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名前のない欲
使用お題ひとつ
けれど、当然捕まえられない。
周囲を通り過ぎる人影はちらとも私を見はしない。
夕焼けの赤を私、私ね、欲しかったの。
絵の具の赤じゃダメで。
血の赤なんてものも違って。
ただ、そう。
そう。
一時、一瞬たりとも同じを留めないあの夕焼けが欲しかったの。
ニセモノじゃダメで。
欲しかった夕焼けなの。
ぱたぱたと夕焼けのカケラが足元のアスファルトに飛び散る。
夜の青が夕焼けを覆い隠していく。
鳥居の向こうは小さな杜。
夕焼け封じた勾玉が砕けたら、止まった時が動き出す。
ホンモノの夕焼け。
壊れた世界にあの日の夕焼けはない。
私だけが動き出した時の流れに帰れない。
お題は〔名前のない欲〕です。
〔三人称視点禁止〕かつ〔「夕焼け」の描写必須〕で書いてみましょう。
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