白月
使用お題はひとつ
少女は夕暮れの中走っていた。
誰にも会いたくなかった。
泣いてる姿なんか誰にも見せたくなかった。
何かがあったわけじゃない。
虐められたわけでも何かができなかったわけでもなくて、いや、できなかったからだと少女は思う。
ふいにこみ上げた感情が押さえ込みきれずに涙がこぼれたのだから。
誰にも呼び止められない速さで走った。タイミングよく人通りのない道を。
道の横に広がる畑。
遠くからも少女が行くのは確認できただろう。
速度を緩めて走りから歩きへと変わる。
とぼとぼ歩く少女の頬は涙で突っ張る。
ぐいぐいと袖で拭う涙。
大きく息を吐いて丸まった背をきゅっと伸ばす。
一歩、少女は歩みを進める。
道は石階段。森の道を進む。上り坂。次第に重くなる足。呼吸が荒くなる。
上りきれば、さぁっと吹く風が少女の髪を揺する。舞い踊る髪を払った視界に映る白の月。
少女の頬を涙が伝う。
お題は〔あいたくない〕です。
〔「かぎかっこ」の使用禁止〕かつ〔「走る」描写必須〕で書いてみましょう。
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