夢の水底
使用お題ひとつ
ふたりぼっちになりたかった。ひとりぼっちはいやだし、大勢の一人もいやだった。
さぁさぁと雨が降る。水の中に閉じ込められているように薄暗い視界。ひとりぼっちはいやでなんでもいいからぬくもりが欲しくて手を伸ばす。
自分を認識するたびにどこまでも嫌悪感が募る。まっすぐに生きることも嫌悪のまま削除してしまうこともできない。
誰と一緒がいいのと自らに問えば、誰も浮かばなくて泣きそうになる。
友人も家族もいたはずなのに暗い場所でふたりぼっちになりたい相手は誰もいなかった。
ひとりぼっちと寄り添えば満たされる気もして一緒にふたりぼっちになってくれそうな誰か。しばらく寄り添っていてもいつか誰かを見つけて僕を置いていく。
僕は水底の雨の部屋から出ていけない。
明るい場所はとても遠い。
外はこわいものばかりだよ。
そんな囁き声に身を竦める。
心の底に絡みつく鎖は赤錆びて撫でれば指先から血が滲む。ない方がいいのに手放すのもこわくて大切に大切に砂で埋める。
重くて痛くてどこにもいけない。
『しょうがない』
そんな免罪符に僕は縋っている。
どうして僕は不必要なものに縋って動けずにいるんだろう。僕のしたいことはなに?
通り過ぎていくぬくもりも大切なことも明るいものも冷たい雨が消していく。
なにも考えないでいいという囁きにすべてを任せれば、きっと自分が嫌いしか残らない。
あると知っている助けてくれる手を取ればきっと僕は動けなくなる。自分が悪いわけじゃないという事実と自分の存在自体が罪なのだという糾弾が、一度でもそれを受け入れるのが正しいと感じてしまった逃避が僕をすべてから逃がそうとする。
終わったことは変えられない過去。
未来は変えられる。
今は変化していける。
しあわせを、良い未来を求めていこう。
きっと嬉しいと思えることもあるから。
そう告げて、自分にも言い聞かせていく。
誰よりも信じていないのに騙すように手を差し伸べる。
「明日はいい日にしていこう」
さぁさぁと雨が降る。砂の中から錆びた鎖が顔を出す。
じくじくと痛む熱が生きてると思う。
通りすぎるぬくもり。確かに差し伸べられる手。
きっと砂が抜けてしまう。かろうじて立っている砂も鎖も消え落ちてしまう。
そんなことはないのかもしれない。
よぎる言葉。
でも、ほんとうに思っているんだ。もし、人生をはじめからやり直すなら覚えていてもきっと同じ道を選んでいく。彩られる過去はそれほど尊い。
冷たい雨の出会いすらどれひとつとっても捨てられない。
ずるくて弱くて欲深い。
冷たい雨はかつてぬくもりのかけらだった。
赤錆びた鎖が重みを増す。
救われる手をとることさえ恐れだった。とってしまえば僕は動けなくなる先しか見えなくて。
だって僕は僕がいらない。
だから、楔は必要だった。鎖は必要だった。
すべて捨てて軽くなればいい。
そんな囁き声が聞こえるのはきっと願望で。
それでも、僕は捨てたくなくてただひたすらに均衡を求める。
それを求めてる資格は僕になく、ただ思考の端に流れ込んだその言葉を飲み込んだ。
「ふたりぼっちになりたかった」で始まり、「その言葉を飲み込んだ」で終わる物語を書いて欲しいです。できれば12ツイート(1680字)以内でお願いします。
#書き出しと終わり
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