君と眠るベッド
使用お題ふたつ
市場を歩く二人は楽しげに金曜日の夕暮れを楽しんでいる。
「君と休みの重なる週末なんていつぶりだろう」
男の言葉に隣の彼女は歩行のバランスを崩させる強い調子で男の腕につかまった。
「ほんと、ひさびさすぎるのよ」
少し怒気を含むその声に男はそっと歩く速度を落とした。髪の香りを楽しむようにその耳元に顔を近づける。
「その分焦がれてた」
そう囁かれた女は顔をそらす。熱を持ったのか赤い耳が髪の隙間から覗いている。
「……ばか。場所は選びなさいよ」
「誰もほかの人間なんて気にしてやいないさ」
「いじわる」
「君は優しくしてね」
「ズルいんだから」
視線を逸らしてそれでも腕はつかまえたままで。
週末の買い物を済ませ、二人は久々の安穏時間の準備をする。
「出掛ける?」
「今恋しい場所はひとつだけだよ」
雑踏の中、誰も二人を見ていない。
お題
「久々の安穏」、「金曜日」、「市場」、「優しくしてね」、「隣の彼女」
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お題は〔君と眠るベッド〕です。
〔モノローグ禁止〕かつ〔匂いの描写必須〕で書いてみましょう。
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