日傘を射して
使用お題ひとつ
日傘をさしてバス停で待っているあなたに会いにいく。
そこは森を切り開いた細い道。
吸血虫を払った痕。ちらり滲む血を嘗めて曇天を見上げる。
今にも雨が降りだしそう。
じっとりと湿気を帯びて絡む空気。
楽しくてしかたない。
白いミュール。白いフレアレースのワンピースはアンシンメトリー。さやさやと肌に優しい感触。
髪をまとめるコームは銀の台座に桜色の石で模った桜一輪。
くるくる日傘を回す。
もうすぐつくわ。
貴方はバス停で待っている。
私は貴方に恋焦がれてる。
だから迎えに行くの。
どんな障害も打ち払う。
くるくる回る日傘をさして振り払う赤い雨。
バス停で待つ貴方。
私は日傘を放り出す。
貴方に抱きついて確認するの。
その髪、その肌、優しく伏せられたきれいなラインの睫毛。
私が長く恋焦がれた容貌。会いたかったの。
「遅くなってごめんなさい」
私は貴方を迎えにきたの。
「ねぇ、あなた」
私は優しく貴方に問うわ。
「遅くなったこと怒ってる?」
だって心配なんだもの。
静かに貴方は私の抱擁を受け入れる。
「よかった。貴方に嫌われたら辛いもの」
私は貴方の額に自分の額を合わせる。
本当は怒っているのか貴方は私のなすがまま。
「ねぇ、貴方。体はどこに忘れてきたの?」
私は身体の無い首だけの貴方を抱きかかえ、日傘を拾ってバス停をあとにする。
「私たちの新居はこの森の奥なの。貴方が気に入ってくれると嬉しいわ」
貴方へのお題「日傘を射して/バス停で待って/恋い焦がれた容貌/血を嘗めて/身体の無い首」に挑戦してみましょう。
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