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マツリ
使用お題ひとつ
風が吹いた。
見上げれば神社に続く石段と森が夕日に晒されて黒く浮かび上がっている。
足下で妙に踏ん張る愛犬を宥めすかして早くここから去りたくてしかたがない。
鈴の音がする。
チリンと澄んだ高い音。
「陽が落ちるよ」
そう言って微笑んだのは知らない男の子。白いシャツ白いジーンズ緑のパーカー。
手首が後ろにくいと引かれた。
見下ろせばじりと踏ん張る愛犬。
「お祭りにこないなら早くおかえり」
よく見えない顔。動く唇に視線が吸い寄せられる。夕暮れの空ようやく動いた愛犬と帰路につく。
振り返れば、山は夕陽の逆光で黒々と闇に沈んでいる。
祭囃子も豆粒ほどの灯りひとつ見えない。
ぐいと引かれて駆け出した愛犬を追う。
いつもの朝のいつもの路地。
「振り返ったね」
見知らぬパーカーの人が通りすがりに囁いた。
「夕方の神社」で登場人物が「出会う」、「犬」という単語を使ったお話を考えて下さい。
#rendai
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