果。

 食べずにしまわれるランチ。

 愛するには至らない恋する。

 恋に恋するように、愛に恋するように。自分をだましてごまかして。

 昼の屋上。

 妙に音の無い空間で涙を堪えるように君が「どうして僕はこんなに無力なんだ」と呟いたのが聞こえた。

 きっと、自覚していないだろう呟き。

 空に手を伸ばす姿が、届かないものを望んで見えた。

 手を伸ばすなら、届くものがいいね。

 心に届かないならそれでもいい。

 いっそ心はくれないでいて欲しい。

 手に届かない、心に俺は恋していたいから。


 きっと恋することはない。

切ないシチュエーション

『音の無い空間で 涙を堪えるように 君は 「どうして私はこんなに無力なんだ」 と言いました。』 

http://shindanmaker.com/123977


今夜のお題は『ぼろぼろ泣く / 浴びせる / 「こういうの好きなの?」』です。

http://shindanmaker.com/464476


「昼の屋上」で登場人物が「恋する」、「ほくろ」という単語を使ったお話を考えて下さい。

#rendai http://shindanmaker.com/28927


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