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ドライブ
使用お題ひとつ
すっとドアが開く。
私たちの間に会話はない。それは今でも変わらない。
貴方は私に何も望まない。
私も貴方に望みは抱かない。
私は目的地を告げる。
貴方は目的地に向けて車を走らせる。
私はただこの二人っきりの時間をいつくしむ。
この車の中では邪魔などない。
望むのは、ああ。このままさらってくれればいいのに。
ドアを開け、行き先の指示を受ける。
ある日、車に乗った貴女はただ沈黙。
会話がないのが普通で居心地が良かった。
会話なんかしても上滑り上っ面。
他人なんてそんなもの。
貴女だって、交通手段担当の使用人としか思っていないだろう。
いつもならさっと目的地を告げるのにこの日に限って何も告げられない。
さらりとどこの男に会いに行くのかを告げればいいのに。
埒が明かない。
「きょうは、どちらに?」
「貴方のところかしら?」
誰も信じない運転手と自ら鳥籠に入れられることを望んだ女との優しい物語書いてー。
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