白と青。夏のはじまり
使用お題ふたつ
夏の日差しが白い壁をより白く浮かび上がらせ青く塗られた扉を色褪せさせる。
梅雨明けと共に室内で過す時間は減っていく。
反抗的な目で白壁を睨みつける少年。その後ろから石造りの階段を駆け上がってくる少年。
「待てよ!」
白壁を睨む少年はこくりと息を飲み込む。
「なんで先に行っちまうんだよ! ったく、声掛けろよなー」
二人の少年は幼馴染。
白い壁を睨んでいた少年は表情を緩める。
「だって、お前先生に夢中だっただろ?」
できる限り硬くならないように絞り出された声はそれでも震えている。
はーっと息を整えた少年は不思議そうに首を傾ける。相棒が何を言っているのかが理解できなかった。
梅雨明けからやって来た新任の先生はどこか可憐なオトナの女性。
同じ学校仲間の少年達は盛り上がった。質問したり、眺めたり、ドキドキと妙に高鳴る興奮。それを堪能する時間。
気がつけば幼馴染みがいなくなっていた。
いつも一緒にはしゃいでいた相手に置いて行かれたことに傷ついた。同時に、かけられたかもしれない声を自分が気がつかなかったのかもしれないとも少年は考える。
「ぼくが一緒にいなくても、みんなと楽しめてたろ?」
壁に向かって言葉を綴る相棒を置き去りにしたのは自分だったような気になる。
いつだって、そこにいてくれる理解者。それが幼馴染みだった。
「今、ぼくは嫌な奴なんだ。だから、放っておいてほしい。あした、明日になったらいつも通りになれる、からさ」
がりっと頭を掻く。
「ばーか。んなこと気にすんな。吐き出しちまえよ。な?」
「あの人が、あの人がいなくなれば僕を見てくれる?」
二人の間に沈黙が降りる。
こつんと白い壁に額をつけて少年は肩を震わせる。
初夏の日差しが少年の首をじわりと焼く。
「いま、いまおれが見てんのお前だろ!?」
吐き捨てるように言って横を向く。
返ってくるのは沈黙で不安になる。
少年は相棒の微かに揺れる肩に手を伸ばす。傷つけるつもりはなかったはずだった。
ゆらり揺れる黒い影。
沈黙は不安だった。
フッと息を吐き出す音が沈黙を破る。
「ごめん。ちょろすぎる。君はとても純粋で、騙しやすい人だよね!」
幼馴染みは振り返って相棒の少年に抱きつく。
「ごめんね。ちょっとだけ先に抜け駆けされたって思っちゃったんだよね」
笑いながらイタズラを告白された少年は不貞腐れて、それでも、笑った。
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町は、 白い壁と青い扉の家が特徴の涼しげな町です。 人びとは梅雨の明けと初夏の訪れを心待ちにしています。 夏がいちばんながい町です。
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