さわがしい静寂
使用お題ひとつ
金属の殴打からくる微振動と反響に身を任せながら僕は緩慢な動きを続ける。
モーターの音は規則正しく空気を振動させている。チューブから染み出した液体が床を汚す。
うまくいかないもどかしさにテーブルを爪で打てば音を立てて雑貨が散らばった。
舌打ちの音に振り返れば、君が僕を見ていた。
階下の工場から聞こえる金属の殴打音。
駆動系が震わせる空気の音。
僕はそんなさわがしい静寂の中、僕の鼓動を聞き取れない。
靴底が床をにじる音。
君の音だけはどこまでも鮮明に響く。
「あなたはどこにもいけないの」
君は静かな声で呟く。
「私はあなたを信じているの」
君は熱を帯びた眼差しで僕を見てる。
僕はフライを挟んだパンを咀嚼する君を見てる。
君の音だけは小さくても聞こえる。
君の手で、君の手で僕を抱いて。触れて欲しい。
「私があなたをどこまでも導くのよ!」
君は僕の製造者。
「食べ終えたら拭いてあげるから待っててね」
お題は〔君の手で僕を●●て〕です。
〔オノマトペ禁止〕かつ〔食事描写必須〕で書いてみましょう。
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