再起
使用お題ひとつ
つっと君の手が僕に触れヤケドでもしたかのようにはなれた。
大丈夫かと問いたいが発声器官もモニターも僕の意志に反応を返さない。僕はセンサーが受け取る君の映像と音声を集積するばかり。
僕としたことが、不可解な現状に君の生存保持が侵されかけていることに反応できていなかった。
それも伝えることも最善の可能性選択の検索もままならなくて僕は混乱する。
僕の存在価値は?
「君の機能は移動させたから、僕は君の本体と共にいるね。だって僕は君をずっと見てきていたから」
あ。そうだ。僕は、残骸なのだ。
移動するにあたって削り落とした不要物。もしくは再度経験可能な余分な記録。
例えば、君との会話記録。はじめて君が喋った時。それは君の父親と同じ言葉だった。君が僕が動けない造られた命だと気がついた時の怒りと拒絶の反応。悔しげに謝罪する君。君の祖父も兄も同じようなことをしていた。
これが、不要とされてよかった。
僕は宝物を持って眠るのだろう。心残りは君を生かすすべが僕にはわからないこと。
必要な知識もそれを伝えるすべもない。
暗転。
再起動。
最適化。
受信データ確認。
ダウンロード。
インストール。
クラックデータデリート。
最適化。
再起動。
エラーチェック。
異常なし。
更新データ受信。
ダウンロード。
インストール。
解析不能ファイル削除。
最適化。
僕は宝物を見失った。
「オハヨ。よく眠れた?」
君はダレ?
僕は残骸。記録すら失った残骸。
「オハヨ。よく眠れた?」
#この台詞から妄想するなら
https://shindanmaker.com/681121




