表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
自縄遊戯  作者: とにあ
367/419

夕闇の鳥

使用お題ひとつ

 冷たい風が頬を刺す。

 姉が頬を赤らめて手袋に息を吹きかける。

「雪が綺麗ね」

 海老茶色の毛布をぶわりと風に泳がせて手を広げる姿は大きな鳥が翼を広げているみたい。駆け寄れば毛布で包まれてあったかい。

「飛び出しちゃいけないわ」

 困った子ね。とぎゅーっと抱きしめられてほっとした。

 ちょっとだけのつもりだったんだ。迷子になる気はなかったもん。姉と毛布のぬくもりは親鳥に守られる雛の気分だった。



 冷たい風が頬を刺す。

 もう姉に手を引いてもらった子供の頃とは違うんだ。僕の方が身が軽く体力があるからなんて言い放って心配する姉を残して飛び出した。振り返らなかったのは僕はいつまでも子供じゃないと示したかったから。

 靴の下でギシギシと薄板が軋む。崖にかかる古い足場が壊れる前に駆け抜けなければいけない。コートの下に仕込んだ鞄に入った荷物を届けるために。

 凍える山道。

 噴きあげる風は冷たく頬を刺すが雪で視界を奪われない分、安全を確保しやすいはずだ。父が教えてくれた数少ない役立つこと。山の危険をたくさん教えてくれた。雪男や山童を探す合間に。だから、急いで。それもちゃんと慎重に。



「飛び出してしまうあたりが子供なのよ」

 僕を迎えてくれた母が柔らかく微笑む。その後ろから父が「来たか」と笑う。

 急かすように求められた鞄を渡せば、父は振り返ることなく奥へと駆け出した。困ったように笑う母が僕の腕を引く。

「あなたもいらっしゃい」

 連れて行かれた先で見た光景を僕はきっと忘れない。

 沈みゆく太陽の名残りの中見たことのない鳥が警戒するように翼を大きくひろげている。その姿があんまり綺麗で、目頭が熱くなった。


「冷たい風が頬を刺す」で始まり「あんまり綺麗で、目頭が熱くなった」で終わります。

#こんなお話いかがですか

shindanmaker.com/804548

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ