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自縄遊戯  作者: とにあ
333/419

昔話を

使用お題ふたつ

 靴の中に小石が入っているような違和感。

 実際に靴の中に小石が入っているわけでなく、人生におけるほんのひと時、ほんの僅かな不快感と言える。

 それを呼び込んだのは一通の手紙だった。

 遊びに来るとただそれだけが書かれた君からの手紙。過去と無縁の穏やかな此処に過去が押しかけてくる。

 過去を捨ててこの牧場で暮らしているのに。

 見渡す限りの広い土地。遠く去り行く車の音。大きな荷物を抱え、この場所にあわないヒールで君は立っていた。

「だって、あなたがここは任せてなんて言ってわたしをおしやったから。終わったあとも連絡先が伏せられていてとても心配したんだから!」

 そういえば日付けは記載されていなかったか。

 大きな鞄を放り出し飛びついてきた君からはオレンジのソープの香り。

「君は君の人生を生きるべきだろう」

 こんな怪我をした年寄りのそばにいるより。

 そんな思いは知らないとばかりに君は鼻で笑い飛ばす。

「あら。わたしはわたしの人生を生きるわ。決まってるじゃない。それを決めるのはわたしなの」

 ふわりと揺れる髪が鼻腔をくすぐる。これは少しきつい拷問。

「だから、ここに来たの。わたしあなたと居たいわ。落ち着いたら昔話をしてくれるのでしょう? ほら、昔話も未来の話もたくさん時間はあるわ!」

 ひるがえるスカートがターンを描く革靴のヒールが、虹を描くように眩しい。

 平均的な恋人同士というには年の差がありすぎる気もする。

 彼女は眩しすぎるから。

「まずは荷物を部屋に置こう」

「ええ。ねぇ、手紙は届いた?」

「ああ、届いたよ」

 動きやすい靴を準備してふわふわしたスカートは危ないからもっとしっかりした衣類を。

「あのね、車はかえしたわ。貯金は全部寄付したわ」

 は?

「無一文のわたしを追い出したりしないでしょ?」

「バカか君は!!」

 その言葉しか出なかったことは許されていいだろうか?

「これからにこれまではいらないって思ったのよ! これが私の本気よ! バカで結構」

「君に人生支配されそうだ」

 人生は理不尽だと、見上げる空はどこまでも明るく見える。


場所:牧場

書き出し:靴の中に小石が入っている様な違和感。

三題:ソープ/平均/拷問

台詞:「ここは任せて」

テーマ:デレデレ

字数:1,145字以内

この中から2つ使って書こう

#とど診断

https://shindanmaker.com/805846

お題は〔昔の話をしてほしい〕です。

〔地の文のみ禁止〕かつ〔キーワード「手紙」必須〕で書いてみましょう。

https://shindanmaker.com/467090

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