本当の貴方が見えないの
使用お題ふたつ
呪布で顔を隠した彼が最初怖かった。
そう零せばコンは『えっ!?』と驚いたようだった。本当にぬらっと背の高い布と長髪の人物に見下ろされてるのだけがわかる状況は怖かった。あの頃は今より小さいし当然じゃないかと思う。
特に目も口も見えないのだ。かろうじて見えているのは長めの袖から時折のぞく指先とじゃらりと飾りのついた耳ぐらい。その耳だって呪布と髪に隠れていることが大半だった。
「十にもならない小娘には不気味で怖く映ったの!」
それはもう弱みを見せたら食べられるんじゃないかというほどに。だから、おそれは見せられないと気を張っていた。
里は死病で死に絶え、私だけが生き残った。
お腹がすいて飛んでる虫がうるさいのに払う気も起きなくてむしろ生きてるんだって思ってた。
怖かった。
影が来てそこに居たから。
死神が私も連れてくんだと思って。
生きたいのに動けなかったの。
呪術師が里の家々に油を撒いて火をつけるのを私は見ていた。呪術師に抱き上げられてその手に触れて私は火を見ながら安心したの。
彼は、あたたかかったから。
目が覚めれば、焼け焦げた里の跡。彼は私に水をくれて「くるか」とだけ聞いてくれた。手を引かれて歩かされた。呪術師の住むここには自分の足でこなくてはいけないという呪がかかってたから。どれだけ遅くなっても彼はただ待ってくれた。水と果実をくれた。言葉はなかったけど、気がつけば安心してた。でも、死神と思ったくらいにはやっぱり怖かったんだよ。
「いつまでも式と話し込んでないで寝なさい」
「だって眠くなーい。あ! 呪術師の名前、教えてくれたら寝る!」
数回季節は回ったのに私は呪術師の名前を知らない。呪術師も私をどうしてか『巫女』と呼ぶ。
多くの時間を無言の行で過ごす呪術師を邪魔することに力が入ってしまう。
どこまで許されるのかを試さずにはいられない。
欲は尽きない。
声が聞きたい。
撫でて欲しい。
顔が見たい。
側にいさせて欲しい。
名前を呼んで欲しい。
「なら、水行でもなさいますか」
姿勢を正してそう言われると疎まれてるのかと思ってしまう。
「そこまで嫌わなくても!」
「巫女を嫌ってなどおりません。では、おやすみなさい」
笑った気配が悔しい。子供扱いして!
私だから助けたの?
巫女だから助けたの?
いっそふつうに出会えていれば良かったのに。きっとそしたらこんな気持ちと無縁でいれた。
でも、普通でいればきっと会えなかった。
「寝るまでそばにいて」
大好きなの。
【呪術師×巫女】青年は26歳、少女は11歳です。青年は信心深い性格、少女は竹を割ったような性格です。少女は青年を疎ましく感じています。とにあはこの2人を描いてください。
#青年と少女
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お題は『本当の貴方が見えないの』です。
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