不明瞭な好意
使用お題ひとつ
私は晴れの日が嫌いだった。特に人と会う日の晴れが。よく晴れたフィールドワークに最適なそんな日に彼女に紹介された。私は早く出かけたくてうずうずしていたが出資者の紹介で席を外すことはできなかった。事務要員として紹介されたのはまだ幼い少女に見えて「子供じゃないか」と追い返そうとした。
十九歳だと言い返されて信じられない十二、三歳だろうと喚いたらパスポートを見せられた。十九歳だった。
彼女はあくまで事務員で、私の研究内容を知れば鼻で笑うのかもしれない。先日会った姪のように。そう思うと気が重かった。
私の主力を注ぐテーマはUMAとも言われる幻獣なのだから。呼び名は違えど広い範囲で同形状の幻獣目撃談は転がっていて、いない。いなかったなどと言い切れないはずなのだから。
彼女はUMAを信じてはいなかったが、UFOや宇宙人の存在は信じているらしく、私の研究を褒め認めてくれた。ちょっとUFOに結びつけたがるところはあるが楽しい時間が増えた。
まるで娘ができたようでもあり嬉しい時間だった。調子を崩しているようだと心配すれば問題はないと突っぱねられて思わぬほど傷ついた。
その夜、はじめて入った彼女の部屋で私は震えて過ごした。
はじめて見た彼女のドールコレクションは一見以上の価値がある。移動しても視線が追ってくるとか、目をはなせば明らかに先程とポーズが違うとか実にファンタスティック!
「これがノロイノニンギョウ!」
喜びのあまり声をあげると不満そうに「オトモダチ」と告げられた。聞くところによると全部は連れてこれないのでどうしてものお友達だけを連れてきたのだとか。
仲介者に立ち会ってもらい無理矢理病院で診察を受けてもらった。
その体内にもうひとつ命が宿っているという。
めでたいと素晴らしいと喜んだ私は幼い従業員を手篭めにしたのかと冷たい視線に晒された。ちがうよ!?
父親に伝える気はないと告げる少女に仲介者も困ったようにいくつかの連絡先を提示している。彼女はすべて断った。
「このまま、続けるのはご迷惑ですか?」
「よし。では私の子供ということにしよう!」
パパと呼ばれてふにゃふにゃのいきものに触れたい欲求はあったのだ。
「お断りします。そんなご迷惑をかけられません」
彼女はとても毅然としていた。
そうかー。迷惑かー。
パパって呼ばれてみたかったなぁ。
少なくとも私のところで事務員を続けてくれることになった。だから、たまに帰る自宅に彼女の部屋を準備して好きなだけオトモダチを呼べばいいと誘い、ついでにベビールームも揃えてみた。もちろん資料も読み放題。私もたまには資料整理の必要性を感じていたしね。
彼女が娘みたいなものだから生まれてくるのは孫のようなものになるのだろうか?
あの幼げな体は出産に耐えられるのだろうか?
資料を改めて調べたり、動画を探して見てみたり。いや、多くの人々が乗り越えてきた生命の神秘が偉大過ぎて神の愛と試練を感じる。
「徹夜明けの祈り、ですか?」
通いの家政婦がそろそろ時期だからと泊まり込んで一週間。
倒れ苦しむ君の声を聞きながら私は後悔する。
パパと呼ばれてみたかったのは君の子供だからだ。君の子供だから欲しかった。君ごと欲しかった。
幼げな少女が好きなのかと自分を嫌悪して抑え込んだ。
理由はない。
君が好きだった。
ドアの向こうから聞こえる呻き。
蘇る動画の恐怖。
もう会えないかもしれないと思った。
「私は晴れの日が嫌いだった」で始まり、「もう会えないかもしれないと思った」で終わる物語を書いて欲しいです。できれば10ツイート(1400字程度)でお願いします。
#書き出しと終わり
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