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さいごのひとり
使用お題ひとつ
すべてを静寂が支配している。
ガラスのむこうも、こちら側も。
ファンがぎこちない軋み音を届けている。他の音なぞうち消す騒音ある静寂。
分厚いガラスのむこうでは風が草の葉、砂粒を撒き散らすだけ。生きているのは地に根を張るものばかり。
彼らは本当に生きているのだろうか?
いつからか毒を吐く生き物に変わった彼ら。動く物の生きる場所はあっという間に減っていく。
知識は散り心もどこかに散っていく。
すべてを静寂が支配している。
薄白くのびた幹の先で薄紅色の綿毛が緑の寝床からこぼれてる。
濃い緑に映える白の強い幹や枝がまるでシラボネ。
薄紅の花弁がどこまでも生きてみえてガラスが邪魔だ。
百日紅。
君のもとにたどり着けるだろうか?
もう無害な酸素残量は僅か。
なら、うつくしい毒花と化した君の下で。
お題は【夏】の季語である「百日紅」を使った「世界最後の日がテーマの」お話です
#季節しばりのお題 #shindanmaker
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