余命365日の恋
使用お題ひとつ
一年限定の恋。
恋をした日から終わりが決まるそんな呪い。
それでも、私は恋をした。
家にかけられた呪いがこわくて恋なんてしないって泣いたほどなのに、私はあっけなく恋におちた。
「恋をしたら365日後に死んでしまうんですって。だから私恋なんてしないわ」
君はそう言って笑っていた。
「恋に気がつかなかったらどうするんだい?」
そう問えば君は驚いたように動きを止めた。
「え、気がつかないこともあるの?いやだ。こわい」
自身を抱きかかえるように、袖を、いや、腕を掴んだ指先が震えている。
恐怖から自覚できないこともあるんじゃないかと言ってみることはできなかった。震える指も怯えた眼差しもあまりに痛々しくて。
だから、恋なんてしなくていいんじゃないかと伝えたんだ。
恋なんていらないだろうって。
君は笑って「そうね」と答えたじゃないか。
普段通りの日常の中僕だけが君に恋していればいいと思ってたのに。
「はーい。ひどい事を言います」
そう言って君は僕に耳打ちをする。
「私、恋をしているの」
蝉時雨。
私はきっと残酷だ。
恋をしたと思ったから恋することがこわいと彼に告げた。
恋をしないでいいってきっと『生きて』って事だよね。
本当はずっと黙っていたかった。
でもね、明日が怖くて、私から逃げる貴方が見たくなくて。最期まで貴方を見ていたくて。
恋人じゃなくても友達でいたくて。
それでも、もしこの恋がニセモノなら明日もきっと会えるし、本物なら、きっとああ、きっと私を忘れずにいてくれるよね。
貴方から、消えることがなによりもこわい。
今日のとにあのお題は
「余命365日の恋」
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