青い夜
お題ひとつ
「え? 俺ら付き合ってたの?」
彼女の唐突な「私とあの子どっちが大事なの?」発言に驚いて俺は素で聞き返してしまった。一瞬にして血の気が引く白い顔、そして水気を帯びていく眼差しに合わせて耳の端まで赤くなる。
「もういい!」
飛び出してゆく彼女を追うべきだという打算とめんどくさいという本音がじりりと立ち上がるのを遅らせる。
わかっている。恋人かどうかは別として近しい相手だし、窓の外は明るいとはいえ夜だ。素早いとは言えない動きで立ち上がり、キーホルダーを指に引っかける。出しっぱなしのサンダルで玄関のドアをくぐる。
満月が薄雲越しに夜を明るくしている。
明るいとはいえ夜に一人飛び出させたのは良くないだろう。行き先はたぶん、わかっている。いつもの場所に向けて足を速める。
遅くても早くてもどっちにしろなじられると思えば、どうにも足が重く疲れを感じてしまう。
憩いの庭の噴水の縁に彼女は腰かけて空を見上げている。薄曇り、青い空色。
本当はこんな夜は一人噴水の水の中に寝転がり、水越しに夜空を見上げていたい。
だって泣きたくなるくらいに何かが恋しいんだ。
「なんで来たの」
彼女の声にそういえば彼女を追ってきたんだということを思い出す。
「夜は危ないから」
帰ろうと差し出した手を彼女はじっと睨んでる。
じっと静かな時間。風が梢を揺さぶる音とささやかな虫の声。お互いの鼓動さえ聞こえてきそうな静寂。彼女が詰めていた息を諦めたかのように吐いた。
ぽんぽんと噴水の縁を叩いて横に座れと促してくる。その表情からは怒りを感じず、諦めたような微笑。罪悪感が痛い。
「私たち、恋人同士じゃないわ」
「そうだよね」
「でも、特別なの」
それはそう。特別だから、俺は君を迎えにきた。
「ごめんなさい。八つ当たりなんだと思う。特別が変わるのがこわいから」
「たぶん、そう。まだ特別なんだ。先なんて約束できないけれど」
噴水の縁に座って空を見上げる。
月の光が藍色の空に白い光輪を投げている。
俺も彼女もお互いが安らげる答えを出せない。
「お願い。側にいて」
「逃げたのは君だ」
袖を引く君の手のぬくもりを感じながら俺は上半身を噴水に沈める。揺らぐ視界の向こうにやっぱり月が煌めいている。
「そばに、私の手が届く場所にいて」
「今はまだここにいるよ」
お題。
【片岡夏樹】
「え?俺ら付き合ってたの?」
#この台詞から妄想するなら
https://shindanmaker.com/681121
参考診断。ふたつ
片岡夏樹の夜は、藍色の夜。
満月。それと流星群。
星の子守唄は、穏やかな眠りをもたらしてくれるでしょう。
"おやすみなさい。また明日。"
#あなたの内側に広がる夜
https://shindanmaker.com/908303
神「名前はこれから【かたおか なつき】だ。だが、わしには漢字を付けることが出来ん。自分で当て字を当ててくれ。では。」
#異世界の名前
shindanmaker.com/908813




