黒兎
使用お題ひとつ
闇色の兎がぴょんと跳ねる。
『遊ぼうぜ!』
『夜だよぅ。眠いよ』
水色の小鳥はぷいとお家のドアを閉めてしまいます。
『ちーぇ。朝のきざしのけーち!』
ふんすふんすと闇色の兎が野原をゆきます。
空にはまんまるいつきがキラキラ輝いています。
『にいさまのとこはちょっと高過ぎるんだ』
『お! 夜風じゃん。あっそぼうぜー』
『やぁ。夜風。いい夜だな』
ちょっぴり感傷的な気分に浸っていた闇色の兎は無邪気な三毛猫と白狼に心をささくれ立たせました。
『北風と旋風はデート中でしょ。邪魔しないよ』
突き放すような兎の言葉に白狼の頭にのっている三毛猫がにゅっと身を乗り出しました。
『デートなんかいつもしてるから気にすんなよ! なんかうまいもんでも食おうよ! な! 北風』
『そうだな。肉がいいか? 魚か? それとももちか?』
『どーせ、暇だろ。えーっと食材は帳簿付けにたかろう!』
楽しげに三毛猫が言いそれをおっとり白狼が推し三毛猫がたたみかけると、そのあとは断られることを考えず猫と狼は続けます。
兎がイラついてることは気にも留めていないようです。
『行くって言ってないから!』
猫と狼が視線を交わし合います。
その姿に兎が草原をガンガン蹴ります。
『おなか空いてるんだね!』
『あとでつきに送ってやるよ』
『ホントか?』
見上げてくる兎に狼はその目を細めます。
『君につける嘘は、あいにく持ち合わせていない』
きっぱり言う狼の上で三毛猫も頷きます。
『嘘なんていらないし。夜風がブラコンなの知ってるし。ねー』
『しょうがないから遊んであげる』
風の子供達が転がり遊ぶ強く冷たい風が夜の草原を抜けていく。
お題は『君につける嘘は、あいにく持ち合わせていない』です。
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