宇宙の果て
お題ひとつ
宇宙の果てには何があるのでしょう。そんな疑問を胸に抱えスクリーンに写るニセモノの星空を見上げる。
確かにどれほど背伸びをしても届かない星空だけど、その広さはまっすぐに五十歩もないのです。だってここは地上への道を失った地底の国だから。
星を見たいとあなたが泣くから私は見せてもらった資料を参考にみたこともない星空を再現したの。きっと喜んで褒めてくれるってあさましく期待していた。ほんとうに喜んで欲しかったの。苦しい無理に作った笑顔じゃない表情が見たかったから。
やっぱりそんなあさましい欲が透けたのかしら?
純粋にあなたのためではないのですもの。
迷い込んだあなたは私から静寂を奪い好奇心と探究心をくれた。私はその探究心を満たすためにあなたを振り回す。帰れないと嘆いているのを知りながら私のさびしさが薄らぐことを優先するひどい私。
星空を見上げたあなたは大きく目を見開いて「こんなウソいらない」と叫んだ。
私はなにを間違えたのかがわからない。
ちゃんと南の星は南に配置したし、北も西も東だって間違えていないはずなのに。私はわからないままうなだれて「ごめんなさい」と繰り返す。
怒らせたいわけじゃない。嘘かもしれないけれど、傷つけたいわけじゃなかった。私には心の機微がわからない。
私は空を見たことがない。
明るい青空と混ぜたのがダメだったかしら?
だって、明るいは素敵だと思っていたから。
渋い表情で怒りを噛み殺してあなたは私に「ごめん」と、私が悪いんじゃないと無理に微笑む。
行動を起こしたのは私だから、私が悪いのは間違いないのに。再び「ごめんなさい」と謝った私に「悪くないって言ってる!」とあなたが怒りをこぼす。
あなたを怒らせるばかりの私がうとましい。
息荒く顔を赤くしてあなたが苦しそうなのがただただ申し訳なくてかなしくなる。
「あなたから聞いた星空を再現したかったの」
できなくてごめんなさい。私はなにを間違えたのかしら?
「宇宙には空を照らす太陽も月もあるのでしょう?」
だから、私は素敵な青空を選んだの。
「あぁ、そんな理由だったの」
あなたは疲れたようにため息をこぼして床に座り込む。
手招きされて私はいそいそとあなたに寄り添う。
「地上に広がる星空は、見えるのは夜で太陽はないんだ。それに月が見えていると空が明るくて星々の煌きは僕らの目には届かないんだ」
星が輝くのは暗い夜だということ。地上で見える星は小さな光だということ。あなたはゆっくりと噛んで含めるように教えてくれる。
私はそれに合わせてスクリーンの映像を組み替えていく。
真っ暗な一面にほんのり濃紺を溶かし小さな白を散らしほんの少しだけ赤や青を挿し入れる。
地底湖の湖面を滑る光虫を踊らせるように。
「星の位置はめちゃくちゃだけど、ああ。満天の星空だぁ」
ニセモノの空を見上げながら宇宙の果てを目指したかった。どこまでも重力から逃げたかったとあなたは語る。
ここは地底の底も底。私はあなたを出したくない。
きっと静寂は帰ってくるだろうけれど私はそれを欲しいと思えない。
ニセモノの星空に手をあげて泣き笑うあなたを私は手放せない。
君は悪くない。
ありがとう。
空がみたい。
いきたい。
死にたい。
明日がこわい。
あなたの言葉を拾っても私はいつだってあなたにかみ合う対応ができないの。
いつだって。いつまでも。
あなたはいつしか怒らずにやわらかな諦観の微笑みを浮かべる。
私はその諦めの笑顔に気がつかないフリをする。
あなたが外への扉から目を背けることに気づいていないフリをするのとおんなじように。
ごめんなさい。
ありがとう。
食べて。
眠って。
お話を聞かせて。
そばに、いて。
あなたはいつしか年老いてただ私を置いていくことを不安がる。
それでも、その眼差しが泳ぐのだ。
外へ続くかもしれない扉と私の間を。
私は物言わぬあなたを連れて扉をくぐる。
はじめて見る空は真っ暗であなたが語るような星の光はひとつも届かない。
あなたは宇宙の果てへいきたいと言っていた。
私教えてあげることをしなかったんです。地底の外側。すべてがあってすべてがない場所。
すべてがはじまりすべてが終わる。
ようこそ。ブラックホールの底へ。
ごめんなさい。
ごめんなさい。
なんだかとても伝えたくなかったの。
物言わぬあなただから教えることができました。
届かないから伝えることができるのです。
ああ、もし魂というものが存在し、もし、ええ、もしもあなたがここにとどまっているのならば、どうかひどい私を。
どこまでもどうか許さないでください。
「宇宙の果てには何があるのでしょう」で始まり、「どうか許さないでください」で終わる物語を書いて欲しいです。できれば13ツイート(1820字)以上でお願いします。
#書き出しと終わり #shindanmaker
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