弟
使用お題ひとつ
ふたりぼっちになりたかった。ひとりぼっちよりひとりじゃないだろうと思って。
パーツでよかった。替わりでよかった。それでも必要とされたかった。
必要としてもらえると思えるたびに取り上げられた。
たったひとりでよかった。
必要だよと。好きだと言って欲しかった。代用品でもかまわないから。
ずっと、いらないって言ってくる。
生まれてくる前はふたりぼっちでいたはずなのに。
いつしか繋いでいた手は振り払われて、知らない場所を駆けていく。
嫌ってるくせにと突きつけられて否定できない気持ち。
だって、どうして守らせてくれないの?
どうして知らずにいた方がいいことを知ろうとするの?
こわいなら、ちゃんと守るよ?
なにも、いやなことを知る必要はないのに。
どうしていってしまうんだろう。どうして知ろうとするの?
嫌っていいから、知らないまま守られていて?
どうしてそれがイヤなんだろう?
わからない。わかれない。
ずっとそうやってあやしい均衡で進んでく。
そう。
思うようにならないから。確かに嫌いなんだ。
それでも、いないとダメで、目の届くところにいないとひどく不安でしかたがない。
『特別なんだ』
嬉しそうに笑われて頷いた。
『自分の好きを見つけれたんだ』
すごく嬉しそうに笑われた。よかった。って笑うんだ。ずっとそういう表情をして欲しかった。
『僕は特別にはなれないから、ちゃんと特別を自分で見つけられて良かったよ』
おめでとうと笑う姿は間違いなく幼い頃から欲しかったもの。
『好かれないなら嫌われたいのにそれも出来ない』
そんな訳の分からない言葉が滑り落ちる。
反論する言葉が浮かぶ前に『その好きを大事にして。だって取られるのいやな好きなんだろ?』と続けられてただ頷く。
欲しいという欲を良いことだと褒められた。
認められて応援されたことが嬉しくて、誰かに言われた好きがはじまりでも、そうあるべきと言い聞かされた教えでも、本当は拘束力はそんなになくて、嫌われていても特別なんだ。
嫌いだけど、憎めずに誰よりも愛しているから。
こわいなら壊れてしまえばいいのに。そしたら、そっと全てから守るのに。
たったひとりの大切な弟。
届かない想いと同じその言葉を飲み込んだ。
「ふたりぼっちになりたかった」で始まり、「その言葉を飲み込んだ」で終わる物語を書いて欲しいです。できれば12ツイート(1680字)以内でお願いします。
#書き出しと終わり
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