荒地
使用お題ひとつ
笑い声が廃材の中響き渡る。
それは夜な夜な起こる怪異としてこの地から人を遠ざけた。
ひゅうひゅうきゅうきゅう
甲高い音をたてて廃材が踊り狂い、時折り哄笑が響く。ただ、それだけと言えばそれだけだ。
「見つからない。見つからない。ああ、見つからない」
笑いながら見つからないと廃材をかき分ける女の姿に私はそっと息を吐く。
ひとつふたつ呼吸を整え、姿勢を正し声を張る。
「先生、進捗はいかがですか!」
「悪いとも! フェイヴ君! 記録によるとここに在るはずだというのに!」
相変わらずの軽快な返事に私は言いようもない感動を覚え、止まりそうな心臓に気合を入れる。
「そこに間違いないのですか? 先生」
「ぅうん? 先史人類の遺構への入り口はここのはずなんだよ。この私が間違うはずがないだろう?」
自信満々な女は胸をそらしてそう言い放つ。
二十年前と寸分変わらぬ態度で。
いや、はじめて会った五十年前と変わらぬ態度で。
彼女は振り返らず、廃材の奥を見ながらひたすらにポルターガイストを続け夜が明ける。そのはずだった。
「ああ、ああ。フェイヴ君、私は君の献身を嬉しく思う」
彼女がこちらを向いて私を手招く。
はじめての出来事。それでもはじめて私を見た先生は記録の映像通りで心臓に悪い。
ごちゃごちゃと足場の悪土くれの中、先生の招きに応じる。もう、先の短い年だ。何があっても後悔はなかった。
「フェイヴ君、君はいったんこの鍵をもって人里に戻るがいい。私はもっとこの遺構について調べねばならない。頼んだよ」
彼女の調査は進むことはない。
彼女の命が尽きた時に入り口は崩落したのだ。
そして誰も掘り返すことはできなかった。
誰でもなく彼女が邪魔をするのだ。
いつか、彼女の遺骨をと祖父は望んでいた。
私の腕の中で『鍵』が動く。
「ああ、まだまだ逝けませんね」
この子が先生なのか、先生の子供なのか、それとも真実鍵なのか。私にはわからないこと。
ただ、先生に頼むと私が託された。
しんだことに気づいていない考古学者と紳士的な初老の男が、ゴミの山から「愛」を見つける話書いてー。
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